池園 友 院長の独自取材記事
医療法人 池園医院
(北九州市戸畑区/九州工大前駅)
最終更新日:2023/03/14

九州工大前駅から徒歩10分。「医療法人池園医院」は現院長の池園友先生で3代目という長い歴史を持つ。消化器内科で学んだ院長は肝臓を専門領域とし、内視鏡検査にも注力。「患者さんの多くが生活習慣病を抱えた高齢の方々。内科をベースに継続的な治療を行い、適宜検査のお声がけをし、患者さんの生活を守っていくのが当院の使命です」と明るく話しやすい雰囲気で語る池園院長。患者のニーズをその都度くみ取り、眼底検査や乳腺エコーなど多くの検査にも対応する。通院が困難になれば、訪問診療も行っている。「専門分野のみに特化するのは、土地に合わないと考えます。間口を広くし、患者さんの求めるものを提供していくのが当院のスタイルです」と続ける池園院長に、診察スタイルや対応可能な検査、併設するデイサービスや今後の展望などを聞いた。
(取材日2022年6月23日)
風邪や生活習慣病、内視鏡検査、エコーなど幅広く対応
院長先生で3代目になると伺いました。

はい、初代の祖父がこの地で開業しました。はっきりとした開業年は不明なのですが、昔は待合室は畳敷きで、火鉢があったなども聞いています。移転も今の場所で3回目になります。私は久留米大学医学部を卒業した後、医局は父と同じ消化器内科に所属し、大学病院や総合病院で研修しました。当院に戻ってきたのは2018年のことです。今は私が院長、父は理事長として診療にあたっています。風邪や腹痛・頭痛・腰痛など、さまざまなご相談を受けています。患者さんの多くは高齢者ですが、九工大生などの学生さんもしばしば来られます。
北九州市は高齢の方が多いと聞きます。
私たちも実感しています。そのため高血圧、高コレステロール血症、糖尿病などの生活習慣病で通院されている方が非常に多いです。私の専門は肝臓と内視鏡検査。胃カメラ、そして大腸カメラも院内で多数行っていますが、きっかけは会社の健康診断で指摘された、便通が気になるけれど内視鏡検査をまったく受けたことがないということが多く、その後も継続して検査を受けてくださる方も。肝臓はエコー(超音波検査)で調べられます。エコーは患者さんの負担が少ない検査ですし、当院の検査では肝臓の硬さなどもわかります。「この硬さだと脂肪肝への注意が必要ですね」と具体的なアドバイスもできますし、今はもう少なくなってきましたが、C型肝炎の治療も行っています。
曜日限定で乳腺エコーを行ったり、循環器内科の先生が来られたりもしているそうですね。

循環器内科は非常勤の先生が、乳腺エコーは女性の臨床検査技師さんに来てくださっています。非常勤の先生方は非常に優秀な方ばかりで助かっています。これらの体制には「患者さんのニーズに応えたい」という父の考えがあったのだと思います。極力専門外だからとすぐ他院へ紹介せず、当院で可能な範囲で対応したいと思っています。当院の2階から5階は「ちろりん村」というデイサービスと住居型の老人ホームを併設しています。突発的な病気などでもすぐに診察も行えますし、遠方に住むご家族も安心してくださっているようです。
病気だけを診るのではなく、患者の本音に耳を傾ける
訪問診療も行ってらっしゃるとのことで、患者さんのニーズに応じた診療を展開されているのですね。

いわゆる「町のかかりつけ医」をめざしています。エコー検査、内視鏡検査、眼底検査や骨密度まで、より多くの検査に対応できるようにと思っています。そこでもっと高度な治療が必要だとわかれば専門分野の先生や病院へつなぎます。また通院が困難になれば、介護保険の導入や訪問診療に切り替え、末期の在宅での看取りも積極的に行っています。父から教えられたのは「病気だけを診るのではない」ということ。慢性疾患を診ていく以上、その方の社会的背景、経済的な面や同居者との関係性なども把握する必要があると考えています。患者さんの生活の変化を見落とさないことが、診察の中でもっとも大事なことの1つだと考えています。
長年通院しているあいだに認知症が進行することもあるのでしょうか?
あります。「あの方、しばらく来てないけれど、どうしているのだろう?」とスタッフと確認し、どうやら本当に認知症が進行し、生活に支障が出ているとわかって、遠方にいるお子さんたちに「親御さんは今こういう状況です。行政につなぐこともできますが、どうしますか?」と連絡することもあります。病気だけを診るのではないというのは、そういうことなんだと思っています。患者さんを取り巻く環境と、それらの変化、ご本人の変化を見逃さず、必要なところに情報を共有して適切な環境に導いていく。これこそ、町のかかりつけ医だからこそできることではないでしょうか。
普段の診察で心がけているのはどんなことでしょう?

一番は患者さんが何を望んでいるかをくみ取ることです。「急いでいるので、今日のところはお薬がほしい」「検査で調べてもらいたい」「不安なこととか、いろいろ話を聞いてほしい」など、患者さんによって希望はさまざま。多くの患者さんが待っておられるので時間に限りはありますが、できる限り言葉や雰囲気の中にある本音をくみ取り、患者さんに満足していただきたいと努めています。内視鏡検査や肝臓は私たちの専門分野ではありますが、そこに特化するのではなく、幅広いご相談に対応し、患者さんの不安に対して何らかの答えを出し、道筋をつけていくのが、私たちの責務なのではないかとも思うのです。
ニーズに応えられるよう、患者のための場所をめざす
それこそ、大腸がんなどは全国的にも増えているようですね。

ご家族に大腸がんになったことがある方、まったく検査を受けたことがない方などは、「一度は受けてみませんか」とお声がけをしています。病変が見つかった場合は手術ができる病院につなぐこともできますし、早期発見できれば内視鏡治療で済むケースも多いです。患者さんにお声がけした結果、早期発見・早期介入に貢献できるのも、町のかかりつけ医の役目や、魅力の1つだと思います。
本当に間口を広くして患者さんを受け入れておられますね。
そうですね。でもやはり、当院に来るかどうかを決めるのは患者さんご自身です。なので、まずはご自身の体に興味を持ってほしいと思います。きっかけは便秘でも、健康診断の結果でも何でも構いません。まずは足を運んで、ご自分がどういう状態にあるかの答えを提示できるよう、私たちは努めていますから。特に生活習慣病などの慢性疾患は、継続的な治療が非常に大切です。その後介護が必要になれば、当院と同じ敷地にある「ちろりん村」を利用することも可能です。継続的な治療ができるという点も当院の強みでもあるかと思います。
今後の展望と、読者へのメッセージをお聞かせください。

地域に根差したクリニックを今後もめざしていくつもりです。そのためには患者さんのニーズに応えていく姿勢も、引き続き必要なのだと思います。「患者さんがクリニックをつくっていく」のが究極の理想だと、私は考えます。「こういうクリニックであってほしい」「こんな検査に対応してほしい」という意見が合わさって、クリニックが前に進んでいく。もちろん私たち医療従事者側が主導する状況となることもありますが、でもやっぱりクリニックは患者さん主体のものだと思いますから。だからこそ、あらゆる状況、主訴や悩みなど本当に何でも相談してほしいんです。例えば「急におじいちゃんの様子が悪くなりました」と電話をかけていただければ、状況に応じたアドバイスもいたします。気になることがあれば、どうぞ気軽に、何でも相談してください。