薬不要な状態もめざせる
食事の糖質制限を軸とした糖尿病治療
湘南台しらがクリニック
(藤沢市/湘南台駅)
最終更新日:2025/10/02


- 保険診療
健康診断などの機会に血糖値の高さを指摘された人もいるだろう。特に自覚症状がないからと、いまだ治療を受けていないという人もいるかもしれない。そうした人に対し「糖尿病は静かに進行し、死亡リスクもある恐ろしい病気です」と、「湘南台しらがクリニック」の白神敏雄院長は警鐘を鳴らす。糖尿病患者に対し、糖質制限を軸とした食事指導による血糖コントロールに努めている。服用する薬の減薬や服用の停止をめざす同院の糖尿病治療と病気の概要について、白神院長に詳しく話を聞いた。
(取材日2025年9月18日)
目次
糖質制限を軸とした食事指導は、無理のない範囲からの取り組みも可能
- Q糖尿病とはどのような病気でしょうか?
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A
▲糖尿病の治療に注力する同院
糖尿病は血糖値、つまり血液中に含まれるブドウ糖の濃度が慢性的に高くなる病気です。ブドウ糖のもととなるのは食物に含まれる炭水化物で、消化により分解・吸収された後、通常であれば膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって取り込まれ、エネルギー源として使われます。このインスリンの働きが不十分となることで糖尿病を発症します。初期では自覚症状が乏しく、気づかないまま進行することが多いのが特徴です。進行すると喉の渇き、多尿、体重減少などが現れます。糖尿病は「血管の病気」ともいわれ、放置すると全身の血管がダメージを受けて合併症につながります。生活習慣や肥満との関わりも深く、早期に適切な管理が必要です。
- Q合併症についても教えてください。
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A
▲さまざまな検査を行い、合併症罹患の可能性を探る
糖尿病の三大合併症として、糖尿病網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害が挙げられます。糖尿病は「血管の病気」とされているとおり、これらの合併症はいずれも全身の血管が障害を受けることで発症するもので、障害が網膜の血管に起これば網膜症に、腎臓の血管に起これば腎症に、手足などの血管に起これば神経障害となるのです。網膜症は失明の原因となり、腎症では人工透析が必要になることもあります。神経障害では手足のしびれや壊疽が進行し、場合によっては切断を余儀なくされることもあります。これらは血糖コントロールが不十分なことで発症・進行するため、早期からの治療と生活改善が不可欠です。
- Q糖尿病の治療にはどのようなものがあるのでしょうか。
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A
▲患者のニーズに合った治療を提案していく
基本は食事指導、運動指導、薬物療法の3本柱です。一般的な食事指導では、糖質やカロリーを調整し、血糖値安定をめざします。運動については、有酸素運動による体内の糖分の利用促進と、筋トレによる筋肉量増加で、ブドウ糖の利用と貯蔵を増加させ血糖値を下げやすくすることが目的で、両者を組み合わせることが効率的とされています。当院では筋肉をやわらかくし、糖を消費しやすい状態にするストレッチも推奨。また、薬物療法では、内服薬や注射剤などでインスリンの分泌を促したり、その働きを補ったりします。
- Qこちらでは食事指導に力を入れているとお聞きしました。
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A
▲患者のライフスタイルを尊重した提案を実施
はい。当院では糖質制限を基本とした食事指導を重視し、薬に頼らず血糖値の改善をめざしていきます。従来はカロリー全般を抑える考え方が主流でしたが、それだと糖質、脂質、タンパク質のすべてを抑制することとなります。対して糖質制限では、糖質のみを控え、代わりにタンパク質や脂質をしっかり取りながら、血糖コントロールの改善をめざすことができるのです。食事指導は、患者さんのライフスタイルに合わせ、無理のない範囲で取り入れていただくことが大切だと考えています。糖質制限を継続することで、糖尿病の薬が不要になることも期待できるほか、糖尿病網膜症や糖尿病性腎症といった合併症の予防にもつながります。
- Q治療を進める上で大切にしていることを教えてください。
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A
▲患者とともに、二人三脚で治療を進めていく
大切なのは「患者さんが自分からやってみようと思える環境をつくること」です。無理に制限を押しつけるのではなく、できる範囲から始めて少しずつ前進することを重視しています。無理のない範囲の制限を指導し、成果があればどんな小さなことでも評価して、モチベーションを高めていくことが継続の秘訣です。0.1でもヘモグロビンA1cが下がったら「良かったですね」と努力を認め、一緒に喜ぶことも大事。糖質制限は医療費の軽減にもつながり、人生の質を大きく変える可能性があります。糖尿病は一度発症したら一生付き合うこととなる病気ですから、前向きに治療に取り組めるよう、患者さん一人ひとりに寄り添ったサポートを心がけています。