足立 大樹 院長、上村 智子 さんの独自取材記事
ホームケアクリニック横浜港南
(横浜市港南区/港南台駅)
最終更新日:2025/10/15

港南台駅から徒歩圏内の「ホームケアクリニック横浜港南」は、外来から訪問診療まで一貫して対応しているクリニックだ。「患者さんご本人と支えるご家族の負担を少しでも軽減したいです」と語る院長の足立大樹先生は、血液内科を専門に東京大学医科学研究所で臨床・研究に従事した経験を持ち、グループホームの診療依頼をきっかけに2004年、栄区で開業した。開業当時は1人で診療にあたっていたが、安定した在宅診療の継続のために医師を増やし、港南区の広いクリニックへ移転した。足立院長と、プライマリケアを専門とする看護師であり看護主任の上村智子さんに、診療において大切にしていることなどを聞いた。
(取材日2025年9月9日)
チーム一丸で患者と家族をサポート
開業の経緯をお伺いします。

【足立院長】もともと血液内科を専門として、東京大学医科学研究所で臨床と研究をしてきました。妻が介護業界にいたこともあり、グループホームの嘱託医の依頼をいただいたのがきっかけです。医師になって7年目の2004年に開業しました。当時の栄区では地域に訪問診療できるところがとても少なく、私1人で多くの患者を診ることになり、夜も訪問する日々が続きました。しかし、1人では厳しくなり、まずは看護師が2人増えたところから始まり、今では医師も増えました。手狭になったことに加え、外来のために広くしたかったこともあり、当初からの患者さんがいる栄区にも近く、スタッフにとっても通勤の利便性がある駅に近い場所が運良く見つかったので、移転しました。
クリニックの特徴を教えてください。
【足立院長】初めは訪問診療専門クリニックでしたが、移転して4年前からは外来診療も毎日行っていますので、どちらでも対応可能です。現在、常勤医師が5人在籍しており、内科や精神科、皮膚科の医師も非常勤でいますので、患者さんの幅広いお悩みにお答えできる体制に整えています。初めから訪問診療のご相談を受けることもあるのですが、なるべく患者さんが元気なうちは外来をお勧めしています。自分のことを表現できる段階で来てもらえたほうが、患者さんの生活背景がわかりやすいんですよ。初診の方には1時間かけて、体のことだけでなく、どんな生活をされているのかヒアリングするようにしています。スタッフ全員で「地域の方の生活を全面的に支える」という目標を掲げているので、そのためには患者さんがどんな生活をしているのか把握する必要があると思うのです。その人の生活に合った医療を提供できるよう、尽力しています。
開業から20年以上たちましたが、特に注力されていることはありますか?

【足立院長】開業当初から変わりませんが、患者さんとご家族の生活全体を支えたいという気持ちでいます。患者さんをメインで介護するご家族の健康も支えないと、生活が立ち行かなくなってしまうと思うんですよ。なので、患者さんと医師の1対1ではなく、ご家族と当院のスタッフも合わせてチームでサポートしていくことを大事にしています。症状についてだけでなく、精神面や経済面など、さまざまな生活面で困ることを支えたいですね。
【上村さん】私たちスタッフも気持ちを一つにすることを大事にしています。業務は多岐にわたり、訪問の同行もしますし、外来では看護師として対応する他、新規の方のご相談の窓口、患者さんへ診療内容のご案内など、施設診療のスタッフさん、ケアマネジャー、訪問看護師などあらゆる方々とコミュニケーションを取り、医療面の架け橋になる気持ちで臨んでいます。
家庭環境から気持ちまで丁寧な配慮を
クリニックの設計でこだわった点をお聞かせください。

【足立院長】介助が必要な方や車いすの方、またご家族皆さまでお越しの方が入りやすいように、部屋数を少なくして診察室を広めに作りました。本来3部屋作れる敷地ですが、診察室は2つです。内装は基本的に知り合いの建築家にお任せしました。開放感のある明るい内装や、やわらかな丸みのある窓の縁取り、鮮やかな差し色を使っているところなどは建築家の案で、患者さんに少しでも気持ちを穏やかにしてもらえたらと思っています。こだわったのは待合室の広さで、新型コロナウイルス流行以降、発熱者専用の外来用に仕切ることもでき、広く場所を取れる利点にもなりました。待合室には大人数が入れるので、地域の方に総合診療をはじめとした医療全般を身近に感じてもらえるようなイベントを開催することもあるんですよ。
訪問診療の際に、患者さんやご家族と接する上で心がけていることや大切にしていることを教えてください。
【足立院長】訪問診療は「医者が家に来る」という特殊な状況なので、遠慮させてしまうことがありますが、できるだけそうならないよう、先方のお話をしっかりお聞きするように気をつけています。こちらばかり話してしまうとお話ししづらいと思うので、相談しやすい空気をつくり、受け身の姿勢でいることも大事にしています。サポートの方針を決める上でもご家庭の環境やお家の中の状況を見させていただきますし、ご家族のお看取りについての考え方なども含め、よく話し合いをさせていただくようにしています。
【上村さん】笑顔でいることを心がけています。医療関係者数人が訪問することで、緊張させないように配慮したいと思っています。ご家族のフィールドに上がらせていただくので、長くされてきた生活に気を配るようにし、しっかりお話に耳を傾けるようにしています。
チームで大事にされていることや想いをお聞かせください。

【足立院長】医師、看護師、医療事務、ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、管理栄養士、音楽療法士などがおり、総合診療家庭医として1つのチームで各患者さんとご家族のサポートをしています。幅広いスタッフそれぞれに専門分野があり、各々が自分の役割を果たしているんです。例えば、訪問診療には看護師が同席しているのですが、多角的な視点から患者さんの生活を見ることができているので、ご家庭の生活の支えになっていると思います。また、毎日の朝夕には全体ミーティングを行い、定期的に多職種でのカンファレンスも実施しています。スタッフ間で情報を共有しながら、より良い職場環境づくりと、地域の皆さまにより価値ある支援を届けられるよう努めています。
さらに外来体制を整え、総合診療の場をめざす
どのような患者さんが多く来院されていますか? また、今後どのような方に来院してほしいですか?

【足立院長】患者さんはご高齢の方がほとんどで、中でも認知症や脳血管障害をお持ちの方が多いです。もちろん、お子さんや成人されている方もいらっしゃいます。小児の患者さんの場合、かかりつけの小児専門クリニックに通っていたとしても、成長すればいつか小児科の範囲から離れてしまう時期が必ず来ます。大人になる前からサポートさせていただき、成人期に備えてあげたいですし、先を見据えることはご家族にとっても良いのではないかと思います。神奈川県立こども医療センターと連携もできますので、安心していらしていただきたいですね。
今後の展望をお聞かせください。
【足立院長】今以上に手厚い体制に整え、気軽に外来にお越しいただきたいです。また、多くの方に「医療の使い方をもっと上手に」と伝えたいですね。複数のクリニックに通うと、各領域の専門医がそれぞれの領域を診ているため、本人の生活で一番困っている疾患が見過ごされやすいのです。そうすると、例えば、パーキンソン病を疑うべきであるような方が、別々の科にかかっていたことで見つけられないような状態になってしまいます。そのようなことのないよう、総合診療ができる場にしたいですね。そして、医療の上手な使い方についての啓発をする場にもしていきたいです。
【上村さん】もっとご相談に乗る時間を増やしたいと考えています。多くの方に、医療をもっと身近に感じてもらい、来やすいと思ってもらえるクリニックにしていきたいですね。
読者にメッセージをお願いします。

【足立院長】独善的にならないよう気をつけて、スタッフと力を合わせて引き続き質の高い総合診療をめざしたいと思っています。気軽に健康相談できる場として、いつでもお待ちしています。また、医療従事者の方にとっても、仲間になりたいと思っていただけるようなクリニックをめざしています。
【上村さん】ぜひお気軽にご相談いただきたいです。何かお困り事がございましたら、身体面に限らず、なんでも聞いてください。