藤井 薫 院長の独自取材記事
藤井かおる歯科医院
(西東京市/ひばりヶ丘駅)
最終更新日:2025/03/26

開院して10年以上、地域住民の歯の健康維持をサポートしている「藤井かおる歯科医院」。藤井薫先生が院長を務める同院では、「治す歯科医院ではなく、守る歯科医院」をモットーとし、予防歯科に力を入れている。その思いは地域住民にも浸透し、メンテナンスを目的に来院する患者が増えたという。「生まれてから最期まで診ていきたい」と、要望があれば往診にも応じる。柔軟な考えの持ち主である藤井院長は、「スタッフや患者にとっての幸せとは」が判断の基準。常に知識をアップデートすることに努め、周りの人との対話を大切にする。気さくな人柄が魅力の藤井院長に、予防歯科に対する思いや心がけ、地域医療における歯科医院の使命などさまざまな話を聞いた。
(取材日2024年4月23日)
「治す歯科医院ではなく、守る歯科医院」をモットーに
こちらのモットーである「治す歯科医院ではなく、守る歯科医院」が浸透してきていると感じていますか?

開院当初に比べ、予防歯科が浸透している実感はあります。近年、日常生活の中でも「予防歯科」とよく耳にするようになったのではないでしょうか。来院される方も予防目的でいらっしゃる方が多いです。歯周病治療においても菌を減らすことに重きを置くのではなく、菌と共生し、均衡を保ちながら口の中の状態を安定的に維持することをめざすSPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)が重要視されるようになりました。日進月歩の予防歯科の考え方を歯科衛生士、歯科助手とも共有し、一丸となって治療やメンテナンスに取り組んでいます。
こちらでは、歯科衛生士担当制を採用していると伺いました。
定期的なメンテナンスやケアは歯科衛生士が行います。歯科衛生士によって、その人の口の中が変わるといっても過言ではないくらい、歯科衛生士は大事な役割を担っています。担当制でなくても、その都度のブラッシング指導やクリーニングはできると思います。しかし、一人ひとりの患者さんに寄り添って長い目でみたメンテナンスとなると、患者さんの生活背景や状況を把握することが不可欠なんですね。そうなると担当制にして、いつも同じ歯科衛生士が継続的に見ていくほうが、歯の状態の変化に気づきやすいんです。また歯に限らず、その方の些細な体の異変に気づけることも。ライフスタイルに変化があれば、それに応じたセルフケアの方法や食生活の提案もできます。
最近、メンテナンスに新しい機器を導入したそうですね。

心地良い温度の細かいパウダーを強い圧で歯に吹きつけることによって、歯ブラシでは行き届かない部位のバイオフィルムの除去を図る機器です。2023年の夏、私を含めた3名のスタッフでこの機器を使ったケアを学びに、スイスまで行ってきました。歯石取りで歯を傷つけられているのではないかという不安を感じた経験がある方も少なくないと思います。その点この機器を使ったメンテナンスは、歯を傷つけにくい上に痛みも少なく、むしろ気持ち良いと感じるくらいだと思います。このメンテナンスを楽しみに通ってくださったらうれしいですね。高価な機械のため、現在ではまだまだ自費診療で提供している歯科医院が多い中、当院では保険診療で提供しております。ぜひ、パウダーメンテナンスを体験してみてください。
プロのメンテナンスと日頃のセルフケアの両輪が大切
歯を健康に保つ予防歯科のポイントを教えてください。

虫歯や歯周病の予防というのは、歯科衛生士による定期的なメンテナンスと患者さんご自身の日頃のセルフケア、その両輪があってこそ成り立ちます。どんなに当院がメンテナンスやケアを尽くしても、予防歯科には患者さんの歯に対する正しい認識や意識が欠かせません。「3ヵ月に1回、定期的にメンテナンスに通っているから大丈夫」というわけにはいかないんですね。患者さんの健康な歯を保ちたいという意志があって、それを最大限に手助けさせていただくのが当院の役割だと思っています。そうなると、患者さんのケアに対するモチベーションを保つことも当院の歯科衛生士の腕の見せどころかもしれませんね。
「スタッフファーストのクリニック」であることも大切にされているのだとか。
「スタッフファーストのクリニック」とだけ聞くと誤解を招くかもしれませんが、このことは患者さんにも伝えています。スタッフが気分良く、楽しく仕事ができると、気持ちに余裕を持って患者さんに接することができると思うんです。そうすると、円滑なコミュニケーションが生まれ、患者さんもスタッフに話がしやすい、相談しやすい雰囲気が生まれますよね。「スタッフファースト」は、ひいては患者さんとの良好な関係づくりの土台になると考えています。新型コロナウイルス感染症の流行を経て、今は患者さんも在宅勤務の方がいらっしゃったり、柔軟に有給休暇が取れるようになったりと状況が変わってきたので、当院は日曜日の診療をやめました。これもスタッフに無理をさせないため。クリニックは院長の私一人で作るものではなく、スタッフ全員でつくり上げていくもの。ここ数年で私自身、「チーム医療」の意識がより強くなったと思います。
先生が患者さんと接するときに大切にしていることを教えてください。

患者さんとよく話をすることです。患者さんとの些細な対話や話題の中から、その方の生活背景や食生活が垣間見え、よりその方に寄り添ったアドバイスができるようになるからです。このことは私に限ったことではなく、歯科衛生士や他のスタッフも同様です。親御さんの介護が大変という方がいたとしたら、親御さんに対しての往診を提案させていただくなど、話の中から歯科医院として何かできることはないかといつも探っています。それから患者さんにきちんと治療方針を理解していただいた上で治療を進めるようにしています。納得されないままに治療を進めることはありません。不安なことや不明点を遠慮なく口にしていただける雰囲気づくりを大切にしています。
地域の医療機関と連携し、地域医療を支える歯科医院に
お休みの日は何をされていますか?

飼っているトイプードルと遊んでいますね。散歩を多い日には1日2回しています。先日は動物病院へ行って、歯石のスケーリングをしてもらいました。犬の歯も人間同様、予防の時代なんですよね。あとは、週に2回ほどパーソナルジムに通っています。いつも変な体勢で診療しているので、体幹を鍛えておかなくては、この先も歯科医師を続けられませんからね。
これからの歯科医院の取り組みをどうお考えですか?
私が長年、大学の補綴科にいたということも理由にあると思うのですが、治療しすぎることに対するモヤモヤや違和感というのが徐々に蓄積していました。歯科治療をしないで済むにはどうすればいいだろうと考え、行き着いたのが予防歯科でした。先ほども申したように、予防歯科の考え方は日進月歩です。菌の均衡を保ちながら口腔内の環境をキープするとなると、それは歯の健康に限ったことではなくて、結局はその方の免疫や体質など、全身の健康に留意しなければなりません。その認識をより深め、その方のトータルの健康を考える気持ちで歯科治療に取り組んでいきたいと思います。
最後に、今後の展望をお聞かせください。

当院がある西東京市は、年齢とともに筋力や心身の活力が低下するフレイル予防のための取り組みを積極的に行っています。特に歯科医院は、医科と比べて定期的に通うことが一般的だと思うんです。そういった意味でも定期的に患者さんを診て、もしも歯科以外のことで気づきがあったら、その方のかかりつけ医や地域の医療機関と連携していけるように機能していきたいですね。歯の健康はもちろんのこと、トータルにその方の健康を見守ることができたらと考えています。地域医療において、歯科医院ができることってまだまだありますね。視野を広く持って地域医療に貢献していきたいと思っています。