平林 寛史 院長の独自取材記事
聖歯科医院
(国立市/国立駅)
最終更新日:2025/10/21
国立駅南口からすぐのクリニックビル3階に位置する「聖歯科医院」。平林寛史院長は、1977年に父が開業した同院の院長を2025年から引き継ぎ、補綴治療を中心にスペシャリストとして日々診療にあたっている。平林院長は「口から食べられなくなると、栄養が取れず、体力が低下し、健康に影響が出ます」と、噛むことの重要性を強調する。院内には歯科技工室を設置。歯科技工士が常勤することで、患者の目の前で精密な調整ができる体制を整えており、難易度の高い症例にも根気良く柔軟に対応する。デジタル技術を取り入れながらも、職人的な技術の重要性も忘れない。どんな難症例にも真摯に向き合う平林院長に、同院の特徴や治療の進め方、診療において心がけていること、今後の展望などについてじっくりと話を聞いた。
(取材日2025年9月22日)
歯科技工士との連携で、より精密な治療をめざす
歯科医師を志したきっかけと、補綴を専門に選んだ理由を教えてください。

歯科医師をめざしたきっかけは、歯科医師である父の存在が大きかったと思います。強く継いでほしいと言われたわけではなく、自然と「自分もこの道に進もうかな」と思える環境だったんだと思います。父も補綴の専門で、私も同じ講座に所属しました。もちろん父と同じだからというだけではなく、補綴の魅力を感じて選びました。補綴は歯を「治す」のではなく、最終的に「噛む」という機能を取り戻すためのもの。患者さんの生活の質の改善をめざし、入れ歯やかぶせ物を作って噛み合わせを調整していきます。治療経過が目に見えてわかる部分も多いです。もちろん、経年で変化を見ながら対応する難しさもありますが、「形にして届ける」という部分が補綴治療のやりがいでもありますね。
患者さんの年齢層やどういった症状の方が来院されていますか?
40代、50代以降の方が多いですね。補綴治療は全体の噛み合わせを整えるところから始まる方もたくさんいらっしゃいます。歯周病の治療や、根の治療から始まることもあります。治療は一度では完結しませんので、仮歯や仮義歯を入れて、経過を観察しながら進めていきます。長い方だと2年ぐらいかかることもあります。気づいた時には歯が悪くなっていたといった方でも何とか治療しようという「最後の砦」といった気概を持って治療にあたっています。先代もそのようなことをよく言っていました。歯の状態を諦めかけていた方や、どうせ治らないと思っていた方もいると思いますが、まずはこういう治療方法があるという選択肢を提示して、知ってもらうところから始めて、治療のステップを一緒に確認しながら進めています。
院内に歯科技工士が常勤でいらっしゃると伺いました。やはりメリットはありますか?

外部に依頼すると納期までの日数がかかりますし、微調整が必要な場合はやりとりにも時間がかかります。院内に歯科技工士がいることで、費用の負担を抑えることができますし、患者さんを目の前にして細かな調整を直接伝えられるというのが最大のメリットですね。歯科技工士に診療の場に立ち会ってもらうことで、患者さんの口の中を直接見ながら「ここをもう少しこうして」と伝えられる。細かなやり直しも言いやすい。患者さんも目の前で説明を聞けるので納得してもらいやすいですね。
噛む喜びを取り戻すための専門的な補綴治療
噛むことの大切さについて教えてください。

結局のところ、口から食べ物を摂取できなくなると栄養が取れず、体力が低下し、健康に影響が出ます。当たり前のようですが、とても重要なことです。歯がある程度そろっていることは、自分の歯でも補綴した歯でも構いませんが、とても大事ですね。歯がないと食べられるものに制限が出ます。奥歯がないと残った歯で食べなければならず、その負担が増えてしまう。若い頃の歯並びから今の状態にちょっとずつ悪化していて、本人は「前からこんなものかな」と思っていても、実際はかなり悪くなっていることが多いです。それを元に戻すのは手間と時間がかかります。それでも噛めることの大切さを考えれば、必要な治療だと思っています。
同院ではコーヌスクローネデンチャーも行っています。
コーヌスクローネデンチャーは、自分の歯に内冠というかぶせ物を装着し、その上に外冠をはめる入れ歯です。削る角度が決まっていて、入れ歯を外す方向に対して精密な角度で形成する必要があります。外れにくく、かといって取りにくくもない、絶妙な角度なんです。何度も模型を採って歯科技工士に見てもらい、「ここが削り足りない」といった調整を重ねていきます。そのため時間と手間がかかる治療です。骨が痩せてインプラント治療が難しい方や、ばねが見える入れ歯は嫌だという方にお勧めの方法です。見た目もきれいで噛めるようになりたいという強い意志がある方が選択されることが多いですね。
診療で大切にしていることは何ですか?

スタートからゴールまでを見据えることです。最初にゴールを明確にして、患者さんと話し合いながらゴールを決めて、「では最初はここから始めましょう」といった治療計画を提示します。これがとても大切だと考えています。患者さんはいろんな方がいらっしゃるので、パッと見てわかる人もいれば、何回説明しても理解が難しい方もいらっしゃいます。それでもわかってもらえるよう丁寧に説明したり、「任せるよ」と言ってもらえる信頼関係を築くことを心がけています。信頼関係は一朝一夕には得られません。治療してうまくいった結果を積み重ねることで、次もお任せしようと思ってもらえるような診療をめざしています。
予算や状態に応じた適切な治療を提供
院長を継承された時の思いをお聞かせください。

実は今年6月に父が亡くなり、急遽、私が院長を引き継ぐことになりました。ただ、補綴を専門にしている点は父と同じですから、治療方針が大きく変わることはありません。長く通っていただいている患者さんにとって変わらずあり続けることが一番だと思い、父からの流れを大切にしています。特に補綴治療は長く関わっていく必要があるので、これからも安心して通い続けてもらえる環境を守っていきたいという思いです。
今後の展望や取り組みたいことはありますか?
歯科でもデジタル化は進んでいます。デジタル機器で型採りができたりして、患者さんの負担軽減につなげられる部分もあるので活用していきたいと思います。ただ、補綴の分野はある程度アナログ技術が欠かせない場面も多々あります。噛み合わせが定まっていない、上に歯はあるけれど下には歯がないといったケースは、デジタル技術だけでは対応できません。簡便な症例には新たな技術をうまく活用し、複雑な症例では今までの技術を生かす。デジタルとアナログをうまく融合させながら、患者さんにとって負担が少なく、かつ精度の高い治療を提供していきたいと思っています。
最後に、患者さんへのメッセージをお願いします。

歯の治療はどうしても時間や費用がかかるため、最初の一歩を踏み出しにくい方も多いと思います。ただ、補綴に関しては「相談するだけでも価値がある」と思っています。口腔内がどんな状態であっても、できる限り適切な環境に持っていけるように、患者さんと一緒に考えていきます。予算や状態に応じてゴールをどこに定めるかを決め、そこから逆算して治療計画を立てていきます。歯がどうにもならなくなったと諦める前に、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/42万5000円~、コーヌスクローネデンチャー/1装置20万円~

