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早川貴美子 理事長の独自取材記事

井上病院/井上クリニック

(足立区/竹ノ塚駅)

最終更新日:2019/08/28

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竹ノ塚駅から歩くこと10分ほど、一戸建て住宅、アパートや団地などがひしめく住宅街の一角にある「井上病院」と「井上クリニック」。この法人の理事長でクリニックの院長を務める早川貴美子先生はこちらの創業者井上信彌理事長の娘にあたり、「地域の人たちの幸せな生活に貢献する」をモットーに病院の切り盛りに奮闘している。明るく大らかという表現がぴったりな早川先生は幼少期から父の背中を追いその仕事に憧れるも、医師になることに反対されたのだとか。そんな早川先生にその夢を果たすまでのエピソード、院長としての心がまえや医療の着地点、地域の強い絆が必要とされる医療連携などについての話を伺った。インタビューは医師として人間として患者さんに尽くす姿だけでなく、女性としての生き方も示してくれるものになった。
(取材日2014年1月9日)

地域全体としての医療連携を図り、かかりつけ医の役割を全う

地域医療おける井上病院の役割について教えてください。

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大学病院や専門性の高い病院とだけではなく、この足立区とその周辺にあるクリニックとも連携をとって地域全体でかかりつけ医としての役割を果たしていきたいと思っています。日本医師会では、「総合的な診療力を持ち、社会活動では検診や予防接種などに積極的に取り組むことがかかりつけ医の役割」と提唱しています。つまり、私たちは専門性の追求だけでなく広く知識を持って、できることは何でも取り組んでいかなければならないのです。地域に戻ってわかったことは、糖尿病や脳梗塞にかかってしまいそうな患者さんが大勢いらっしゃるということでした。お酒を飲みすぎていたり、タバコを吸っていたり、また太っていたり……、そういった発症のリスクが高いと思われる患者さんには、とにかく検査の重要性をしっかりと話すようにしています。そんなこともあり、大学病院で専門としていた耳鼻科や頭頸部外科だけでなく内科にも診療範囲を広げました。ただ、私の診ることができない症例の場合には「ここでは診られませんので、この病院のこの科で診てもらってください」とお伝えします。患者離れを恐れてそういうことを言うのを嫌がる医師もいますが、その方のためを思って誠心誠意対応すれば患者さんは「あの先生は正直だから」ってちゃんと戻ってきてくれるもの。逆にそういうことを隠してしまう方が、私は人間と人間の付き合いができない感じがします。

院長として心がけていることはありますか。

ありきたりなことですけど、「相手の立場にたって考える優しさ」を私自身はもちろん職員にも心がけて欲しいと思っているんです。ですが、これがなかなかできるようでできないもの。“相手の立場”というのは私の場合ですと職員の場合もあれば患者さんの場合もあります。例えば職員が考える処置方法と患者さんの求めることがくい違うことも時にはありますが、たいがいは職員が正しいんですよね。それでも、院長としては患者さんがどう感じるかに重きを置いた判断をしなければなりません。ほんと、難しいのですよ(笑)。以前に私が新人の看護師に「あなたたちのお給料は誰から貰っているかわかる?」と聞いたことがあったのです。そしたら「院長先生です」という答えがあって、それに「患者さんでしょ!」と鋭い指摘をしてくれた師長がおりました。そういった場面での、同じ志をもった職員のサポートは支えになるものです。今後この病院で必要になってくるのは、職員間でのマインド共有の徹底だと思っています。

志の共有を強めていくために、教育が必要とお考えなのですね。

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はい、それは職員だけでなく患者さんにも(笑)。今、現在この病院で働いてくれている職員は年代も育んだ環境もバラバラですから、「患者さんを第一に思って欲しい」という、私の想いを一つにできない……。これまで受けてきた教育がまったく違いますから、まとめるまでには時間がかるでしょうが職員教育には今後力を注いでいくつもりです。職員同士が同じ志で診療にあたっていくことは、患者さんのために一番大切なことですから。病院は創立からは50年になり、ありがたいことに父の時代から通ってくださっている患者さんもいらっしゃいます。私は姓が変わっていますが、父の娘とわかると、患者さんは心を許してくださり本音を漏らすこともあります。例えば先ほどお話したように、この病院では治療が難しいから大学病院へ紹介すると言うと「昔はここで治療してもらえたのに……」、とおっしゃる患者さんもいます。そんな方々には現在の医療事情をきちんとお話しして、「治療が終わればここに戻ってこれますよ」と伝えています。

父親の反対を押し切って医師に。女性としての務めも果たす

お父様は先生が医師になることに反対されとか?

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そうなんですよ。父は患者さんだけでなく家族にもとっても優しい人でしたが、昔気質の考えを持っていました。ですので、私は小さいころからずっと「女の幸せは結婚して子どもを産むことだ」と言われて育ましたが、患者さんのために一生懸命に働く父を誇りに思い、人のために打ち込める医師という職業に憧れていました。幼稚園の作文には将来の夢は医師になると書いているほどに。人間って面白いもので、ダメだと言われると反発心もおきて「何でこんなに素晴らしい仕事なのに……」、「父親のために喜ぶことがしたいのに……」と思ってますます願望は大きくなるばかりでした。それでも父は、男性尊重の体質があり、私が医師になることは女性として不幸のはじまりだと思っていたし、たとえなったとしても、女性には厳しい仕事だと言われていたんです。そうずっと言われてきたのですが、私が中学校2年生くらいの時、私の枕元で父が「こいつが男だったらな」とつぶやいたんですね。私は眠ってはいなかったので「この人本当は自分の後を継いで欲しいのだ」とわかりました。あらためて現実的に考えてみると、通っていた高校から医学部へ進学できるのは学年でも1人か2人、相当に頑張らないとダメだって知りました。それから、猛勉強を始めたわけです 。

どのような大学生活を送られたのでしょうか?

念願の医学部合格とあって、勉強はもちろん遊びにも様々なことに全力投球しましたね。女子の医学生ということで、当時は珍しがられてレポーターとしてテレビに出演したこともありましたよ。そんなふうに遊びが好きになっていく私にも、父は「友人は一生のものだから、たくさん作りなさい」と言ってくれたんですね。そればかりか、高級なレストランや、パチンコに屋台など、今までは見せまいと思っていた家の外にある全てのものを見せようという勢いでいろんな所に連れて行ってくれましたね(笑)。私が医学部に入ったことで、父のなかの「女は家庭に入って……」という考え方が切り替わってしまったのでしょう。

研修医時代はどちらで経験を積まれたのですか?

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私の母校であり、父の母校でもある順天堂大学の医局で研修医時代を過ごしました。私が大学を卒業した当時は、まだわりと男性尊重的な思想が残っていたのか、女性を歓迎してくれたのは耳鼻科と麻酔科それから放射線科。そのなかでも、奥さまが女医だった耳鼻科の教授が積極的に誘ってくださり、当時は耳鼻科では珍しかった頭頸部外科の研修もさせてもらえるということで耳鼻科を専攻しました。眼球の摘出や食道がんの治療でも耳鼻科と外科がコラボレートして取り組む時代だったので、がんの手術の前後の全身管理やがんの末期患者のケアを死にもの狂いでやっていました。また、そういった実習面だけでなく、その教授からは「どんな形でもいいから仕事をつづけなさい」という女性の生き方の部分も学ばせてもらえたのです。医局で4年間を過ごしたのちに、お見合いで結婚もして子どもを授かりました。子育て中は週に2〜3回、大学の最先端の知識を見ておくために大学の医局で外来をしたり、そのころは父も健在だったので井上病院で、内科医として外来もしていました。さほどお金が稼げなくても仕事は維持しようと、教授の教えに従っていたのです。

人間と人間の付き合いを深め、自身の着地点をめざす

今後、先生は看取りをご自身の医療の着地点としていくお考えなのだとか?

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私のなかでは、早期発見をすることも当たり前のこと、ここで治療をして元気になってもらうことも当たり前のこと、また、ここから大学病院や専門病院に送り出し、治療後再びまたここに戻ってきてくれるのも当たり前のことなんですね。こういう言い方をしてしまうと誤解を招いてしまうかもしれませんが、この先はうちの病院や在宅で、患者さんが残りの時間を少しでも心地よく過ごし、そして安らかな最期を迎えられるよう看取っていくことと、早期発見が私の務めだと感じています。最近は「俺の御袋はこの病院で亡くなったんだよ」とか、在宅治療などでは「先生、本当にありがとうございました。良かったです」と多くの方々が笑顔でおしゃってくれるのです。それで「あっ、ここが私の着地点、ちゃんと最後まで医療を全うしたことになるんだな」と気づかせてもらいました。家族が最期の時、多くの方々にこんな想いを抱いてもらうためにも、もっともっと地域での医療連携を深めたいと考えています。在宅治療が浸透していかない理由の一つには、入院設備がないクリニックですと末期医療になった際に、患者さんを大学病院に戻すことができないというリスクもあるからだと思います。私たちはそういった際の受け皿にもなりたい。大学病院などで受け入れてもらえない患者さんは、当院で受け入れるなど地域のクリニックとも連携していこうと考えています。さらに医療と介護を結びつけ、患者さんの生活そのものを応援できるようにと思っています。

休日は何をして過ごされていますか?

そうですねぇ、テレビと料理かしら。いたってふつうのおばさんですよ (笑)。好きな番組や映画を見てのんびりと過ごして、夕方から料理を作り始める感じでしょうか。主人は「せっかくの休みなのだから料理なんてしなくていいよ」と言ってくれますが、私は人のためにクルクル働くのが好きなんです。平日できないことを週末カバーしたいというのもあるし、何より家族のために料理を作るのが気分転換になるんですよ。作ったものを家族が「美味しい!」、と言って食べてくれると嬉しくて調子が上がります(笑)。娘や息子たちはもう大学生になっていますから、平日は家に帰っても誰もいないことがあって寂しいんですよね。だからこそ週末の家族との団らんはとても大切ですし、何よりのリフレッシュになりますね。

地域の皆さんへメッセージをお願いします。

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父の時代のかかりつけ医は、おばあちゃんの具合が悪いといえば24時間いつでも往診に飛んで行き、簡単な手術なら外科医が1人でオペをするといったような、医療のコンビニ状態でした。ですから、患者さんとの信頼関係は自然とできていたと思います。けれど、今はかかりつけ医であっても昔のように患者さんの治療をすべて最初から最後まで行えるわけではありません。だからこそかかりつけ医は患者さん一人ひとりにじっくりと向き合い、最初の受付窓口として病気のサインに気付き、適切に対応することが重要です。例えば症状がないときですら健康診断の結果などを活用して、これから起こり得る病気に備える方法をアドバイスしたり、当院にある設備で心臓・血管系の病気やがんの早期発見に努め、必要に応じて大学病院や専門性の高い病院へ紹介します。そして治療が終了したら、主治医と連絡を取りながらその患者さんを地元で診ていく。これが当院の地域のかかりつけ医としての役目だと思っています。そのような病診連携を通じて地域医療に役立ちたいと最近痛切に感じています。

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