浅野 正直 院長の独自取材記事
浅野医院
(葛飾区/金町駅)
最終更新日:2025/09/08

金町駅北口から徒歩8分の住宅地で約60年診療を続け、地域住民の健康を守ってきた「浅野医院」。2021年に浅野嘉雄前院長から同院を引き継いだ浅野正直院長は「父が始めた地域密着の診療スタイルは守りながら、現代の医療にマッチした診断・治療を加えたい」と話す。例えば、生活習慣病の治療は、患者の普段の生活スタイルがわかるほど関係の深い医院こそ適しているとの考えから注力している分野の一つ。ただ、糖尿病や関節リウマチの治療薬などの開発は日進月歩で、新たな知識も必要。そのため現在も母校の大学病院、地域の都立病院での外来診療を続け、知識のアップデートを図っているという。そんな浅野院長に、患者の病状から治療の糸口を探り、必要に応じて病院に紹介するという、かかりつけ医としての取り組みや専門的な治療など話を聞いた。
(取材日2023年3月6日/再撮影日2025年4月21日)
約60年続く地域のかかりつけ医院を受け継ぐ
こちらの医院はどのような診療方針なのでしょうか?

当院はこの地で約60年、近隣にお住まいの方のかかりつけ医院として診療してきました。初代院長だった私の父は、順天堂大学と目黒の病院での勤務経験もある外科の医師で、当初は手術も院内で行っていたようです。また、患者さんがなるべくほかの病院などに行かなくて済むよう、内科も含め多様な領域の診断・治療を学んでおり、さまざまな病気やケガの治療にあたっていました。私は当院に非常勤として勤務した後、2014年から副院長を務め、2021年に院長を引き継ぎました。現在は、「患者さんのために幅広く診療する」という昔からのスタイルは残しつつ、新たな知見をもとに、より適切な治療法をご提案したり、病気にならないよう予防を重視したりと、現在の医療トレンドを組み合わせた診療を心がけています。
改めて現在の診療体制を教えてください。
父は2021年に94歳で亡くなりましたが、その1ヵ月前まで当院で診療を続けており生涯現役だったと言えるでしょう。患者さんとのご縁も支えになったのだと思います。それだけに父が培ってきた温かな人間関係、行ってきた診療も大切にしながら、新しいことを加えていきたいのです。現在は私が主に診療していますが、順天堂大学医学部附属順天堂医院で月に2~3回、東京都立東部地域病院で週2回、外来を担当しているため、その間は順天堂大学の医師に診療に来てもらっています。一方で、スタッフは以前と基本的に変わりません。私より患者さんのことを知っているスタッフばかりで、久しぶりに受診する方も安心だと思います。特に生活習慣病などは、ご自宅での生活や食事、運動の状況がわかることで、適切な治療や症状改善のためのアドバイスがしやすくなります。その意味で当院のスタッフは、患者さんにとっても私にとっても頼れる存在といえると思います。
こちらの診療内容や先生のご専門をご紹介ください。

順天堂大学医学部を卒業後、糖尿病、甲状腺疾患、膠原病、リウマチなどの内科全般を診ていく総合内科を専門とし、長く大学病院で診療と研究の両方に携わってきました。また、診療の幅を広げるためアメリカのフィラデルフィアがんセンターで5年間研鑽を積みました。研究は病気の要因や適切な治療法を知る基礎となるもので、その知識が現在の診療に役立っています。さらに専門性の点では、患者さんのさまざまな症状を伺って、どんな病気かを探り当て、病院への紹介が必要かどうかを判断できることも私の強みと考えています。そのため当院では内科を中心に、基本的にはどんな症状の方にも初期対応は可能で、必要に応じて適した医療機関にご紹介できます。ご紹介先は必ずしも大学病院がいいとは限らず、専門性の高い中規模病院のほうが対応しやすい場合もあります。そうした違いも把握した上で、患者さんのご希望も踏まえてご紹介します。
患者の生活スタイルや性格まで考慮して治療を提案
どのような病気の治療を行っていますか?

糖尿病の場合、食事、運動など生活改善が治療の中心になります。糖尿病を治すには患者さんの協力が不可欠で、症状やライフスタイルだけではなく、ご本人の性格も考慮して治療プランを提案します。さらに、どれくらい前から血糖値が高くなっていたのか、食事の量や質に問題はないか、糖尿病あるいはその予備群と診断された基準は何かなどを詳しく診ることで、薬よりも食事の工夫で血糖値が下げられそうかなど、治療方針を提案する上で役立てます。当院は長く通う方が多く、生活環境などいろいろな角度から診療できるのが特徴です。病気のことだけではなく生活について伺うことも、かかりつけ医の大事な仕事です。こうした治療で対応できるのは生活習慣などに起因する2型糖尿病ですが、インスリンを出す機能が働かないことが原因の1型糖尿病の患者さんには、インスリン注射などの専門的な治療を行います。
甲状腺の病気や関節リウマチにも詳しいと伺いました。
甲状腺疾患は、気づかずに過ごしている方が多い病気ですから、専門の医師として正しい診断に努めています。健康診断の項目に含まれておらず、専門の先生も少なく、だるさ、なんだかどきどきするといった不調を感じて普通の内科を受診しても、甲状腺疾患だと診断されないことも多いのです。また、関節リウマチや膠原病は自己免疫に異常が起きる病気で、関節の炎症や痛み、腫れなどの症状が出てきます。私はこうした自己免疫疾患も専門のため、適切な診断と多数ある治療薬から適切な選択ができるのが強みといえます。
高齢の方への生活習慣にアドバイスをお願いします。

加齢による筋力や体力、認知力の低下などはある程度は避けられません。ただ、生活習慣に気をつけ、日頃から運動を行うなどで、低下を遅らせることは望めるのです。例えば食事はバランスに注意して、暴飲暴食を避ける。食事が外食やコンビニのご飯になるときは、野菜を必ずプラスするなどの工夫を。これは高齢の方に限らず、若い方も生活習慣病を防ぐために大切なことです。ただ、難しいのは食事や運動に注意しても病気になってしまう方がいることですが、生活習慣の工夫と薬で、生活習慣病の進行を遅らせて長寿を実現することはめざせると思います。私の父も必要な薬はしっかり飲み、歩いたり、自転車で出かけたりと生活習慣に注意していたおかげか、94歳で亡くなる1ヵ月前まで、週1回は患者さんを診療するなど元気に暮らしていました。
急な不調などに予約不要で対応。地域の安心を守る
先生が医師になられたきっかけを教えてください。

子どもの頃からここに住んでいましたので、父が診療し、手術をし、往診に出かけていく姿を毎日見てきました。そして父の仕事が、患者さんにとても喜んでいただけているのを感じていました。ただ、素直に医学の道へ進むことを決意したかといえばそうではなく、高校時代は医学部に行くかどうか非常に悩んだというのが本音です(笑)。とても悩みましたが、科学的なことも好きでしたので、病気を研究し、その結果を誰かに還元して喜んでいただけたらうれしいと思い、それらの気持ちが決め手となって父と同じ順天堂大学の医学部へ進みました。
内科を選ばれたのはどんな理由があったのでしょうか?
一時は父と同じ外科に進もうと思ったこともありました。しかし、父の時代は当院のような小規模な医院で手術まで行うのが一般的だったのでしょうが、現代医療では先進の医療機器を使用し、より安全に配慮した手術方法が確立されたことで、個人の医院で手術に対応できる範囲は限られています。また、私は病状や病気について根本的に考えることが好きで、患者さんと話しながら診断の手がかりをつかむ内科に向いていると考えたのも選んだ理由です。父が現役だった頃は、内科的な観点と外科的な観点から患者さんの話ができ、違いがわかって勉強になりましたし、楽しかったですね。
最後に地域の方にメッセージをお願いします。

大学病院を受診するときは、紹介状や予約が必要なことがほとんどですが、当院では予約不要で気軽に受診していただけます。急に調子が悪くなったり、健康への不安があるとき、診療時間内ならいつでも受診できる安心感は、地域医療でとても大切だと考えています。また、当院は昔ながらの外観や内装ですが、私自身は大学病院と都立病院でも診療を担当し、開発スピードが速い糖尿病や関節リウマチの治療薬をはじめ、医学の知識を常にアップデートしています。生活習慣病など、患者さん一人ひとりに合わせた指導が必要な分野も、その方のライフスタイルを把握してサポートしていきますので、気軽に受診してください。