平瀬 悦子 院長の独自取材記事
水元医院
(葛飾区/金町駅)
最終更新日:2025/05/23

約60年にわたって地域に密着した医療を提供する「水元医院」。葛飾区水元の「かかりつけ医」として、内科と小児科を掲げ患者一人ひとりに寄り添う丁寧な診療を行っている。院長の平瀬悦子先生は患者とのコミュニケーションを大切にしており、診察時には病気の話だけでなく、患者のプライベートな悩みにも寄り添う。日常の何気ない会話も大切にしながら信頼関係を築いているのが特徴だ。気さくな人柄と温かい対応から、患者から「近所のお母さん」のように親しまれているという院長。園医や校医も務め、子どもたちの健康管理にも貢献。患者一人ひとりが安心して通えるよう、温かみのある医療を提供している。「楽しく過ごせるような体であり、心であってほしい」という平瀬院長に、医師になったきっかけや診療時の心がけなどについて、詳しく聞いた。
(取材日2024年11月19日)
患者にとって「お母さん」のような身近で頼れる存在
医師をめざしたきっかけは何だったのでしょうか。

父がこの医院で地域の医療を支えていた姿を身近に見ていたことが影響しています。当院は開業から約60年がたっているのですが、開業当時、この地域では医師が少ない状況でした。父が子どもからお年寄りまで幅広く診療を行う姿を見ながら育ったので、医療は私にとって特別なものではなく、生活の一部として自然に受け入れていましたね。私が診療を引き継いだのは約28年前になりますが、正直「自分にできるだろうか」という不安もありました。医院継承についてはさまざまな考え方があると思うのですが、父と私が親子であることで患者さんが安心してくださり、「先生のところなら」と思っていただけたおかげで、自然な形で引き継ぐことができました。
やりがいを感じるのはどのようなことですか?
赤ちゃんの時から診ていた患者さんが成長して、結婚して、今度はご自分のお子さんを連れて来てくださるんです。そういう長いお付き合いができること、さらにそのご家族の様子を一緒に見守らせていただけることに、特にやりがいを感じます。中には5世代にわたって患者さんを診させていただくこともあって、世代を超えて接することができる瞬間に医師としての喜びも感じますね。
患者さんと信頼関係を築くためにどんなことを意識されているのでしょうか?

私は患者さんとの会話をとても大切にしています。診察の際には病気のことだけではなく、時には日常の何げない話をすることもあるんですが、それも含めて大切なコミュニケーションだと考えています。患者さんからは「お母さん」のような存在として感じていただけているようで、プライベートの悩み事や困っていることを打ち明けてくださる方もいます。私自身、心の健康については以前から関心を持っていました。また、専門とする内科に関しても、今もなお勉強会 に参加して、先進の治療について知識を得るようにしています。例えば、薬一つとっても新しいものが次々と出てきていますし、使い方の幅も広がってきています。こうした知識を深めながら、心の問題に対しても患者さんに寄り添っていきたいと考えています。
現代社会ならではの患者の心と体の変化に合った対応を
最近感じる患者さんの変化はありますか?

特に感じるのは、コロナ禍を経て人と接する機会が減っていることによる影響です。確かにSNSなどで人とつながることはできますが、SNSで問題が起こるケースもありますよね。多くの方が悩みを抱え込んでしまう傾向にあって、特に若い世代の方々は悩まれているように感じます。例えば、うつと診断されている方の中にも、会社には行けないけれど遊びには行けるという、以前ではなかったような症状も増えています。こうしたケースは、仕事のプレッシャーとの向き合い方の問題なのかなと考えています。当院では、30~40代の仕事と子育ての両立に悩まれている女性が多いです。年代、性別を問わず、コロナ禍で人間関係が構築しにくくなった、崩れてしまったというケースが増えているように感じますね。
地域の園医や校医もなさっていると伺いました。
コロナ禍の影響は、子どもにおいても同じです。特に気になるのは、子どもたちの間で登校拒否が増えていることです。これは今の教育システムと、子どもたちが置かれている現状との間にギャップがあるからではないかと思っています。最近は教育の形が多様化してきていますよね。オンラインスクールなど、いろいろな選択肢が出てきていますし、「学校に行かなければならない」という固定観念から離れて、その子に合った場所を探すこともできるようになりました。一人ひとりに合った場所で伸び伸びと成長できる環境を提供してあげることが大切だと感じます。
健康管理で患者さんに大切にしてほしいことを教えてください。

患者さんにお伝えしたいのは、やはり「自分の体のことを知ってほしい」ということです。ですので、当院では検査結果はもちろんですが、その方の生活環境やライフスタイルが自律神経にどう影響を与えているのかも含めて、丁寧に説明するようにしています。お酒が好きな方であれば、「このくらいが適度なラインですよ」という感じで具体的にお伝えするようにしています。少しずつご自身の体の状態について理解を深めていただくことが、健康管理の第一歩だと考えています。
患者の気持ちの寄り添ってスタッフみんなでサポート
アットホームな雰囲気の院内ですが、秘訣はあるのでしょうか?

診察室では話しづらいことも、待合室だと気軽に話しやすく、悩みを打ち明けやすいことがあるようです。スタッフは全員近隣に住んでいる方なので、特にお子さんがいらっしゃる年代の方は、待合室で看護師に話しかけておられる姿を目にすることがありますね。ですので、診察室以外の場所でも患者さんの気持ちに寄り添って、スタッフ全員でサポートしていくことを大切にしています。幸いなことに、明るく前向きなスタッフばかりなので、患者さんが話しやすい雰囲気をつくれているのかなと思います。診察では、看護師から聞いた心配事や困り事を共有してもらって、患者さんが抱えている課題に寄り添いながらお話しするよう心がけています。
スタッフとの連携において工夫していることがあれば教えてください。
当院は院内処方の体制を取っていますので、患者さんが来院してから薬を受け取るまでが一連の流れとして完結できます。ただ、その分いろいろなチェックポイントがあって、スタッフには多くの仕事が伴うんですよね。そのため、どう効率的に進めていくかは、私から一方的に指示を出すのではなく、むしろスタッフの意見を積極的に取り入れることを心がけています。「みんなで考えて、みんなでやっていこう」というスタンスを大切にしていますね。現場で実際に対応するスタッフの声を大切にして、出てくるアイデアや提案をもとに改善を重ねていっています。小さな医院だからこそ、スタッフ全員の意見が届きやすく、チームとして一体感のある運営ができているのだと思います。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

患者さんにお伝えしたいのは、ご自身が楽しく過ごせるような体であり、心であってほしいということです。現代社会においては難しい面が多くあるかもしれませんが、充実した人生を送れる方が一人でも増えていけばいいなと心から願っています。患者さん一人ひとりしっかりとお話を聞きたいと考えているため、待ち時間が長くなってしまうこともありますが、私たちも精一杯サポートさせていただきますので、どうぞ安心してご相談ください。