井澤 浩昭 院長の独自取材記事
井沢耳鼻咽喉科医院
(葛飾区/お花茶屋駅)
最終更新日:2025/06/24

京成本線のお花茶屋駅から徒歩1分の商店街のビル2階に「井沢耳鼻咽喉科医院」はある。院長の井澤浩昭先生は順天堂大学を卒業後、同大学医学部附属順天堂医院、順天堂大学浦安病院、葛南病院(現・東京ベイ・浦安市川医療センター)で研鑽を積み、1993年に下町の温かさが漂うこの地に同院を開業、地域で耳鼻咽喉領域の診療を担い30年を超えた。「耳や喉の疾患には、すぐに受診をしないと取り返しのつかないものもあるため、異変時には速やかな受診をお勧めします」と語る井澤院長。その誠実な人柄に引き込まれながら、耳鼻咽喉科にかかるメリットや時代による疾患の変化などについて話を聞いた。
(取材日2025年6月4日)
地域の耳鼻咽喉領域の悩みに、幅広く応えていく
患者の年齢層や主訴など、医院の特徴を教えてください。

当院は地域に密着した耳鼻咽喉科医院ですので、基本的にはどんな相談もお受けしています。主訴の多くは鼻水が出る、喉の痛み、発熱といった風邪のような症状です。時期になると花粉症の患者さんが多くなります。2月~4月はスギ花粉症、ヒノキ花粉症、5月~6月頃はイネ科の花粉症、8月の終わりから秋口にかけてはブタクサの花粉症というサイクルですね。花粉症の代表格といえばスギ花粉症ですが、スギとヒノキは似ているためスギ花粉症の方はヒノキ花粉症も発症するケースが多いのも特徴です。地域に根づいた医院のため患者さんの年齢層は幅広いのですが、少子高齢化が進みご高齢の方の割合が増えてきました。ご高齢の患者さんは先ほどの症状の他に、聞こえにくい、耳鳴り、喉の異物感などを訴えて来院されるケースも多いですね。
耳鼻咽喉科にかかるメリットについてお聞かせください。
例えば、風邪は内科というイメージがあるかと思います。しかし耳鼻咽喉科ですと患者さんの、鼻が出る・詰まる、喉が痛い、声がかれるなどの個々の訴えに対し、局所を診て診断を下せる上、そのまま治療を行うこともできます。適切な処置が行えることが耳鼻咽喉科のメリットといえると思います。内科は全身的な判断を下すのに対し、耳鼻咽喉科は専用の機材を使用することで喉の奥などを直接見ることができる点もメリットですね。
特に力を入れている診療はありますか。

地域の開業医として何でも診るため、特に力を入れている診療があるわけではありませんが、慢性上咽頭炎の方に対してBスポット療法も行っております。また、風邪や感染症と似た症状であっても、喉などに腫瘍ができているケースがまれにあります。そのため、腫瘍を見つけ出し適切な処置をするのが当院の役割だと思っています。さらに異変を感じたらすぐに耳鼻咽喉科へかかるべき疾患もあります。まずは突発性難聴ですが、発症するとすぐに治療を開始しないとそのまま聴力が回復しないことが多いのです。喉の痛みや物を飲み込みにくいなど風邪の症状と似ている急性喉頭蓋炎は、発症後数時間で窒息につながるたいへん怖い疾患です。これらは耳鼻咽喉科が専門なので、異変を感じたらすぐに来院してほしいですね。また、当院で対処できない疾患の際には、東京慈恵会医科大学葛飾医療センターや、母校である順天堂大学医学部附属順天堂医院などをご紹介しています。
医療行為と説明の分業で、患者の待ち時間削減に努める
開業して30年以上になります。地域の特徴と、時代による疾患の変化を教えてください。

ここは下町なので、気さくな方が多いですね。古くからの患者さんは受付で雑談なども楽しまれているようです。時代による疾患の変化は、子どもを通して強く感じます。地域の小中学校6校の校医を開業以来務めているのですが、今のお子さんたちにはアレルギー疾患のある子が非常に多いです。具体的には花粉症とダニ・ハウスダストのアレルギーです。30~40年前には子どもの花粉症というものはかなり珍しい疾患だったので、この変化には驚いています。その原因は、日本人のアレルギー体質の変化によるものではないかと考えています。
こちらでは、患者さんを待たせない工夫をされているそうですね。
医院が混み合い待ち時間が長くなったことから、診療時の工夫をすることにしました。診療時に医療行為は私が行い、その他の説明など医師の資格がなくてもできることは可能な限りスタッフに任せるようにしたのです。スタッフには、患者さんに対して、その後いつ受診したら良いのかや、日常生活の指導、今後の生活の仕方などを丁寧に説明してもらっています。スタッフたちの働きにより、とても助かっています。開業してしばらくは、説明も含めすべて私が行っていました。しかし、そうすると診療がスムーズに進まなくなり患者さんを長時間待たせるようになってしまいました。今のかたちに変えたかいがあり、待ち時間の削減につながりました。一方では、医師による細かな説明を望む方も多いため、それが一番の悩みどころになっています。
耳鼻咽喉科の医師という仕事の魅力と、やりがいについてお聞かせください。

一つの町に耳鼻咽喉科の医院というのはそう多くないものです。そのためこの30年、地域の耳鼻咽喉科領域の疾患について責任を負うつもりで診察と治療を担ってきました。その覚悟と姿勢は今も変わりません。この町の耳鼻咽喉科の疾患や悩みに応え続けることがやりがいですね。同時に先ほどお話ししたとおり、開業以来地域の小中学校の校医を続けております。現在は小学校4校と中学校2校を受け持っています。来年小学生になる幼稚園生を対象とした就学時健診を毎年10月~11月に、小学校、中学校ともプール開きの前の健診を毎年4月~6月に行っています。地域の大切な子どもたちの健康を守るため、しっかりと対応しています。
異変の際の最初の受け皿として地域の健康を守っていく
先生ご自身のことをお尋ねします。医師になり耳鼻咽喉科を専門にされたきっかけは何でしょうか。

出身が愛知県豊橋市なのですが、地元で父親が耳鼻咽喉科の医師をしていたことが医師を選び耳鼻咽喉科を選択したきっかけですね。実は兄も耳鼻咽喉科の医師で、実家の医院を継いでいます。娘は今年の4月に隣の青砥駅で「あおと耳鼻咽喉科クリニック」を開業しました。私にとって子どもの頃に父の医院によく連れて行ってもらい、日常的に耳鼻咽喉科の医師として働く父の姿を見ていた影響は大きいと思います。しかし実は他の科も良いかなと考え、迷ったこともありました。順天堂大学を卒業し大学の医局に入局する時、友人と眼科などの説明会に参加したのです。でもやはり自分には耳鼻咽喉科が向いていると考え直し、耳鼻咽喉科に入局し現在に至っています。
お忙しい中、休日はどのようにお過ごしですか? ご趣味も教えてください。
趣味は幅広いほうだと思います。特に音楽が好きですね。中学生の頃からバンドも組んでいました。そのため音楽の嗜好はロックから始まり、その後ジャズやクラシックも聴くようになりました。今ではそれらすべてのジャンルが好きですね。また、映画鑑賞も好きでなのですが、やはり映画館で観ると迫力があって楽しいですね。ジャンルはこだわらず何でも観ますが、特にSFのハリウッド映画がスケール感を感じられて好きです。旅行には国内外とも出かけます。子どもが小さかった頃は夏休みなどに毎年海外と軽井沢には出かけていました。余談ですが、昨年10年ぶりにハワイを旅行しましたら物価がたいへん高騰していて驚きました。
今後の展望と読者へのメッセージをお聞かせください。

私は体力には自信がありますが、いつまでも今までと同じレベルで診察と治療を行い続けるために、健康の維持を常に考えています。また、どこの医院も共通の悩みだと思いますが、人手不足のため、スタッフにはいつもフル稼働してもらっているので感謝しているとともに、もう少し人を増やせたらと思っています。開業医というのは、その地域のホームドクターであり、何かあったときに一番最初の受け皿になるべきところです。悩みや不安があれば気軽に受診していただきたいと思っています。先ほどもお話ししましたように、耳鼻咽喉科領域には放置すると怖い疾患もあります。異変に気づかれたら早急に受診して、大切なお体を守ってほしいと願っています。