増田 幹生 院長の独自取材記事
共和堂医院
(北区/東十条駅)
最終更新日:2025/09/02

JR京浜東北線・東十条駅南口から徒歩約3分にある「共和堂医院」は、1960年の開業以来地域住民の健康を見守り続けている。地域のかかりつけ医として多くの患者の健康をサポートする一方で、消化器内視鏡の専門家として、苦痛に配慮した胃・大腸の内視鏡検査に力を注ぐ。最近は息子で副院長の増田光先生が循環器内科の医師として診療に加わり、ますます診療の幅が広がっている同院の診療について、増田院長に話を聞いた。
(取材日2025年5月20日)
医師も3代、患者も3代にわたる町のかかりつけ医
半世紀以上地域医療に貢献されてきました。

「共和堂医院」は、私の父が1960年に開業しましたので今年で65年になります。息子の光(ひかる)副院長が診療に加わりましたので、医師は3代目になります。患者さんも親子3代で通ってくださっているご家族も多いので、医師も患者も3代にわたっています。私の子どもの頃は診療所の中で生活をしていたようなもので、父が診察している姿を見て育ちました。当時から将来の希望は医師。大学卒業後は聖路加国際病院などで経験を積み、1989年頃から当院で週に2日ペースで診療し始め、父が他界した2005年に院長に就任しました。よく人から「都心で開業したらどうですか」と言われるのですが、もともと「父と一緒に地域医療に貢献したい」と思って医学部に入っているので、ほかの場所で診療することは考えたことがありません。父が築き上げた「地域密着型」の診療スタイルをこれからも守りながら、次の代につなげられたらと思っています。
息子さんが副院長に就任し、クリニック全体の診療体制が強化されたのですね。
現在は週に1日の診療ですが、光副院長が加わってくれたことで、当院の診療体制がより一層充実したものとなりました。光副院長の専門分野は循環器です。当院に通ってくださっている患者さんの中には、糖尿病や高血圧症などの持病とともに循環器疾患を抱えている方も多いため、最近の知見を持つ光副院長は頼りになります。薬や治療方針も随時相談していますし、時には私の診察の次に光副院長の診察をお勧めすることもあります。また心臓に超音波を当てて心臓の様子を調べる心エコー(心臓超音波検査)が可能ですので、心臓の大きさや形・動き、心臓の弁の動きや血液の流れに異常がないかなど、さまざまなことを調べることができます。ご高齢の患者さんは複数の疾患をお持ちの方も多いので、2人で診ることでより適切な治療が行えるようになったと思います。
感染症対策の工夫もされていますね。

感染症対策では空間的分離が重要と考えています。そこで発熱者専用の出入り口、待合室、診療スペース、トイレを用意し、感染症の疑いのある患者さんと一般診療の方の空間を分離させました。診療時間内ならいつでも診療や抗原・PCR検査ができるような体制づくりに努めていますので、まずは電話でご連絡ください。また、万が一検査結果が陽性だった場合は、個別で電話をさせていただき、患者さんが不安にならないよう、また放置して悪化することのないように回復までサポートいたします。患者さんの数が増えたときのために、周辺のクリニックにも呼びかけて、当院以外でも安全に検査が受けられるように地域の体制を整えました。ここまで感染症対策に取り組んでいる地域は、世界的に見ても少ないのではないでしょうか。将来的にはこの医療体制をどこでも構築できるロールモデルにして、東京都医師会の役員として啓発していきたいですね。
常にブラッシュアップを心がける内視鏡検査
先生が力を入れている胃や大腸の内視鏡検査ではどのようなことを心がけていますか?

苦痛の少ない検査を心がけています。当院には一度検査を受けたことのある方が再来院されるケースや、検査を受けた方が家族や友人知人を紹介していただくケースがとても多く、内視鏡検査を受けるために来日される海外在住者の方もおられます。私は現在、他の病院でも内視鏡検査を担当していますが、私を指名して受けに来られる方も多いので、腕を認めていただいたようでうれしく励みになっています。内視鏡検査はがんの早期発見に非常に有用な検査です。がんを早期に発見できれば、内視鏡による切除で済む場合が多く、胃を切除するような大がかりな手術で体に負担をかけることもありません。1~2年に1度、定期的に内視鏡検査を受けていただくことで、胃がん、大腸がんによって命を落とす方は少なくなると考えています。また、消化器系の症状を訴える方で原因がはっきりしない場合にも、原因の特定に内視鏡検査が役立ちます。
内視鏡検査は何歳から受けたほうがよいのでしょうか?
20代のうちに一度は検査を受けておいたほうがいいと思います。特に胃がんに関しては、ピロリ菌がいるかいないかで発症率が大きく異なります。若くてもピロリ菌を保有する方は少なくないので、20代でまず検査をし、ピロリ菌がいたらきちんと除菌をしておくことが大切です。ただ、ピロリ菌は一度除菌すればそれで終わり、もう胃がんにはならないというものではないので、その後も定期的な胃がんの検診をお勧めしたいですね。また、ご家族や近いご親戚にがんを患った方がおられる場合も、お気をつけいただきたいですね。
こちらの内視鏡検査ではどんな工夫をされていますか?

胃は細いカメラを用いた経鼻内視鏡検査に対応しています。胃と大腸どちらの検査でも二酸化炭素送気をし、検査終了後のおなかの張りからくる苦痛を緩和するよう配慮しています。大腸の内視鏡検査では患者さんの腸管の状態が手元の感触でわかりますので、手元の感覚に神経を集中させ患者さんに痛みを感じさせないように心がけています。またできるだけリラックスしていただきたいので、検査前のわずかな時間ですがコミュニケーションを取り、信頼して力を抜いていただけるよう努めています。緊張で体がこわばっていては良くありませんからね。大事なのは患者さんにとって苦痛の少ない検査を行って検査へのネガティブなイメージを払拭すること。定期健診を積極的に受けていただけるようにするためにも、「明日はもっとうまくなりたい、苦痛の少ない上質な検査をしたい、そのためにはどうすれば良いか?」を毎日考えています。
「下ごしらえ」で患者の待ち時間をできるだけ軽減
診療の際に気をつけていることはありますか?

私の座右の銘は「一期一会」。患者さんと向き合うときはいつも心がけています。毎回、診察で患者さんが話したことは電子カルテに記入。次の時にはこちらから話をお聞きするほか、時間が許す限り患者さんのご相談に応じます。患者さんの悩みに耳を傾けることが、信頼関係を築くきっかけになっているように思うからです。また、診察前の「下ごしらえ」も必ずしています。外部委託していた検査結果が返ってきたら、患者さんが来る前に電子カルテに記入し「患者さんの薬をこう変えるのはどうか」「次回はこんな説明をしよう」など、シミュレーションをしておきます。こういった下ごしらえで、患者さんの待ち時間をずいぶん減らせていると思います。
待ち時間の軽減にも気を配っておられるのですね。
そうですね。この下ごしらえのおかげで患者さんが診察室に入るとすぐに本題に入ることができるので、患者さんの数が多いわりには待ち時間を少なくできているのではないでしょうか。患者さんの中には30~40代のビジネスパーソンの方も多いのですが、この年代の方はおそらく一番休みにくいですよね。それでも来院してくださっているのだから、できるだけ効率の良い診療を提供したいと考えています。感染症の疑いのある患者さんの場合、症状によっては来院するのも大変でしょう。そのため院内の滞在時間を最小限にするために、事前に連絡いただいた時に詳しく問診を行っています。
最後に、読者へのメッセージと今後の展望をお聞かせください。

ぜひご自身に合ったかかりつけ医を見つけていただきたいですね。適切な医療を受けるためには、総合診療的にプライマリケアができるかかりつけ医を持つことが重要です。専門外のことも相談できますし、ちょっとした相談が病気の早期発見につながることもあります。いつでもなんでも相談できるかかりつけ医は、患者さんにとっても財産だと思います。もし他院を紹介してもらうことになっても、人脈を生かして適切に医師を紹介してくれることが多いと思います。また、医師にとっては、初期教育でこうした総合診療の知識と経験を積む機会はとても貴重ですから、今後、私自身も若い医師の教育に力を入れていきたいと思います。