藤澤 惇平 先生の独自取材記事
藤澤こどもクリニック
(練馬区/練馬駅)
最終更新日:2025/10/24
練馬図書館のすぐそばにある「藤澤こどもクリニック」。扉を開けると、明るい中庭と遊び心あふれる植木が目に映る。まるで公園のような開放感に、子どもたちの笑顔が自然と広がる場所。2階の待合室は日差しに満ち、おもちゃや絵本、大型タッチパネルで遊ぶ子どもたちの声が響く。30年以上にわたり地域に根差し続けてきたこの場所で、大学病院の小児救急で研鑽を積んだ2代目・藤澤惇平先生が大切にしているのは「子どもと家族が安心して通えること」。診療への想いを聞いた。
(取材日2025年8月21日)
小児科の精鋭チームが幅広い診療に対応
クリニックにはどういった疾患の患者さんが来ますか?

特定の疾患に偏ることはなく、本当に幅広い患者さんがいらっしゃいます。風邪や胃腸炎をはじめ、アレルギー、夜尿症や便秘、発達障害や心の問題まで対応しています。MRIやCT、脳波といった一部の検査を除けば、ほとんどの疾患に対応可能です。アレルギーに関しては、食物経口負荷試験に加え、減感作療法も行っています。また、心理カウンセリングやWISC(発達検査)を取り入れ、お子さんの成長や心のケアを総合的にサポートしています。さらに学童以降の感染症ではPCR検査を導入し、精度の高い診断を実現しています。重度のアトピー性皮膚炎や喘息に対しては、生物学的製剤という注射薬を用いた治療を導入していますし、低身長症例などに対する成長ホルモン治療も行っています。こうした体制は、練馬区内でも数少ない取り組みだと思います。
藤澤孝人院長の代から、この場所で診療を行っているそうですね。
1996年の開業から約30年、この地で診療を続けています。現在メインで診療を行っている建物の向かいに、以前クリニックが入っていた建物があります。そちらも引き続き、主に心理カウンセリングの場として利用しています。大勢の人がいる場所が苦手なお子さんや、音に敏感なお子さんも落ち着いて相談できますし、ご家族にとっても安心して相談できる環境です。クリニックの近辺は私にもなじみがある場所です。小学生まではこちらで生活していたので、図書館や公園で過ごした思い出がたくさんあります。だからこそ、地域に根差したクリニックであり続けたいと考えています。
現在の診療体制と診療内容について教えてください。

当院には2025年10月時点で常勤医師5人、非常勤医師5人の計10人全員が日本小児科学会小児科専門医です。それぞれが得意分野を生かしながら協力し、幅広い症状に対応しています。さらに“こどもの心”の相談にも力を入れており、専門スタッフが8人在籍しています。練馬区内でもここまでの体制を備えたクリニックは限られており、少しでも多くのお子さんとご家族の力になれるよう、日々診療に取り組んでいます。
明かりを絶やさず、安心できる灯台のような存在に
先生はどのようなご経験を積まれてきたのでしょうか。

これまで大学病院で約8年間、小児救急を中心に経験を積みました。救急特有の慌ただしさや複雑な状況が同時に進んでいく空気が、私には不思議と心地良く感じられたのです。在籍中は大学院に通いながら、東京都立墨東病院やイムス富士見総合病院、板橋中央総合病院などの関連病院でも臨床に携わり、多様な経験を積みました。勤務先は、当院と連携しやすい医療機関を意識的に選んできました。クリニックから紹介状を出す際、相互に信頼関係があれば、その後のやりとりも円滑になります。紹介先とのスムーズなコミュニケーションは患者さんの安心につながる……その視点を大切にしてきました。
医師になったきっかけについて教えてください。
親族に医師が多く、私にとって医師という職業はとても身近な存在でした。自然な流れで医学を志しましたが、高校生の頃には一度だけ建築家に憧れたことがあります。医療か建築かで進路に迷い、母と夜明けまで語り合った時間は、今振り返っても大切な思い出です。その中で、人を支えたいという気持ちが自分の中で揺るぎないものになり、最終的に医療を選びました。その選択は間違っていなかったと確信しています。患者さんから感謝の言葉をいただけることは何よりの励みであり、不安や痛みを抱える方に寄り添い、少しでも心が軽くなるようにお手伝いできることに、大きなやりがいを感じています。
診療を行う際、ポリシーとしていることはありますか?

診療の際に大切にしているのは、患者さんやご家族にとって“灯台”のような存在でいることです。灯台は暗闇の中で道しるべとなり、迷ったときに進む方向を照らしてくれます。現代は核家族化が進み、育児に迷ったときに気軽に相談できる相手が少なくなっています。インターネットには情報があふれていますが、どれを信じて良いのかわからず、かえって悩みが深まることも少なくありません。だからこそ、私たちは安心して声をかけられる場所でありたいと考えています。緊急時には医療者として主導しますが、多くの場合はお子さんやご家族が納得して選択できるよう寄り添い、支えていきます。暗い表情で悩む親御さんよりも、相談して少し笑顔を取り戻したお父さんやお母さんの姿を見るほうが、きっとお子さんも安心できるはずです。どんな小さなことでも、不安や迷いがあればどうぞ気軽に話してください。
患者やその家族の安心感を第一にした治療を
父である孝人院長は、惇平先生にとってどういった存在ですか?

父は本当に“すごい人”だと思います。私の進路にも医師としてのやり方にも、一切口を出さずにただ見守ってくれました。息子としては、何も言わずに信じて任せてくれる姿勢に、深い愛情を感じます。もし自分が父の立場だったら、つい口出ししてしまったかもしれません。そんな父から学んだのは“家族に寄り添う診療”です。発熱したお子さんを診るときも、症状だけでなく看病するご家族の疲れまで考えて処方を工夫する……父はいつもそうでした。熱は時間がたてば下がりますが、ご家族の心労は重くなってしまう。だからこそ安心できるように支えることを大切にしていたのです。気がつけば、私も同じように患者さんやご家族の気持ちに寄り添う診療をしています。父の背中を見てきたからこそ、自然と身についたのだと思います。そんな親子のつながりを感じるたびに、ありがたさと温かさで胸がいっぱいになります。
患者さんの声も大切にされているそうですね。
はい。ありがたいことに患者さんからは日々さまざまな声をいただきます。お褒めの言葉もあれば、時には厳しいご意見もありますが、それは当院に期待してくださっているからこそだと受け止めています。実際、会計の方法や待合室の呼び出しシステムの導入も、すべて患者さんの声がきっかけでした。最近では「診療時間が短くて相談しづらい」という声を受け、平日の比較的落ち着いた時間に相談専用の外来を新設しました。通常の診療、特に土曜日などは混み合うため、一人ひとりに十分な時間を取るのが難しいのですが、専用枠を設けることで安心してご相談いただける体制を整えています。これからも患者さんの声に真摯に耳を傾け、スタッフと協力しながら改善を重ねていきたいと思います。
今後はどういったクリニックをめざしていきますか?

地域の皆さまにとって、世代を超えて安心して通える“道しるべ”のような存在でありたいと願っています。父から受け継いだ「家族に寄り添う診療」を大切にしながら、患者さんやご家族が迷ったときに気軽に相談できる場であり続けたいと思います。こうした思いを支えるために、スタッフにとっても「ここで長く働きたい」と感じられる環境を整え、ともに歩んでまいりたいと考えています。私自身、3人の子どもを育てており、常勤の先生方も同じように子育て真っただ中の父や母です。だからこそ、子育ての大変さや悩みに心から共感しながらお話を伺えると考えています。「こんなこと相談してもいいのかな」と迷わず、どんな小さなことでもぜひご相談ください。ふらっと立ち寄っていただくのも大歓迎です。これからも、患者さんの声に耳を傾けながら歩み続けるクリニックでありたいと願っています。

