嵐 裕治 院長の独自取材記事
あらし耳鼻咽喉科クリニック
(調布市/調布駅)
最終更新日:2025/05/14

京王線調布駅北口すぐの「あらし耳鼻咽喉科クリニック」で診療する嵐裕治院長は、「患者さんによっては少し説明がくどいと感じられるかも」と笑う。それだけ丁寧に説明するのは、症状や病気に関して正しい知識を持って安心してもらうため、治療の意図を理解して患者自ら治りやすい環境を整えてもらうためだ。「そうすれば薬を使う量や期間を減らすこともできます」と患者思いの治療を行う嵐院長に、その診療方針について詳しく聞いた。
(取材日2016年9月2日)
幅広い世代が通うクリニック
調布駅前で診療を始められて、どれくらいになるのですか?

開業が1990年ですから26年たちました。私は杏林大学医学部を卒業し、大学院および大学病院に10年近くいたので、開業するなら大学病院のそばで交通の便もいいところで、と調布駅前を選んだんです。当時は今ほど病診連携が充実しておらず、なじみの病院に近いほうが患者さんを紹介しやすいなど安心感がありましたからね。またせっかくの駅前なのでお勤めの方にも便利なように、診療の終わりを少し遅めの18時半までにしたのも、その頃のクリニックとしては珍しかったでしょう。職場が都心なら新宿駅から電車で20分ほどで調布駅なので、何とか間に合っていただけると考えたのです。今でも夕方以降はお勤め帰りの患者さんが多く、そうしたニーズにお応えできているのだと感じます。
そのほかにはどのような方が受診されていますか?
年齢では働き盛りの方以外に、お子さんから高齢の方まで幅広いですね。午後の遅い時間になると保育園のお迎えを済ませたお母さん方がお子さんを連れて来られます。開業後は中耳炎のお子さんや、花粉症をはじめさまざまなアレルギー症状の患者さんがいらしていますが、残念ながらアレルギー自体は治りづらく、薬は症状を軽くするためのものに過ぎません。ですから、まず原因となるアレルゲンをできる限り遠ざけ、その上で症状がつらいときを中心に薬を使うなど薬の量を少なくする工夫が大切。ずっと薬を使い続けるのは肝臓への負担を考えても避けたいですから、当院では必要に応じてアレルゲン免疫療法である舌下免疫療法や皮下免疫療法、手術で鼻詰まりやくしゃみの軽減を図る方法などもご紹介しています。また、睡眠時無呼吸症候群の患者さんも来院されますね。ご自身やご家族が睡眠時無呼吸症候群ではないかとお悩みの方も、ご相談いただければと思います。
耳鼻咽喉科の重い病気として、喉のがんなども考えられますが?

ええ、それを見落としては大変ですから、喉に関してもきちんと観察して専門的な検査が必要なときは適切な医療機関をご紹介しています。患者さんは急に声が出なくなった、かすれた、痛みや違和感があるときなど、声帯のポリープや咽頭がんを心配して受診されますが、病気ではないことが多いものです。こうした症状の原因として考えられるのは喉の粘膜の乾燥です。夏はエアコンの使いすぎ、冬は空気そのものが乾燥している上、鼻が詰まりやすいと口呼吸が多くて喉が乾燥しやすくなります。そうした方には就寝時にタイマーでエアコンを切る設定にしたり、加湿器を使ったりと治りやすい環境をつくることも重要とお伝えしています。
子どもやその親世代など年代別に注意すべき病気は
子どもに多いという中耳炎について教えてください。

一般的に中耳炎は鼻が悪いことと関係しています。鼻の奥の部分は耳の一部とつながっているため、鼻が悪くて鼻腔内の圧力調整がうまくできない、たまった鼻水から細菌が耳に入り込むなどして中耳が炎症を起こすのです。またアデノイドなど喉の病気の影響で中耳炎になることもあります。ですから自分で鼻をかめないお子さんの中耳炎は、耳だけ診ても根本的な解決にはなりません。そのため当院ではあまり薬に頼らず、「親御さんが鼻水をこまめに取ると中耳炎の治りが早くなることが期待でき、徐々に中耳炎になりにくくなることも望めますよ」と助言することも多いですね。うわさでは「先生は説明がくどい」と感じる方もおられるようですが(笑)、お子さんの病気はご家族にしっかり説明して一緒に治療に取り組んでいただくことが大切。「先生に言われたから仕方なく」よりは、理屈や理由をわかった上でやっていただくほうが効果の向上にもつながると考えています。
親世代となる30、40代ではどんな注意が必要ですか?
鼻が詰まりやすいと受診された方を調べたらアレルギー性鼻炎だったり、よく耳が詰まる患者さんが耳管狭窄症や耳管開放症などの病気だったり、何げない変化が実は病気の兆候ということもあります。気になる症状は早めに原因を確認していただくといいですね。まためまいの場合、一番に調べるべきは脳梗塞のような脳の病気かどうかです。まず脳神経外科や内科を受診して、そこで脳に問題がないと診断された後に当院のような耳鼻咽喉科にお越しください。ただしめまいが起きている間は自力での移動は諦め、自宅ならしばらく横になる、外出時はしゃがんで落ち着くまで待つなどしたほうが安全です。無理に移動して階段から落ちたり、事故に遭ったりしてけがをしては大変ですから。
そのほかに先生がよく診られている病気はありますか?

耳や鼻などの感覚器を扱う耳鼻咽喉科の場合、ストレスの影響も出やすいですね。先ほどお話ししためまいのほか突発性難聴などのご相談もよくあります。こうした症状は体の疲れや睡眠不足が重なると余計に出やすいため、働き盛りの世代や子育てで忙しいお母さん方は要注意です。聞こえにくいと気づいて、もし一晩たっても自然に治っていなければ受診してください。神経の病気は早めの対応が大切で、発症して数日のうちに治療を始めたときと、1、2週間たって治療に入るのとでは、期待できる治りやすさや治るまでの期間、さらにはどの程度まで回復が見込めるかも違ってきます。このほか、以前急に声が出なくなったと受診された患者さんはストレスによる心因性発声障害だったということがありました。この方にはがんなどの病気ではないと説明して安心していただき、リハビリ等を行いました。
患者一人ひとりの生活にも配慮した治療をめざす
先生が医師になられたのは何がきっかけでしたか?

あまりこれといったきっかけはなかったですね。同じくらいの成績だった同級生が医学部をめざしていたので自分も……という感じでしょうか。ただ入学してみると人の命を扱う仕事の重みと素晴らしさにふれて、この道を選んでよかったと感じています。勉強以外には部活でバスケットボールをやり、冬はスキーに行き、なぜか学園祭時期には落語研究会に入って講演に参加するなど学生生活も充実していました(笑)。耳鼻咽喉科は当時としてはややマイナーな分野でしたが、耳や鼻などの感覚器を扱う面白さや外科手術もできる点に惹かれました。
患者との接し方など心がけていることを教えてください。
患者さんに納得していただけるよう、丁寧な説明を心がけています。耳や鼻、喉は痛みや違和感があったときどうなっているのか、患者さん自身にはご覧になれない部位。初診の方など、初対面の私が「問題ありません」と言うだけでは納得されないこともあります。特に喉の異変ではがんを心配される方も多いため、当院では口の中や喉の奥を撮影した写真を見ていただき、プリントしてお渡ししているんです。ご自分でもしっかり確認できると安心できるでしょう。こうやって物事を丁寧に進める中で、患者さんから少しずつ信頼していただけるのではないでしょうか。そして患者さんを一人の人間として診て、ストレス性の症状を改善するための暮らし方など、その方の生活スタイルなどにも配慮した治療をめざしています。
これから受診する方に向けてメッセージをお願いします。

ご自分の体についての病気や健康などで何か疑問をお持ちでしたら、気軽に受診していただきたいと思います。最近はインターネットでも健康情報は多く手に入りますが、あるサイトではこう書かれていても、ほかでは逆のことや全然違うことが書かれているなど、情報がたくさんありすぎてどれが本当かわからない状態ではないでしょうか。そうした場合、人間は自分に都合のいい情報だけを信じてしまいがちです。しかしそれが本当に正しいとは限りませんから、やはり専門家である医師に相談していただくことをお勧めします。そうした部分から病気に関する知識を深めて健康への意識を高め、病気になりにくい、なっても治りやすい環境や体質を整えてほしいと思います。