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塚本 一 院長の独自取材記事

医療法人社団欣助会 吉祥寺病院

(調布市/調布駅)

最終更新日:2019/08/28

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60年以上前から続く精神科の専門病院「吉祥寺病院」を受け継いだ塚本一院長は、「医局の強化」「ソフトの強化」「ハードの強化」を掲げて病院の改革を進め、常勤の医師を6人から15人に増やすなど医療の質の向上を図ってきた。さらに日本医療機能評価機構の病院機能評価を受けることで、病院の医療全般、運営面までをレベルアップさせ、ハードの強化としては2004年に新病棟を開設。現在は整備された院内環境と明るく開放的な雰囲気の中で、落ち着いて診療を受けることができる。またこの改革の中で塚本院長は統合失調症を同院の専門領域と定め、2010年に認定を受けた精神科急性期治療病棟で救急患者を受け入れ、一般病床や外来でも治療やリハビリに取り組むなど、同病に関して幅広く診療を行っている。加えて患者の社会復帰にも力を入れ、入院中から退院後の暮らしを見据えたリハビリテーションにも積極的で、退院後もデイケア・ナイトケア、訪問看護などを用意して患者や家族のサポートを継続。「統合失調症の患者さんとご家族、健常の方が一緒に暮らせる地域社会づくりが目標」と語る塚本院長に、同院の特色について聞いた。
(取材日2016年12月2日)

統合失調症の患者が地域で暮らせるよう支援

こちらは開院当初から精神科の専門病院と聞きましたが?

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当院は1954年に76床を持つ精神科の病院として私の父が創設し、現在は統合失調症を専門領域として345床にまで発展しています。当初から患者さんの社会復帰を前提に診療を行い、1964年にはご自宅でも自分らしい生活が送れるよう作業療法を開始しました。その翌年には患者家族会「やすらぎ会」を結成し、患者さんのご家族同士が情報共有できる場を提供しています。患者さんの社会復帰にご家族の協力は欠かせませんから、このほかに「家族教室」を開いて病気や治療薬、利用できる社会資源など基本的な知識を医師や薬剤師、精神保健福祉士(PSW)からご紹介し、また「ファミリーサポートセミナー」では患者さんへの適切な接し方、さまざまな問題への対処法などを学ぶ機会を設けています。ご家族が悩まれたり、ご自分を責めたりされないよう、統合失調症は誰にでも起こり得る「慢性の脳の病気」であり、治療も可能だと知っていただきたいと思います。

では統合失調症とはどのような病気なのでしょうか?

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統合失調症はうつ病などと並ぶ、代表的な精神疾患といえます。脳の神経ネットワークにトラブルが生じる「脳の機能障害」で、10代後半から30代くらいまでの方に多く見られ、遺伝的要因や環境的な要因、脳内の神経伝達物質などさまざまな要因が複雑に絡み合って発病すると考えられています。症状としては、幻聴、妄想などの陽性症状、やる気がなくなったり自分の考えがまとまらなくなったりする陰性症状、外から入ってきた情報や物事を認識する認知機能が低下する認知機能障害などが挙げられます。このため現実を正確に判断する能力が低下したり、感情や意欲のコントロールができなくなったりして、適切な対人関係を保てずに外からの刺激に正確に対応できないなど社会生活が困難になるケースもあります。しかし私が院長に就任した20年近く前から、医療従事者の間では「治る病気」との認識が一般的でしたし、その治療法も日々進化しています。

こちらではどのような治療を行っていますか?

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入院の場合は急性期医療と機能回復に向けた治療に大別されます。救急も含む急性期医療では必要に応じて向精神薬を適切に使用しながら、その方の症状を検討する多職種のカンファレンスを入院1週目と4週目に行い、改善の様子などをきめ細かく確認して情報を共有。一時的に行動制限を行ったとしても、できる限り早く一般病床で過ごせるよう症状の沈静化をお手伝いしていきます。その後の機能回復でも医師、看護師、PSW、作業療法士(OT)、薬剤師、管理栄養士などの専門職がチームで支援し、患者さんごとに必要なリハビリテーションを提供します。当院では早い段階からOTによる作業療法を導入して日常生活の動作を中心にリハビリを行い、また患者さんが地域の中で自分らしく生活できるような社会的スキルを養うトレーニング、SST(Social Skills Training)では対人関係の技能や適切な服薬方法など段階的に習得していきます。

退院に向けた支援や外来診療についてはいかがですか?

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退院支援には入院中のSSTも含まれ、例えば退院後のご不安を少しでも解消する目的で、当院を退院した患者さんに退院後の生活を講演してもらう機会を設けました。さらに「チャレンジグループ」では複数の患者さんがグループとなり、退院した患者さんのご自宅をOTの同行のもとで訪問し、ゴミの仕分けなど日常生活を体験するプログラムも用意しています。そして患者さんとご家族には退院後の希望をお伺いして、その実現に向けたリハビリや社会資本の利用などを当院で十分検討した上で退院していただきます。退院後は当院でデイケアやナイトケアをご提供するほか、ご自宅への訪問看護も行っています。入院から外来診療に切り替わっても、こうしたデイケア・ナイトケア、訪問看護、作業所などのスタッフ、市役所の担当者、ご家族を交えたカンファレンスを実施し、患者さんの現状や課題を共有し、安心して暮らしていただけるよう適切な診療や支援を行います。

これからの病院の目標を教えてください。

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統合失調症の患者さんとご家族、健常な方が一緒に安心して暮らせる地域の実現が目標です。私の父は開院当初から「患者さんが地域で暮らせるように支えるのが精神科の役割」との考えを持ち、病院周辺に患者さんが暮らしやすい環境を整えてきました。例えば退院した方に何かあると、当院からPSWが駆けつけて対応するなど地道な取り組みを続けた結果、統合失調症の方でも入居可能な物件が増え、それによりグループホームや作業所も多くなったのです。今後もこうした患者さんとご家族への支援、健常な方の病気への理解、万一のトラブルへのケアをさらに進めたいと考えています。またこれらの活動は医師だけでなく看護師、PSW、OTなど多職種の密接な協力が必要で、各スタッフの質の向上も欠かせません。幸い当院では以前から看護師教育が充実し、また他の専門職の知識や意欲も非常に高いため、先進的なチーム医療で地域社会に貢献することが可能なのです。

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