矢島 寿広 院長の独自取材記事
神田眼科診療所
(千代田区/神田駅)
最終更新日:2026/03/10
1955年の開業以来、神田の駅前で人々の目の健康を見守り続ける「神田眼科診療所」。クリニックの3代目を任されているのが矢島寿広院長だ。「患者さんにかける負担を最小限にとどめ、最大限の効果を提供する」という治療方針には、患者の費用や通院の苦労を減らすことはもちろん、現代医療の課題である医療費の削減まで見据えた考えがにじんでいる。大規模病院で眼科の部長を務め、数々の手術も経験してきた矢島院長ならではの視点だ。しかし一方で、患者さんとの会話が好きだという気さくな一面も見せる。特に初診では、治療のことや病気のことなど許す限りの時間をかけて熱心に伝えているという。インタビューでは苦労話もユーモアたっぷりに語ってくれた矢島院長。そんな人柄と豊富な経験が多くの患者から慕われている理由と言えそうだ。
(取材日2013年7月29日)
負担を減らし、最大限の効果が得られる治療をめざす
治療方針を教えてください。

患者も医師も必要最低限の労力で最大の効果をめざすという方針です。とある著名な眼科の先生で「初めて来た患者さんでもその日のうちにやれることは全部やる」という方がいらっしゃいます。私は直接その先生に教わったわけではないのですが、この考え方にたいへん感銘を受けました。一般的な医療機関では、初診で問診し簡単な検査をし、予約を取ってまた後日来院することが多いですが、それをできる限りその日中に終わらせようというのです。そうすれば、患者さんの費用や通院の負担を軽減できますし、効率が良くなるのでより多くの患者さんを診ることができます。また、国の医療費の削減にもつながりますよね。クリニック経営の立場から言うと患者さんが何度も来てくれればその分代金が発生しますから、ありがたいことなのですが、それは正しい医療ではないと思います。私は可能な限り少ない通院回数で完治していただける治療計画の策定を常に意識しています。
こちらは神田の駅前という立地ですから忙しいビジネスマンも多いことでしょう。
患者さんの9割ほどはビジネスマンですね。仕事を持っていて健康保険の被保険者、つまり本人であることがほとんどです。症状としては一般的な結膜炎での来院が一番多いのではないでしょうか。大学病院にいた頃ほど重傷の患者さんを診ることは少なくなりました。ですが、初診の患者さんに対しては特に丁寧な説明を心がけています。そもそも私は、患者さんと話すのが好きなのです。病気や治療のことなど時間の許す限りたくさんお話をして、わからないことはどんどん質問してもらいたいと思います。私が一番避けたいと思っているのは初診の段階で不満を持ったまま、次々別の医院に移ってしまうこと。俗に言うドクターショッピングですね。患者さんにとっても時間や費用の無駄ですし、医師にとっても次回の治療のために準備したことがすべて無駄になってしまいます。そうならないためにも最初の段階でたくさんお話をして、お互いの理解を深めたいと思っています。
開業前は大学病院をはじめ総合病院に勤めていらっしゃったようですね。

大学を卒業後、順天堂大学の眼科学教室に入局して以降、都内はもちろん山梨や埼玉、北海道の病院にも勤めました。アメリカのフロリダにも留学したのですが、波瀾万丈とも言える経験でしたね。大学で留学の話が持ち上がった時、当時遺伝子の研究をしていた私に白羽の矢が立ったわけですが、何せ急なことだったので戸惑いました。2年ほど滞在して研究を行いましたが、ある日研究所が大きなハリケーンに見舞われ、ライフラインが途絶えてしまったのです。1週間近くの避難生活を経てどうにか研究所に戻ってきましたが、この災害がきっかけとなり日本に帰ることになりました。
3代目を務めながら他院での手術もこなすタフな院長
先生は3代目の院長だそうですね。

2代目が私の母、初代が母の先輩にあたる医師で、私が3代目です。私は当院を引き継ぐ直前まで埼玉の越谷市立病院で、眼科の部長を任されていました。大変な部分も多かったのですが、ある程度自由が利きますし、理想の医療を求めるには最適な環境で仕事にやりがいを感じていたのです。そんな中、当院を継ぐことになったのでちょっとだけ未練がありましたね。私は網膜剥離や白内障の手術を得意としていましたが、当院を継ぐことを決めた時点でもう手術はしないつもりでした。当院は建物の構造上、手術の設備をそろえることができないのです。しかし、たまたまお声がかかり、今でも毎週水曜日に埼玉の「よつばアイクリニック」で白内障の手術を担当しているほか、山形の病院にも月1回ほどお手伝いに出向いています。そこで私が当院を空ける間、今でも母が診察を行っているのです。母に診てもらいたいという患者さんも多いため、まだまだ母の存在は大きいですね。
今でもたくさんの手術を行っているのですね。
そうなんです。私は何かものを作ったりするような、細かな作業が好きなので、眼科の手術に今でも携われることは非常にありがたいことだと思っています。いつもいる場所と違った環境に身を置くと新鮮味がありますし、いい勉強にもなっています。
やはり親の背中を見て医師になりたいと思われたのでしょうか。

実を言うと子どもの頃は医療にあまり興味がありませんでした。母も祖父も医師でしたので、医療が常に身近にはあったのですが、幼い私にはあまり魅力的な仕事に見えなかったのです。パソコンが好きだったのでIT業界に興味があり、大学時代には工学部を受験したいとも考えていて、最後まで迷いました。結局は医学の道に進みましたが、最初は眼科ではなく外科をめざしていました。当時の私は漫画に登場する天才外科医師に憧れていたのです。しかし、大学4年生の実習の時、教授の助言を受け最終的には眼科の道を選びました。紆余曲折ありましたが、今となっては眼科医という仕事は私に合っているように感じており、この道を選んで正解だったなと思っています。
オルソケラトロジーなど近視矯正にも対応
近視矯正関係の診察もされていますね。

当院では眼鏡処方、コンタクトレンズ処方に加えてオルソケラトロジーも可能です。オルソケラトロジーは夜寝る時に専用のコンタクトを装用することで視力の回復が見込め、日中は裸眼で過ごしても視力を保つことが望めるというもの。積極的にお勧めするというよりは患者さんのご希望があれば説明させていただくというスタンスを取っています。人によって適正がありますしライフスタイルもさまざまなので、一概にすべての方に効果が期待でき、便利になるとは言えないのですが、実際にオルソケラトロジーを選択されている患者さんは多いので、興味がある方はぜひお尋ねいただきたいと思います。
日々の診察でふと思うことなどはありますか。
当院の患者さんの多くが働き盛りのビジネスマン。社会の最前線にいる人たちですから、患者数の増減やちょっとした変化で社会情勢の影響が分かります。それが経営者としては大変なところでもあり、個人的には興味深い部分でもありますね。また、神田は古い部分を残した赴きのある街並みが魅力です。一方で再開発がなかなかないので、新しい人が入ってくることも少ないようですね。それから、当然ですが大学病院とは患者さんとの関わり方がまったく変わりました。大学ではよっぽどのことがない限りローテーションがあり病院から医師がいなくなってしまうものです。患者さんもそのつもりで来ているので非常にドライな関係と言えます。しかし当院のように長く地域に根づいてきたクリニックでは、それだけ患者さんとのお付き合いも長くなるものです。
それでは最後に、今後の展望をお願いします。

現状の良い状態を継続しつつ、一人ひとりの病気や薬、将来的な治療計画の説明に割く時間を確保して、私のめざす「最小限の努力で最大限の効果」が得られる治療を着実に実行していきたいと思っています。当院はたまたま昔から予約制を導入していなかったのですが、現在もそれを継承しているのは「予約して詳しい検査は次回に」ということをしたくないから。診察してみて検査の必要があればその日のうちにできるようにしたいのです。少ない通院回数で患者さんの負担を減らし、私の信じる理想の医療を実践していきたいと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とはオルソケラトロジー/15万円~

