村尾 達男 院長の独自取材記事
村尾歯科
(千代田区/九段下駅)
最終更新日:2026/01/15
九段下駅から徒歩3分。目白通りを飯田橋方面に進んだ所に「村尾歯科」はある。院長の村尾達男先生は1988年の開業以来、地域の歯科医療を担ってきた。治療は保険診療を基本とし、安心して受診できる環境づくりに取り組んでいる。「患者さんの治療のゴールは人それぞれ」と、必要な情報は漏れのないように伝えた上で、最後は患者自身の選択を尊重するという。穏やかで優しげな笑顔を見せる村尾院長に、同院について取材した。
(取材日2025年11月26日)
保険診療でも患者にとって満足できる治療を
開業以来こちらで診療されてきたそうですね。患者さんの層などに変化はありますか?

そうですね、開業してから40年近くたち、患者さんの層は大きく変化したと思います。今は高齢化のためか、以前のような若い方よりは退職された方や年配の方が多くなってきたという実感です。開業当初から九段下はオフィス街でしたので、会社員の方など社会保険の被保険者本人の方が非常に多かったですね。当時はちょうどバブルの頃で、そういった方は初診料以外ほぼ費用負担なしで受診できた時代でした。また、皆さん仕事中に気軽に治療に出かけられる環境でもあったと思います。今は昼間に堂々と通院できる時代ではなくなり、夕方の17時半から18時くらいが患者さんのピークになることが多いです。若い方は夜の17時半以降を希望される傾向もあります。退職されても、しばらくの間当院に通ってくださる方もいらっしゃり、たいへんありがたいことです。
どういった治療が多いでしょうか?
当院で行っているのは、インプラントのような特別な治療ではなく、ごく一般的な歯科治療がメインです。やはり「詰め物やかぶせ物が取れた」「歯が痛い」という主訴から治療をスタートされる患者さんが一番多いですね。一般的な治療ではありますが、保険診療の範囲内でできる限り質の高い治療を提供するよう心がけています。特にここ5〜10年で保険診療の選択肢が改善され、昔は選択肢が銀歯のみだった部分も、今では白い樹脂のような詰め物など審美性を考慮した治療も可能になりました。もし外科的な処置などで「これは私には無理かな」と判断した場合は無理せず、それを専門にされている先生や大学病院に紹介するよう連携体制を整えています。ただ最近、血圧や骨粗しょう症の薬など、多種類の薬を飲まれている方が非常に増え、判断が難しいことも増えました。簡単な抜歯や外科的処置をする際にも、薬の飲み合わせや影響を十分に考慮するようにしています。
ご経験の中で、診療方針にも変化があったそうですね。

はい。時代の変化に伴い、私の診療哲学も変わりました。以前は都心という立地もあり、自由診療を希望される患者さんが多く「より良い材料=最良の治療」という考えが強かったのですが、今は治療に求める価値観が多様化し、費用とのバランスを重視される方が増えています。その中で「最適な治療が必ずしも自由診療とは限らない」と考えるようになりました。高額な治療がすべての方にとってベストなわけではないためです。材料や技術の進歩により、保険診療の審美性・機能性も大きく向上しています。インプラント治療のような特殊なケースを除けば、保険診療でも十分に満足いただけるような治療を提案できます。費用や通院負担をできるだけ軽くしつつ、納得のいく治療を受けていただくために、現在は保険診療を中心に質を重視した医療を提供するという方針を大切にしています。
新しい学びから技術も患者への意識も変化
患者側としては、歯科医師に治療費の相談はしにくいと思ってしまいます。先生は何か工夫されていますか?

患者さんが金銭的な相談をためらってしまうお気持ちは、よくわかります。当院では、患者さんが安心してご自身の希望を伝えられるよう、初診時の問診票に工夫を凝らしています。問診票には、治療をどういうふうにしてほしいかについて、3つの選択肢を設けています。それは「すべて保険治療で」「お金のことは気にせず最も良い材料で」、そして「両方を比較検討したいので説明してほしい」というものです。約8割から9割の方が保険治療の選択肢を選ばれます。ですので、私も高額な治療を無理に勧めるつもりはありません。私は勝手に「こうでないと駄目だ」と決めつけるのではなく、患者さんがどのようなゴールを望まれているかをあらかじめ伺うことが必要だと考えています。患者さんの金銭的な心配やご要望を尊重し、不要な受診のハードルを下げるように心がけています。
治療を行う上で気をつけていることを教えてください。
治療を行う際、近年特に重視しているのが投薬の慎重な取り扱いです。現在は高血圧や骨粗しょう症など、日常的に複数の薬を服用されている患者さんが増えています。特に骨粗しょう症の薬には、抜歯などの小さな外科処置でも治癒に影響が出る場合があり、より丁寧な管理が求められます。薬の種類や組み合わせは多岐にわたり、相互作用を踏まえた治療判断が欠かせません。そのため私は、患者さんの安全を第一に、必要性を慎重に見極めた上で投薬量を最適化するよう心がけています。過度な投薬を避け、痛み止めなども必要最小限にとどめることで、副作用のリスクを抑えつつ、安心して治療を受けていただける体制を整えています。
痛みへの配慮についても変化されたそうですね。

痛みに配慮した治療は、私自身の大きな成長にもつながりました。十数年前から手伝っている友人の歯科医院は「患者さんにできるだけ痛みを感じさせないこと」を徹底しており、治療にも高い基準が求められます。もともと当院でも麻酔には十分注意していましたが、その経験を通して、治療を始める前にしっかりと麻酔をする重要性を改めて実感しました。準備が不十分なまま治療を進めることは避け、患者さんに麻酔をかけ、状態をしっかり確認してから処置を行う。これを徹底することで「歯医者は痛い」という先入観を払拭し、安心して通っていただければと考えています。友人の歯科医院での学びを通じて、痛みに配慮した丁寧な治療を追求する姿勢が、さらに強く根づいたと感じています。
特別なことではなく「当たり前」を実直に
開業から40年近くたっているのに、院内がとてもきれいで驚きました。

ありがとうございます。開業から長い時間がたちましたが、特に目につく待合室や診察室の清潔感は保つように心がけています。初めて来院される方は、院内の雰囲気を見て安心できるかどうかを無意識に判断すると思います。少しでも不安に感じる要素があると、治療にも不信感を持ってしまうかもしれません。喫茶店などでも、お手洗いが汚れているとなんだかがっかりしてしまいますよね。それと同じように、患者さんが気持ち良く過ごせる環境づくりは医療の一部だと考えています。そのため、整理整頓と清潔感の維持を日々丁寧に行うことを続けています。
歯科医師になっていなかったら、なりたかった職業はありましたか?
小さい頃から手を動かして何かを作ることがとにかく好きでした。絵を描くことにも夢中で、食べていけるほどの腕前があれば画家になりたいと、高校を卒業する直前まで本気で思っていました。もちろん、両親には「何を言っているんだ」とあっさり否定されましたが(笑)。特別な勉強もしていないのにそんな進路を語れば、現実的ではないと受け取られて当然です。ただ、振り返ると歯科医師という仕事にも、歯を削る・詰める、歯科技工物を作るなど「ものづくり」の工程がしっかりあります。手仕事が好きな自分にとって相性が良かったのでしょう。子どもの頃に夢中になったプラモデルづくりなどの経験が、今の仕事にも確かに生きていると感じます。
最後に読者にメッセージをお願いします。

私自身、子どもの頃は歯科医院が得意ではありませんでした。だからこそご提案したいのは、詰め物の状態を見てもらいたいなど、ちょっとした気がかりで受診してみることです。初めての歯科医院なら、小さい虫歯治療で治療方針や歯科医師との相性を確認できます。そのために歯科検診やクリーニングを受けてみるのも一つです。痛いのを我慢して大がかりになってから受診するよりも、受診のハードルが低くなると思います。「気軽に受診する」というのは難しいことだと思いますが、ぜひご相談にいらしてください。
自由診療費用の目安
自由診療とはホワイトニング(上下)/3万円~

