塙 佳生 院長の独自取材記事
塙小児科医院
(中央区/浜町駅)
最終更新日:2026/02/06
浜町駅から徒歩約5分、日本橋浜町の住宅街にある「塙小児科医院」。2代目院長の塙佳生(はなわ・よしお)先生は、先代院長の父から同院を引き継ぎ、地域の子どもたちの健康を支えてきたドクターだ。診療では、子どもと対等に向き合うことを大切にし、保護者にも納得してもらえるような説明を心がけている。そんな塙院長は日本小児科医会の理事を務め、小児医療の発展のためにも惜しみなく力を注ぐ。「子どもは、大人が思っているよりずっとしっかりしています」と穏やかに語る塙院長に、子どもと保護者に対する向き合い方や診療への思いなどをたっぷりと語ってもらった。
(取材日2026年1月15日)
小さな違和感こそ、来院のきっかけに
開業して20年以上がたちますが、診療面で何か変化はありましたか?

日々の中で、診療そのものが大きく変わったという実感はありません。医療制度や社会の情勢など、外的な環境は変化していますが、人間の本質は変わらないと感じています。例えば、子どもは今も昔も好きなものは「好き」と素直に伝えてくれます。うそをつかない点はこれから先も変わらないでしょう。一方で、新型コロナウイルス感染症の流行を経て「大勢のお友達と遊んではいけない」と言われている子がいたり、咳エチケットや手洗いをきちんと身につけている子がいたりと、行動面での変化は見られます。パンデミックやクラスターといった医学用語も一般的に知られるようになりました。お子さんの症状をインターネットで調べ、自ら納得できる情報を選ぶことが簡単になった反面、かえって余計な不安や心配を抱えてしまう親御さんが増えている印象もあります。
保護者がいろんな情報に接する機会が格段に増えているということですね。
それは感じていますね。親御さんがお子さんを大切に思う気持ちは十分に理解していますので、目にする情報に一喜一憂してしまうのも無理はありません。インターネットでいろいろと調べた結果、かえって悩むこともあると思います。明確な受診理由がわからなくても、来院していただいて構いません。少しでも違和感があれば、それは来院する理由として十分です。親御さんが抱えている不安を一緒に取り除くのも、医師の役割だと思っています。中には、軽い症状で来院したことを申し訳なく感じる親御さんもいらっしゃいますが、「大きな症状がなければ小児科に行ってはいけない」と思わせてしまっているとしたら、それは医療側の課題でもあると感じています。
日々の診療においてそのような課題を感じる場面はありますか?

例えば、ノロウイルスなどのウイルス性急性胃腸炎の疾患にかかったお子さんについて、「保育園に連れて行っても良いですか」と相談される場面が多いです。医師が「大丈夫です」と言えば保育園に預けられると考え、判断を求められます。しかし、その時は、厚生労働省が定める登園・登校基準に沿い、難しい場合はその旨を正直にお伝えします。一方で、中央区には子育て支援の一環として、病児・病後児保育の制度がありますが、受け入れ枠が十分とはいえず、親御さんが選択に悩まざるを得ない現状もあります。今後は、医療と保育、行政が互いの立場を尊重し合いながら、より現実的な支援体制を整えていくことが大切だと感じています。
先生は日本小児科医会の理事を務められているそうですね。
はい。地域医療に携わるだけでなく、小児医療が発展していくために、行政に対して意見を発信していく必要があると感じていました。日本小児科医会ではセミナーなどが行われ、新しい医療情報や詳細なデータが共有されます。研鑽を積むことができるので、適切な医療の提供につなげられています。尊敬できる先生方と意見交換ができる環境に身を置けることは、大きな刺激になりますし、このような貴重な経験をさせてもらっていることに心から感謝しています。子どもの健康を第一に考えながら、日本小児科医会で学んだことを日々の診療に還元していきたいです。また、先生方とのネットワークを生かし、専門的な治療が必要だと判断したら、連携している医療機関に紹介しています。
子どもと対等に向き合う姿勢を大切に
診療する際に心がけていることはありますか?

お子さんとお話しする際は、医師というよりも一人の人間として、同じ目線で話しています。子どもは大人が思っているほど子どもではありません。子どもに信頼を置き、対等に接しています。私の役割は治すことだけでなく、「治るための心がけや薬の正しい使い方を伝え、モチベーションを高めること」。薬の目的や服用方法を親御さんに理解してもらい、お子さんがきちんと飲めたら「よく頑張ったね」と声をかけます。また、親御さんから医師の観察だけではわからない気づきを得られることも。例えば、生後数ヵ月の細菌性髄膜炎は機嫌が悪くなる程度の変化しか現れないことも多く、それに気づけるのは親御さんの観察眼があってこそです。そのため親御さんにも、「小さな変化に気づいてくれてありがとう」と必ず声をかけるようにしています。
先生は親しみやすい雰囲気がありますね。
私は箱崎出身で、10歳から日本橋で過ごしている江戸っ子です。小さい頃から、自分より幼い子と一緒に遊ぶのが好きでした。小児科の医師を志すようになったのも、子どもとフラットに関われる仕事だと思ったからです。院内でも肩肘張らない会話を大切にし、いつも話している下町言葉を標準語のつもりで使っています(笑)。そのためか、「話が面白い」と言っていただくことがありますね。診察では、どんな言葉を使うと目の前の親御さんが理解・納得してくれるかを探りながら、工夫して説明するようにしています。また、必要な説明を後からつけ加えると、説明の順序によっては「言い訳」になってしまいます。信頼関係を築くためにも必要な情報を事前にお伝えするようにしています。
印象に残っているエピソードはありますか?

通院してくれている子、園医・学校医として担当した子も含めて、全員が私にとって患者さんであると同時に「お友達」です。その気持ちが伝わっているのか、自慢のミニカーを私に見せようと医院に持ってきた子や、「しばらく行っていなくて先生が寂しがっているだろうから」と通院してくれる子がいて。私も子どもたちと関わっているうちに、車や鉄道に詳しくなりました。親御さんから感謝の言葉をいただくこともあり、うれしい気持ちになる瞬間はたくさんあります。
すべては子どもの笑顔のため。予防医療にも注力
力を入れて取り組んでいることはありますか?

当院では、外来診療に加え、乳幼児健診、予防接種、アレルギーや低身長症に関するカウンセリングなど幅広く取り組んでいます。一人の医師として、適切に判断し、しっかりとした治療を当たり前に行うことを心がけています。やはり自分が診た患者さんには幸せになってほしいので、自分にできることは精いっぱい頑張りたいです。近年では、HPVワクチンなどの新しいワクチンが登場し、病気を治療するだけでなく、防ぐための選択肢が広がっています。些細なことでも構いませんので、気軽に相談しに来ていただければと思います。
医療が進歩する一方で、保護者の情報の受け取り方も重要になってきているということですね。
そのとおりです。インターネットには誤った情報も存在します。症状の正体を知ろうとする気持ちがなければ調べることも、悩むこともありません。さまざまな情報にふれ、不安や疑問を抱くという行為そのものは、お子さんのことを真剣に考えている証しです。子どもの命と健康が何より大切だからこそ、数ある情報の中から正しいものを見極め、必要に応じて医療につなげていく力を育てることが大切です。だからこそ親御さんのヘルスリテラシーを高めていく姿勢が必要だと考えています。医師である私は、親御さんの悩み事を一緒に解決し、納得できる答えを見つけていきたいと思います。
読者へのメッセージをお願いします。

先ほども言いましたが、親御さんには医療に関心を持っていただけたらうれしいですね。その上で、日頃からお子さんの様子をよく見ていてほしいと思います。「何か変だな」と少しでも感じたら、来院していただいて構いません。中には、子どもが風邪をひいているけど肌荒れも気になるなど、異なる複数の症状に悩まれる親御さんもいらっしゃいます。どの診療科に行けば良いのかわからずに悩んでいる方は、まずは小児科を受診することをお勧めします。「こんな軽い症状で来院しても良いのかな」とためらわず、気になることがあれば何でも相談してくださいね。お待ちしております。

