村松 弘康 院長の独自取材記事
中央内科クリニック
(中央区/人形町駅)
最終更新日:2025/10/08

「中央内科クリニック」は村松弘康院長の父が開業し、60周年を迎えた節目にリニューアル。地域になじむデザインと利便性を両立させ、幅広い世代が通いやすい環境を整える。村松院長は呼吸器、アレルギー、睡眠、禁煙、総合内科と5つの分野の研鑽をつみ、多角的な視点で治療を提供するスペシャリスト。喘息や睡眠時無呼吸症候群(SAS)、禁煙などの治療を通じて、症状改善だけでなく患者の不安を和らげる医療を大切にしている。これまで培った知識を生かし、個々の患者に寄り添う村松院長に、医師を志したきっかけや予防医学にかける熱い思いなどについて、話を聞いた。
(取材日2025年8月7日/情報更新日2025年9月18日)
地域の医療を支え半世紀。装いを新たに歴史を紡ぐ
リニューアルに至った経緯を教えてください。

当院は、私の生まれた年に父が開業しました。2024年に60周年を迎えると同時に、私自身も還暦を迎えました。長く親しまれてきた建物も老朽化が進んでいたため、この節目に合わせて思いきってリニューアルを決断。白い大理石調の外壁にアーチ型の窓や門扉をあしらい、地域になじみながらも時代に合ったデザインを取り入れています。昔から人形町にお住まいの方や商店街の方々、そのご家族にご利用いただいてきましたが、近年はマンション建設やオフィス街の広がりにより、若い世代やオフィスワーカーも多く来院されるようになりました。そこで、お昼休みにも立ち寄れるよう診療時間を工夫し、忙しい毎日の中でも気軽に受診いただける体制を整えています。父が築いた歴史を大切にしながら、新しい時代に寄り添うクリニックへ。そんな想いを込めています。
診療方針など変わった点はありますか?
5年前に循環器内科の医師だった父が他界するまでは、糖尿病内科を専門とする兄と私の3人体制で診療にあたり、さらに母が健在だった頃は4人体制で地域の医療を支えていました。現在は兄も第一線を退き、院長である私が中心となって診療を続けています。ただ、これまで通ってくださった患者さまの行き場をなくしてはいけないと考え、母校である東京慈恵会医科大学附属病院の循環器内科・消化器内科・呼吸器内科・糖尿病内科より専門の医師を招聘し、日替わりで診療体制を整えています。リニューアルを機に幅広い診療科の専門家が加わり、体制を大きく強化しました。専門性を求める患者さまが増える中、より高度で多様な医療ニーズに応え、安心してご来院いただけるクリニックをめざしています。
複数の診療科の医師がいることのメリットを教えてください。

内科は本来一つの分野ですが、現代では細分化が進み、より専門性が求められるようになっています。そのため私の専門領域以外の症状が見つかるたびに大学病院での受診をお願いしていては、患者さまにとって大きな負担となってしまいます。特に、私の専門分野でもある睡眠時無呼吸症候群は、糖尿病や循環器系疾患を合併しているケースが少なくありません。複数の診療科の医師と院内で連携しながら治療にあたる体制を整えることで、さまざまなケースに柔軟に対応できればと思っています。また、必要に応じて、大学病院との病診連携や地域クリニックとの診診連携は行いますが、その前に院内である程度の診断や見極めができれば、より良い流れで他院にご紹介することができ、患者さまにとっての安心感につながると考えています。
患者との信頼関係を最優先にした診療方針
診察する際に大切にされていることを教えてください。

私が最も大切にしているのは、患者さまご自身が病状をしっかり理解し、納得した上で治療へ進むことです。近年「インフォームドコンセント」の重要性が高まっています。納得のないまま検査や治療を進めても、継続性が乏しくなってしまうと私自身も考えています。例えば、睡眠時無呼吸症候群を患う方が治療により改善につながったなら、喜びが大きく、その後も継続して通院してくださるでしょう。しかし、高血圧症や糖尿病を指摘されても自覚症状のない方は、治療にあまり前向きになれないのが本音ではないでしょうか。ですが、症状がないからといって「治療しなくてもいい」というわけにいかないのが内科疾患です。むしろ放置することで将来のリスクが高まります。そのため、病気の仕組みや治療の必要性を丁寧に説明し、患者さまご自身にご理解いただくことが欠かせないと考えています。
ところで、先生が医師を志したきっかけを教えてください。
父も母も、そして母方の祖父も医師であり、私にとって医療は常に身近な存在でした。そんな背景もありますが、実は私自身、2歳の頃に腎臓の手術を受けています。幼いながらに覚えているのは、白衣を着た父親らしき人が病室に来て会話をしていた光景です。その体験から「医療が、自分の命を救うために手を差し伸べてくれた」という感覚が強く刻まれました。病気のつらさや、病院での生活と日常の暮らしとの大きなギャップ、そして健康を害した時の不安感を身をもって体験しました。2、3歳の頃には「死んだらどうなるの?」と親に尋ねた記憶も残っていて、幼いながら死への恐怖や将来への不安を感じていました。こうした経験は、私の中で医療への意識を深め、「人の命や健康に携わる道に進みたい」という考えを強くするきっかけとなりました。
そういったご経験から、患者さまとの信頼関係を大事にされているのですね。

患者さまは「困っている症状をどうにかしてほしい」と願い、医療機関を受診されます。ですから、まずその症状を和らげて差し上げることが、医師としての務めだと考えています。しかし、それだけでは十分ではありません。症状の背景にある疾患を見極め、必要であれば精密検査や治療の進め方を説明し、ご理解いただいた上で診療を進めることを大切にしています。患者さまに納得いただき、次のステップへ進むことは、信頼関係を築くために最も重要だと考えています。そのためには、私自身が学び続けることが欠かせません。専門分野を深めることで、他の疾患との関連性が見えてきて、結果としてより幅広い治療や早期発見につながると感じています。つらい症状の緩和を図るだけでなく、病気への不安そのものを少しでも和らげたいと願っています。その思いこそが、私が医療に向き合う原動力となっています。
笑顔になって帰ることができるクリニックをめざして
先生の専門領域についても教えてください。

私はもともと喘息を専門としていましたが、国立国際医療研究センター在籍時に、日本ではその病気の存在すら当時ほとんど知られていなかった睡眠時無呼吸症候群と出合いました。海外からCPAP装置を取り寄せて使用していたのですが、その経験は、私の大きな糧となりましたね。睡眠時無呼吸症候群は喘息の難治化因子であるだけでなく、睡眠不足や酸素欠乏により心不全や認知症、交通事故のリスクともなり得ます。当院でも多くの患者さんを診療し、早期診断と治療による症状の改善や生活の質向上のために全力を尽くしています。
禁煙治療にも力を入れていらっしゃいますね。
私のライフワークの一つが禁煙治療です。大学病院時代には肺がんで命を落とす方もいて、タバコの害とニコチン依存の理不尽さを痛感しました。私も元喫煙者なんです。禁煙する難しさを知っているからこそ、薬を併用しながらタバコの「おいしい記憶」を断ち切ることが、成功の鍵だと考えています。喘息を専門的に診てきた経験を生かし、禁煙治療では有害性を伝えるだけでなく、タバコをやめるメリットや楽にやめられる方法をご提案。患者さん一人ひとりの生活に寄り添い、呼吸器疾患や合併症のリスクを減らすことを目標としています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。

当院は、人形町の街で父が長年積み重ねてきた努力と実績によって、多くの方にご愛顧いただいてきました。私にとっても、その歴史は何より大切な財産です。まずはその歴史をしっかりと守りながら、さらに地域医療に貢献していきたいと考えています。現在も大学で非常勤講師として教育に携わり、その人脈を生かして大学との連携を深めています。積極的な病診連携や診診連携から、地域にいながらも先端の医療を受けていただける体制づくりを進めています。その結果として、患者さま一人ひとりにとっての最良の医療の提供に努めています。これまで紡いできた歴史をしっかりと受け継ぎ、地域の皆さまにとって安心して通えるよりどころとなりたい。そして、診療を通じて笑顔になっていただける場所にしていきたいと願っています。