齊藤陽一院長の独自取材記事

さいとう歯科医院

(中央区／茅場町駅)

最終更新日：2021/10/12

茅場町にある「さいとう歯科医院」をひとことで言い表すなら、「歯科治療を通じて、人として長く付き合える場所」。同院の核となるのは、歯科治療を介した齊藤陽一院長と患者との人生の一場面のように思える。院内で目を引くのは、待合室や診療室に飾られている院長自身が撮影した写真の数々だ。季節に合わせた写真を出かけて撮影するという。また銀座の老舗の旦那衆との邦楽の会に身を置き、新橋演舞場や国立劇場、さらには歌舞伎座などの舞台にも上がってきた。さまざまな話題を持ち、知識豊富な齊藤院長に、診療へのこだわり、企業家であった父から受け継いだ「ものの見方」、趣味など多彩な話を聞いた。

（取材日2018年10月3日／情報更新日2021年2月19日）

入れ歯、義歯の技術を徹底的に学び開業へ
全身疾患との関わりも視野に総合的なアプローチで予防
機能回復を早めるために、適切な治療法を選択

入れ歯、義歯の技術を徹底的に学び開業へ

先生が開業された経緯を教えてください。

日本歯科大学を卒業後、中央区新富町の開業医のもとに勤務させてもらいました。勤務先の歯科医院は、診療に関して高い質を求められる方が多く患者さんとしておいでになられる歯科医院でした。そのような患者さんにお会いすることができるだけでも貴重な経験で、治療のお手伝いをさせてもらうことは緊張の連続でした。勤務先の院長からは、患者さんに対する言葉の選び方、たたずまい、コミュニケーション能力、そして治療技術、特に義歯に関する技術を徹底的に叩き込まれました。「今、何を考えなければいけないのか」「この後、何をするのか」など、院長と波長、思考を合わせる努力もしました。実地から得られる学習量は、大学時代とは比べようもないほど多種多様でした。この歯科医院で5年間修行させていただいた後に開院しました。

先生が歯科医師をめざしたきっかけは何だったのですか？

両親の知り合いに歯科医師の方がおりました。私の父親は会社を経営していたので、会社を切り盛りする大変さを知っていたのでしょう。一人で患者さんを診察しているその方の姿を見て「自分の息子にも自分一人でできる仕事で人生を切り開いてほしい」と、私に歯科医師としての将来を勧めました。自分としては、他の職業に憧れた時期もありましたが、結果的に、今の道は間違っていなかったのかなと思っています。落語家さんや話すことを生業にされている方にもおいでいただいていますが、歯に何かあると、「この発音がしにくくなった」などと、微妙な差異に気づかれ治療においでになります。歯の治療にとても繊細な感覚をお持ちなので、細かい要求が出ることがあります。「声の表現と歯の健康」をより良いものにするためにも、日々勉強させていただいています。

歯科医師になられたのは、お父さまの勧めだったのですね。

歯科医師ではなかった両親の勧めで35年以上も皆さんのお口を拝見させていただいているのですから、人生はつくづく不思議なものです。私には、父親の言うことには逆らえないという気持ちがありました。父親は、目のつけ所がシャープで、ものの見方が独特でした。「物事はただ真っ直ぐに見るだけでなく、いろいろな方向から見る見方がある」と実践していました。職業が異なるのですから、残念ですが歯科のことを教えてもらうことはできませんでしたが、物事の見方を教えてもらったつもりです。

全身疾患との関わりも視野に総合的なアプローチで予防

こちらでは、インプラントは導入していないとお聞きしました。

精巧に作る入れ歯をお勧めしています。義歯は患者さんのお口にぴったり合わせた完全オーダーメイドのいわばオートクチュールです。もちろん、年齢や体型が変わっても、その時々のお口に適してよく合う入れ歯に作り変えることができます。そのために、精密な型採りから始まって、歯並びや噛み合わせなどを調整していき、最終的には、なじみの良い入れ歯を製作します。見た目の美しさは譲れない条件ですから、美しさの上に機能も兼ね備えた入れ歯を心がけています。インプラントを希望される患者さんはあまりご来院なさいませんが他の先生をご紹介させていただいています。

治療にレーザーを導入されているそうですね。

レーザー治療は、レーザーの瞬間的な光と熱を患部に集中的に当てることで、組織の悪い部分を焼却できるという治療法です。無麻酔でも切開の処置を行うことができ、出血も少なく、縫合の必要もありません。歯肉の切除や切開だけでなく、虫歯や歯の根の処置、知覚過敏の対処、歯茎の黒ずみの除去、さらには歯石の除去など、さまざまな症状に対応できます。レーザーは従来の電気メスのように身体に電気を通すわけではないので、高血圧の方、妊娠中の方でも安心して受けていただけます。治療の力点を一つの治療法に置いているわけではないので、レーザーを含め、患者さんに合わせて適切な治療法を選択しています。

予防のための検診に力を入れていると伺っています。

身体全体の健康維持のために「人間ドック」を受診するように、歯もさまざまな角度から総合的に診療して、予防につなげるという考え方です。口腔内の検査、虫歯検査、歯周病検査、エックス線検査、噛み合わせ、粘膜の検査などさまざまな検査を一度に行います。結果をもとに、今後の治療にどう役立てていくかを患者さんと一緒に話し合います。患者さんにとっても、ここまで自分のお口を精密に検査して、ご自身で考える機会となることは、人生の中でもそれほど多くはないと思います。歯が痛いから、歯科医院に行くという意識から、予防する意識へと変えてもらいたいです。お口は身体への食物の入り口であり、健康への入り口です。全身疾患の原因にもなりえますから油断はできません。

機能回復を早めるために、適切な治療法を選択

先生が診療で大事にしていることは何ですか？

少ない治療回数で、いかにより良いお口の状態にできるかということです。遠方から通院をしていただく方もおいでになります。ですから、通院回数をなるべく減らしたいです。そのためには、1回の治療時間が必然的に長くなってしまいます。初診の際には、問診、治療の提案、処置を含めて最低でも1時間はかかってしまいます。噛めない人に噛めるようになってもらう、歯を削ったら仮歯を必ず作る、いつでも来院時よりも良い状態でお帰りになっていただくことを考えています。そして、患者さんとのコミュニケーションが取れる関係を大事にしています。今日、午前中に来た患者さんは、勤務医の時からのお付き合いで、35年以上になります。遠方から通院していただいてます。その間に歯が悪くなった時には治療をさせてもらうこともありましたが、今は定期的に通っていただいてお口の中をきれいにするということだけです。それが予防につながっていることになります。

プライベートで楽しんでおられることは何でしょう？

常磐津と小唄をやっています。両方とも名取にさせていただきました。邦楽といわれて三味線で伴奏をしていただき、小唄で1曲5分程度、常磐津は30分ほどの演奏時間です。銀座の老舗の旦那衆と小唄や長唄、常磐津などを披露する「銀座くらま会」の正会員です。ある時患者さんとしていらしていた常磐津三味線の家元のお話に相槌を打ったら、「いついつ来なさい」と誘われ、最初は何かもわからず常磐津のお稽古をしていました（笑）。銀座くらま会で毎年9月の後半に新橋演舞場で常磐津を務めさせていただいております。娘は歯科医師になりましたが息子はユネスコの世界無形文化財の文楽の人形遣いになっております。写真も好きで、毎年の干支を題材に撮影をします。院内には、季節ごとに時期に合わせた作品を飾っています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

歯科医院選びの基準は3つあると思います。「地理的要素」「経済」「歯科医師との相性」と思います。重視する要素は人それぞれですが、これらを組み合わせて歯科医院を選んでいるのではないでしょうか。「歯科医師との相性」は最大の要素と思います。選んでいただいたのであれば、全力で努力をいたします。また、開業時から当たり前のように滅菌について取り組んでいましたが、昨今の状況をみて、より一層考えうる対策を講じています。換気システムを一新し、これまで以上に安全性を高めるよう努めています。お口は人間の生命維持の入り口です。食事なくして成り立たない人間の身体の健康、お口の健康を常に考えて最善を尽くす。それが私の仕事だと思っています。お口の将来の最善の未来予想図を患者さんと二人三脚で一緒に描いていくことができたら、こんなに幸せなことはありません。