林 昭彦 院長の独自取材記事
林歯科医院
(中野区/中野駅)
最終更新日:2025/02/14

中野駅北口から線路沿いを東へ3分ほど歩いたマンションの2階にある「林歯科医院」は、35年以上にわたって地域の歯科医療に貢献している。院内はアットホームな雰囲気で、林昭彦院長は、診療中もユーモアあふれる会話で患者の緊張を解きほぐしている。診療内容は虫歯や歯周病の治療、義歯の作製・調整、小児歯科、予防歯科などが中心で、クリニックで対応できない診療については、他の病院を紹介している。強みの一つは、林院長自身がケアマネジャーの資格を持ち、約25年前から訪問歯科診療を行っていること。病院や老人ホームなどの施設の他、個人宅も訪問し、摂食嚥下に関する訓練や指導なども行っている。「食事はQOL(生活の質)と密接に関係している大切なことです」と、話す林院長に、診療方針や訪問歯科診療などについて聞いた。
(取材日2024年12月24日)
訪問歯科診療や嚥下の訓練も行う地域のかかりつけ歯科
昔と比べて患者さんの主訴に変化はありますか?

10~20年前に比べると、子どもの虫歯は大きく減っていて、保育園の歯科検診では虫歯を見ることはほとんどありません。一方、外来の患者さんの悩みはそれほど大きくは変化していないと感じています。以前と同様に虫歯や歯周病の治療、義歯の作製・調整が多いですね。私は摂食嚥下のリハビリテーションに関する専門性もあるので、飲み込みが悪くなったという摂食嚥下障害の相談は以前より増えています。高齢化に伴って、患者さんの年齢層は50代以上が多いですね。若い患者さんは治療が一旦終わると歯科医院に来なくなる人が多い傾向にあるようです。なので、若い人たちには、将来の健康のためにも定期検診を受けてもらい、長く通院していただきたいと考えています。
予防歯科の大切さについて改めて教えてください。
予防歯科の目的は、虫歯や歯周病などで歯を失ってしまうことがないように、口腔内の検査やクリーニング、ブラッシングの指導などを行うことです。自分では正しく歯を磨くことができていると思っていても、きちんと磨けている人は決して多くありません。検査で異常を早期発見できればすぐに治療をすることができるので、将来的に歯を失うリスクを減らすことにつながります。厚生労働省が推奨している8020運動は、80歳になっても自分の歯を20本以保ちましょうという運動で、自分の歯が20本以上残っていれば、おいしく食事をすることが期待できるともいわれています。特に、歯周病は歯を失う原因の第1位で、認知症や心筋梗塞、脳梗塞、誤嚥性肺炎、糖尿病などの疾患にも影響を与えるので、定期検診を受けていただくことはたいへん重要です。
クリニックの診療方針を教えてください。

「楽しく、来やすく、アットホームに」をモットーに、何でも気軽に話していただける雰囲気づくりを重視し、ざっくばらんに話をするようにしています。それは、歯科と関係のない雑談などをすることで、患者さんが来院しやすいなと感じてくれたらと思っているからです。地域の人たちを大事にしたいのは、私は中野区で生まれ、小学校から高校まで区内の学校に通っていましたので、地元に貢献したい気持ちが強いためです。ですので、かかりつけ歯科として信頼されることを心がけ、通院が難しい患者さんに対しては訪問歯科診療も行っています。もちろん歯列矯正やインプラント治療、顎関節症の治療などもやっていますが、患者さんのためにも高度な診療が必要なものについては、適切な病院を紹介することにしています。どのような診療を受けたいのか、患者さんの要望も聞きながら、さまざまな選択肢を提案することもあります。
介護の資格を生かし、患者に寄り添う訪問診療を提供
かなり前から訪問歯科診療をされていると伺いました。

訪問歯科診療を始めたのは、介護保険制度がスタートした2000年からです。1998年に初めてのケアマネジャーの試験が行われ、新しい資格という点に興味を惹かれ取得しました。その後、長く通われていた患者さんが高齢のため通うことができなくなり、ご家族から相談を受けたことが訪問歯科診療を始めたきっかけです。現在は私と代診の歯科医師、歯科衛生士の3人体制で、代診の歯科医師と歯科衛生士が主に老人ホームやグループホームといった高齢者施設を定期的に訪問しています。対象地域は中野区、杉並区、新宿区をはじめとした、車で30~40分で行けるエリアです。私自身は自転車で行ける範囲内の病院や個人宅を、昼休みや休診日を利用して訪問。治療だけでなく、定期的な口腔ケアも行っています。個人宅の場合は定期的に行くというよりも、要望があった際にお伺いすることが多く、その点が医科の訪問診療と違うところでしょうか。
訪問歯科診療ではどのような診療をしているのでしょうか?
診療に来てほしいという要望の多くは義歯が合わなくなった、義歯をなくされたという内容です。紛失の場合は急いで作り直して1週間程度で仕上げます。あとは高齢者に多い誤嚥性肺炎を予防するためには口腔内を清潔に保つことが求められますから、ブラッシングやスケーリングなども行います。摂食嚥下障害がある患者さんの場合は、口から何かを食べさせてあげたいというご家族からの要望があれば、摂食嚥下の訓練指導をすることもあります。併せて、食べる際の姿勢やベッドの角度、食形態など、患者さんの状況に合わせたアドバイスもご家族に伝えます。
認知症の患者さんも多いのでしょうか?

私は認知ケア専門ですので、ご家族から相談されることが多く、認知症の高齢者はたくさんいらっしゃいます。診療時に注意しているのは上から目線の態度は絶対に駄目で、会話を積み重ねてコミュニケーションを図る工夫が大切であること。認知症の程度はさまざまなので、患者さんに合わせてコミュニケーションやアプローチも変わりますが、例えば、優しく手を握って話しかけるなどして様子を見ながら診療を進めています。場合によってはご家族の協力も必要になることもあります。
高齢患者のQOLを向上させることを使命にして
介護の資格や知識はどのように役立っていますか?

患者さん本人やご家族が望まれているのは、ちゃんとご飯が食べられるようになりたいとか、外れにくい義歯にしてほしいといったことが多いです。高齢者にとって、食事という楽しみを奪われることはQOLの低下に直結しますから、好きな物を食べていただくサポートができるということは、私にとっても大きなやりがいになっています。以前と比べると、訪問歯科診療の存在はある程度知られるようになってきましたが、摂食嚥下の訓練をしている歯科医師はまだまだ少ないので、ご家族から感謝されることも多いです。また、患者さんのご家族やケアマネジャー、医科の医師たちと信頼関係を構築し、患者さんにとってより良い歯科医療を提供するためにも、介護の経験や知識を持っていることは非常に役立っています。
医科との連携ではどのようなことをしていますか?
胃ろうをつけている患者さんに何かを食べてもらう際に、どんな物だったら安心できるかを相談することが多いです。例えば、アイスクリームやムース状の物はいいけれど、プリンは駄目だとか。誤嚥性肺炎のリスクを考えて禁食のケースもありますが、どうにかして好きな物を食べさせてあげられないかを試行錯誤しながら相談しています。また、誤嚥性肺炎を予防するには口腔内を清潔に保つことが重要で、その上で患者さんには意識して食べましょうとか、食事をする際はテレビを消しましょうといったアドバイスをしています。また歯科の訪問歯科診療があることが世間にはあまり知られていないので、地域のケアマネジャーさんとも密な連絡を心がけています。おかげさまでケアマネジャーさんから患者さんを紹介していただく機会も増えました。
訪問歯科診療を検討されている患者さんやご家族にメッセージをお願いします。

理想は定期的に訪問して、口腔内を清潔に保つことですが、義歯を調整してほしいなどといった単発の依頼でもお伺いしますので、まずはお気軽にご相談ください。ただ、訪問歯科診療での摂食嚥下の訓練を、私が頻繁に通うことはできませんので、患者さんご本人とご家族の協力が必要になります。高齢で摂食嚥下障害がある胃ろうの方の場合でも、検査と訓練を何度も行うことで改善が見込めるケースもあります。高齢だから仕方がないではなく、なるべく楽しく充実した毎日を過ごすサポートができればと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療(1本)/30万円~、歯列矯正/30万円~