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神谷 寿美子 所長の独自取材記事

やまと診療所

(中野区/高円寺駅)

最終更新日:2024/07/03

神谷寿美子所長 やまと診療所 main

開院から60年以上がたち、地元に長く根づいている「やまと診療所」。患者や地域のニーズに応じて外来診療だけでなく、訪問診療にも対応しているのが特徴だ。訪問診療では患者の思いと生活を重要視し、地域の訪問看護ステーションや居宅介護事業所とも連携して、QOL(生活の質)の向上に努めている。2011年1月から、入職とともに所長に抜擢されたのが神谷寿美子先生。専門化・細分化する診療科を横断して、総合的に患者を診る「家庭医療」を提供している。具体的には、風邪症状をはじめ、生活習慣病やおなかのトラブル、呼吸器疾患、皮膚トラブル、整形外科領域など診療内容は幅広い。赤ちゃんの診療から高齢者の看取りまで責任を持ち、人全体を診ることをめざす神谷所長に、プライマリケアの問題点や診療所の取り組みなどについて話を聞いた。

(取材日2024年1月15日)

診療科にとらわれない、何でも相談できる家庭医療

「家庭医療」について教えてください。

神谷寿美子所長 やまと診療所1

患者さんの一生に寄り添う診療をモットーに、赤ちゃんから高齢者まで幅広い年代に対し、診療科の垣根を越えた医療の提供をめざしています。家庭医療とは、身近にあって何でも相談を受ける「プライマリケア」のことです。私は日本内科学会総合内科専門医と日本呼吸器学会呼吸器専門医の資格を持っていて、生活習慣病や皮膚トラブルなども幅広く診ています。診療所としては60年以上の歴史があり、地元との結びつきがとても強いと感じています。長く地域に根差していると、患者さんからちょっとした相談を受けることも多いんです。家族の病気や介護、看取りなど、幅広い内容のご相談を受け止め、地域の医療・介護従事者や自治体と協働しながら解決へと導くのが、家庭医療だと思っています。

家庭医療の課題について、どのようにお考えですか?

現状の課題は、家庭医療を行う医師が少ないことです。そのため、どうしても専門の医師に患者さんが集中してしまいます。実は、専門的な医療が必要な症例はそれほど多くはなく、本当に必要とする患者さんに十分な医療を提供できない現実があるのです。私も呼吸器専門医として大学病院で勤務していましたが、例えば喘息でも、大学病院での治療が必要となる重篤なケースはほとんどありませんでした。そのような、比較的軽い症例を扱うのが家庭医療を行う医師の役割です。家庭医療を提供する医師が増えれば、専門診療を担う医師の負担が減って医療が充実するはず。患者さんも余計な診察を受けずに済み、服薬管理も容易になるなどメリットは多いはずです。当診療所では、2011年4月から家庭医療の提供を志す医師を受け入れています。ある程度現場を経験した医師が来るケースもあるんですよ。

訪問看護ステーションや居宅介護事業所と連携している点が、大きな特徴ですね。

神谷寿美子所長 やまと診療所2

同じ建物の3階に訪問看護ステーションを併設しています。そのほか、地域の訪問看護ステーションは7施設前後、居宅介護事業所は10施設以上と連携しています。ケアマネジャー、訪問介護スタッフ、看護師などと密接にやりとりができるため、医療の質が上がると感じています。訪問介護・看護スタッフは週単位の訪問で各1時間くらい、患者さんのところに滞在するので、患者さんにとってはより身近な存在です。コミュニケーションも密になり、「物忘れがひどくて……」「看取りは自宅でできるのですか?」といった、患者さんだけでなくご家族の悩みなども聞き取り、当診療所に伝えてくれます。それを受けて次の訪問診療でさりげなく聞いたりするなど、不安解消につながるように配慮しています。患者さんのことをよくわかっている介護の現場スタッフと詳しい情報を共有できるのは、大きなメリットですね。

地域のニーズに応えて発熱患者専用の外来を設置

発熱患者の外来診療も対応されていると伺いました。

神谷寿美子所長 やまと診療所3

1階と2階で診療を行っているので、熱のない患者さんは1階で、発熱している患者さんや、発熱がなくても咳が続くなど感染症の疑いがある患者さんは2階で診ています。それだけでなく、発熱している方は事前に電話で予約を受けつけていますが、一般の診療が終わる時間以降に来院してもらうようスケジュールを組んでいます。午前中なら11時以降、午後なら16時以降で、発熱している方としていない方が同じ時間帯に混在することはありません。今のところ発熱症状を訴える患者さんは、若い層を中心に学生や働いている方などが多いですね。

法人として取り組む「健康友の会」があるそうですね。どのような活動を行っているか、教えてください。

健康を維持しながら安心して住み続けられる街づくりをめざして、イベントなどを行っています。当診療所は、中野共立病院・共立診療所を中核とする社会医療法人社団健友会に属しています。健友会では、法人全体で訪問診療、介護などの地域医療に包括的に取り組んでいます。当診療所に加えて、医療・福祉の関係者、自治体、地域住民とも協力しながら、医療・介護にとどまらない働きかけを行っているのが「健康友の会」です。患者さんだけでなく地域の健康な方もたくさん参加していますよ。実際にイベントに参加しているのは60~80代の方が多い印象です。

「健康友の会」では、どのようなイベントが行われているのですか?

神谷寿美子所長 やまと診療所4

定期的に実施している健康講座では、食事や生活習慣、腰痛などさまざまなテーマを扱います。私や看護師、栄養士、介護士、薬剤師などが講師を務めます。「軽く体を動かしたい」という方には、DVDを見ながら行う転倒予防体操を行います。その他、さまざまな催しがあり、区民活動センターや当診療所の2階といった場所で開催されています。現在は高齢者へのアプローチが中心になっていますが、今後は「健康友の会」にゆかりのある医学生などを講師に迎え、子ども向けに夏休みの宿題をサポートするイベントなどもできたらと計画しています。

かかりつけ医として、地域全体の健康維持をめざす

ところで、神谷所長が医師をめざしたきっかけを教えてください。

神谷寿美子所長 やまと診療所5

手に職をつけたいという思いがベースにあり、動物が好きだったので、最初は獣医師になりたかったんです。でも家族から「せっかくなら、人も診られる医師になってみては」と言われ、医療の道を選びました。大学を卒業後、東京逓信病院、社会保険中央総合病院(現・東京山手メディカルセンター)の呼吸器科に勤務していました。その後、東京大学大学院に入学し、付属病院での勤務も始めました。呼吸器科を選んだのは、感染症やアレルギー、がんなど扱う症例の幅が広く、知見を深められると思ったからです。ところが実際に患者さんと向き合うと、呼吸器科は肺がんや間質性肺炎など死に至る病気が多いと感じました。「臨床だけでは助けられない。治療法の研究がしたい」と考えるようになり、臨床医から大学院の研究に戻りました。

その後、現職に就いた理由は?

2人目の子どもの出産を機に、ワークライフバランスを考えるようになりました。このまま研究・臨床・教育のすべてをやっていると、結局どれも中途半端になってしまうと思ったんです。医師としてどう生きるべきかと考えたときに、「所長になってくれませんか?」とご提案をいただいて。以前からこちらの診療所には非常勤でお世話になっており、前所長が辞めるとのことでした。入職の時には家庭医療の教育を行うことは決定済みで、私も家庭医療については何も知らなかったのですが、知識と経験を積むことができて本当に良かったと思っています。

今後の展望をお聞かせください。

神谷寿美子所長 やまと診療所6

赤ちゃんの診療から高齢者の看取りまで、家庭医療を行う診療所として地域社会に貢献していけたらと考えています。発熱患者専用の外来診療を始めたように、地域のニーズに沿った医療を今後も提供していく姿勢は変わりません。当診療所は高齢の患者さんが多いのですが、よく聞くのは、「誰かと話したい」ということ。デイサービスや「健康友の会」などの集団に入るのは苦手だけれど、「1人ではさみしい」という方が意外に少なくありません。このような医療の範疇を超えたお悩みにも真摯に向き合い、当診療所だけで問題を抱えるのではなく、医療・介護スタッフ、自治体、住民などとも協力してサポートできたらと思っています。それが、地域全体の健康維持と活性化につながるのではないでしょうか。

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