小野 潤 院長の独自取材記事
小野歯科医院
(台東区/入谷駅)
最終更新日:2025/12/08
入谷駅から徒歩約5分、住宅街の一角に構える「小野歯科医院」を訪ねた。長年にわたって地域に根差してきた老舗歯科医院で、歯のかかりつけ医として通い続ける近隣住民は多い。口腔外科を専門に学んだ3代目院長の小野潤先生は、その経験を生かし、一般歯科に加え歯科用CTを活用しながら矯正も手がけるなど、オールラウンドな歯科診療の提供に努めている。長年の診療経験を通じて特に実感しているのは、噛み合わせが歯の健康寿命に大きく影響するということだ。「審美面だけではなく、健康面にも目を向けて矯正を考えていただきたいですね」と穏やかながらも、熱量高く語る小野院長。そんな小野院長に、診療にあたって大切にしていることや、現在力を注ぐ矯正歯科、今後の展望などについて話を聞いた。
(取材日2025年11月28日)
口腔外科の経験を生かし矯正など多様な診療に対応
長い間、地域に寄り添ってこられた歯科医院なのですね。

当院は祖父が開業し、父・私と3代続いています。現在のこの建物は約20年前に建て替えたものですが、それまでは看板にあるクリニック名が右から読む表記で「院医科歯野小」という、開業当時のままだったんですよ。私は大学病院で勤務医をしていた頃から休日はここで手伝いをしていたので、父の仕事をそばで見ることができ、直接教わったこともたくさんあります。駆け出しの頃、長く通ってくださっている患者さんのお口の中を実際に拝見した経験は、今の診療にも大いに役立っています。
先生の得意な診療やクリニックの特徴について教えてください。
当院では歯科全般の診療を行っていますが、現在注力しているのは矯正と顎関節症の治療です。大学では口腔外科を専門に学んでおり、顎変形症のチームに所属して研究を重ねていました。その経験を生かし、7年~8年ほど前から矯正を本格的にスタート。当院で導入している歯科用CTは、矯正専門のクリニックと同様に顔の骨格まで詳細に分析できる頭部エックス線規格写真(セファログラム)も撮影できますから、子どもから大人まで幅広い世代の矯正に対応しています。
本格的に矯正を始めたきっかけは何ですか?

噛み合わせの専門家である外国籍の先生と出会ったことがきっかけです。顎変形症について研究していた当時から、噛み合わせや顎関節症に対して疑問を感じていました。誰に聞いても解決できなかった課題だったのですが、9年ほど前にその先生の講座に参加したところ、「これだ」と思える答えを得られたんです。そこから3年間ほど講座を受け、顎関節のことも踏まえた矯正を本格的に始めました。また、この出会いは、私の診療スタンスを大きく変えたと言っても過言ではありません。例えば、詰め物一つにしても「この位置で本当に良いのか?」と、噛み合わせをより意識するようになりましたね。現在も講座に通いながら、日々研鑽を積んでいます。
適切な噛み合わせが、未来の健康な歯を守る
歯周病の治療や予防にも力を入れているそうですね。

父の代では補綴治療が中心でしたが、歯を長く守るには歯周病の治療が欠かせないと気づき、予防と治療に注力しています。歯周病の治療を通して気づいたのが、噛み合わせの重要性です。歯と歯茎の間のポケットの掃除をしっかりしていても、噛み合わせが適切でないと、ポケット自体の不具合の改善が期待できない場合があります。また、歯周病や虫歯を治療した後の経過にも噛み合わせが大きく影響すると痛感。特に、左右の奥歯が適切な高さを保持していないと、見た目はきれいに整っていても、将来的に口腔全体のトラブルに発展する可能性があります。噛み合わせが良い状態かどうか、患者さんがご自身で判断するのは容易ではありません。そのため、当院では受診された初期段階から、歯周病予防の大切さと適切な噛み合わせの維持についてよく説明して、注意喚起するようにしています。
噛み合わせが悪いと、どんな影響が出るのでしょうか。
噛み合わせが悪いと、将来的に歯を失うリスクが高まります。多くの方が虫歯や歯周病をきっかけに歯科医院を訪れますが、最近では虫歯の予防が進み、虫歯そのものは減少傾向にあります。その一方で噛み合わせが悪いと、虫歯や歯周病がなくても歯を失ってしまう可能性があるのです。噛み合わせが悪いことで歯が割れ、それが引き金となって歯周病を発症し、結果的に歯を抜かざるを得ないケースもあります。私が噛み合わせを重視するようになったのは、長年患者さんを診てきた中で、噛み合わせが悪いと処置をしても再発しやすいことを実感したからです。同じ患者さんを長く診る地域密着型の診療だからこそ、噛み合わせの重要性に気づけました。一生自分の歯で食べていくためには、噛み合わせの調整や治療が欠かせないと考えています。
適切な噛み合わせはいつ頃から意識し始めればいいのでしょうか。

できるだけ早くから適切な噛み合わせができていれば、歯周病などの病気になる可能性を減らすことにつながります。そう考えると、小児から噛み合わせを見ていくことはとても大切です。高齢になって歯周病や虫歯で歯を失ったり、コントロールしてきたつもりでも最終的に抜歯せざるを得なかったりするケースを数多く診てきました。「この部分の噛み合わせがこうだったら、歯を残せたのに」という思いに至った症例が多かったですね。幸い、近頃はお子さんの歯全般に対する親御さんの関心が非常に高く、5歳ぐらいの就学前のお子さんも多くいらっしゃっています。また、噛み合わせが良いと歯の健康が保たれ、生涯自分の歯で食事を楽しめる可能性につながります。審美面だけではなく、健康面にも目を向けて歯科矯正を考えていただけると良いかと思います。
患者の不安を解消するため、心がけるのは丁寧な説明
患者さんと接する上で大切にしていることはありますか?

治療に入る前には写真や模型を使い、患者さんのお口の中の現状や治療法の選択肢についてできるだけわかりやすくご説明します。悪い所をすべて治療するのがベストだとは思いますが、「今痛みがあるところだけ治したい」など患者さんのご要望もさまざまです。そうした事情に配慮した上で、治療をしないリスクについてもご説明し、納得を得てから治療を進めることをルールとして徹底しています。また、小さなお子さんであっても本人の理解を促すため、親御さんへの説明とは別に、簡単な言葉でしっかり説明することも大切にしています。ほとんどのお子さんは親御さんに連れられて来院しますが、せっかく来てくれたからには受け身でなく、歯科治療を自分のこととして受け止めてもらいたいですし、そうした意識こそが円滑な治療の近道にもなると考えています。
患者さんのために日々アップデートを重ねていらっしゃると伺いました。
患者さんのために常に知識をアップデートし続けることは、医師として欠かせない姿勢だと考えています。現在、顎関節や噛み合わせのバランスを重視した矯正治療をテーマとするスタディグループに所属し、学びを深めています。2年間の講座を修了し、現在は定期的な勉強会で症例相談やディスカッションを行っています。日本人は下顎が後退している方が多く、顎関節症に悩む方も少なくありません。従来の矯正治療は歯並びの改善が中心でしたが、顎関節を正しい位置に導くことで、安定した噛み合わせを実現し、長期的な健康維持にもつながります。幼い頃から顎関節と噛み合わせを意識した矯正を行うことで、将来的な問題を防ぐことができます。小児の顎や顔の成長から成人の顎関節症まで幅広く学び、顎関節と噛み合わせのバランスを考慮した治療を提案することで、患者さんに最適な選択肢を選んでいただきたいと学び続けています。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

当院では、患者さんの同意をしっかり得た上で治療を進めることを大切にしています。いきなり歯を抜いたり神経を取ったりといった処置を行うことはありませんので、ご安心ください。治療の前にはじっくりお話を伺い、ご希望があれば伺っています。こちらも可能なこと、不可能なことは正直にお伝えしますので、一緒に最善の治療方針は何かを考えていきましょう。スピード重視ではなく、じっくり時間をかけて治療したい方に来ていただければと思います。また、検査でわかったことは率直にお伝えしているので、時には愉快ではないと感じる話もあるかもしれませんが、可能な限り患者さんの不安を解消していきたいと思っています。治療を強制するようなことは決してありませんので、どうぞ安心してご来院ください。
自由診療費用の目安
自由診療とは・インプラント治療/45万円~
・矯正治療/約70万円~(※診断料 別途5万円)

