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杉本 充弘 院長の独自取材記事

東都文京病院

(文京区/湯島駅)

最終更新日:2019/08/28

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文京区湯島の高台に建つ「東都文京病院」。前身である「小平記念東京日立病院」から数えると56年もの長きにわたって地域の健康を支えてきた歴史ある病院だ。患者からの信頼も厚く、東京日立病院の閉鎖が検討された際には継続を願う患者の声が医療法人社団大坪会による継承を後押ししたという。杉本充弘院長は、日本赤十字社医療センター産婦人科部長、副院長、同センター周産母子・小児センター長、顧問などを歴任後、再建の牽引役として同院に着任。地域包括ケアにおける救急医療のニーズに応えるとともに、ローリスク妊産婦の「産み育てる力」を引き出す出産施設を整え「小回りの利く総合病院」という立場を明確にすることによって再建を軌道に乗せた改革の旗手だ。地域医療最後の砦としての取り組みや展望を聞いた。
(取材日2016年3月15日)

「小回りの利く総合病院」として多様なニーズに応える

まずは病院の歴史から教えてください。

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当院の前身は、1960年に設立された「小平記念東京日立病院」です。日立製作所による社会貢献の一環として、職員とそのご家族、地域の方の健康を守るという目的で設立されたと聞いています。一時は閉鎖も考えたそうですが、地域住民から病院継続を願う声が非常に多く寄せられ、2014年4月に医療法人社団大坪会が継承するに至りました。しかし、いざ再建という流れの中で、看護スタッフが大量に離職。私が着任したのは、人手不足によって3病棟から1病棟へと縮小せざるを得ないという厳しい状況になった昨年の4月でした。まずは病棟数をもとの3病棟に戻すことを目標として改革に着手し、今に至ります。

再建の状況はいかがですか。 

一時は閉じていた産科病棟を「産後ケア病棟」として開き、分娩室をリニューアルして、「病院内家庭出産」を支援する体制を少しずつ整えていきました。当院の近くには4つの大きな三次救急病院があり、ハイリスク出産に対する診療体制は整っています。そこで、私たちはローリスクな妊産婦さんの「もっと気軽に受診したい」「自由に出産したい」というニーズを満たす病院としてお産を開始したわけです。現在は当院での出産を受け入れる一方、セミオープンとして東京大学医学部附属病院(東大病院)、順天堂大学医学部附属順天堂医院、日本赤十字社医療センター(日赤医療センター)と契約もしています。また、全体としては、昨夏より2階を産婦人科・外科系の女性病棟とし、3階を内科系・外科系の混合病棟の2病棟体制としました。2020年には新病棟の完工も予定しており、「小回りの利く総合病院」として着実に再建を進めています。

各診療科目について、特徴をお聞かせください。

内科は専門性の高い医師による総合的な診察、外科はがん化学療法も行う消化器外科と乳腺外科に強みを持つのが特徴です。また複数の科で東大病院と東京医科歯科大病院から医師が派遣されており緊密な連携体制を取っています。眼科では緑内障、加齢黄斑変性の増加を受けて、東大病院の医師による専門外来が開設されました。小児科も同様に東大病院と連携しつつ「母子を一緒に診る」という視点から産婦人科のパートナーとして診療を行っています。高齢化とともに需要が拡大している整形外科は、医科歯科大と東大の整形外科医師が非常勤で外来を担当。小手術及び急性期を過ぎた患者さんの入院受け入れを行っています。耳鼻科、皮膚科、歯科、泌尿器科の外来もあり、身近にあるかかりつけ医として気軽に受診していただけるだけでなく、合併症に対して迅速に対応できる点もメリットでしょう。

産む人の主体性を引き出すお産と、産後ケアに注力

先生が着任されてから、産婦人科の設備面も変えられたそうですね。

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「病院内家庭出産」というコンセプトに基づいて、関連設備を整えました。陣痛分娩室は和室と洋室の2タイプあり、お好みで選んでいただけます。授乳室もご家庭のリビングのような雰囲気で、リラックスできる雰囲気を重視しました。ご家族はもちろん、ご希望があれば友人・知人も含めた立ち合い出産が可能ですし、赤ちゃんの心音がはっきり確認できる態勢であれば分娩のスタイルも自由です。出産の主体はあくまでも「産む人」であり、医療者は裏方としてサポートする立場にすぎません。したがって、お母さんの「自分で産む」という意識を引き出し、主体性をもって出産に臨める環境を整えることが、私たちに与えられた役割であると考えています。

特に、産後ケアに力をいれておられると伺いました。

お産が大学病院に集中して入院期間が短くなり、十分な休息が得られないまま家事・育児をこなすうちに肉体的・精神的に追い込まれてしまう人が増えています。実際に、当院で産後ケアを受けられる方の半数近くは、高血圧症候群や貧血、子宮内感染など様々な医学的問題を抱えていることがわかってきました。特に多いのは、メンタル面に問題がある方ですね。赤ちゃんと向き合うには、体の疲れだけでなく心の疲れを癒やすことが不可欠です。現代社会においては、核家族化で孤立無援の母親を施設が受け皿となって支えていく仕組みづくりが問われていると言えるでしょう。当院がそのモデルとなって、産後ケアの必要性を啓発していきたいですね。

身体的にはもちろん、精神的なケアが重要なのですね。

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2008年に、脳出血を起こした妊産婦が都内の複数の病院で受け入れを拒否され、死亡するという事件がありました。この事件を受けて東京都は、日赤医療センターをはじめとする3病院を妊婦の救急受け入れ先に指定。当時日赤医療センターにいた私も、救急医療の現場でさまざまな症例と向き合ってきました。その中で、命は助かったものの子育てに向かう意欲が失われたままの女性が数多くいることに気づき、命だけではなく心も救ってこそ真の救命であると気づいたのです。自分で出産を乗り切ったという自信を持つこと。それが育児をしていく力につながると考えて、体だけでなく心も健康であるようにサポートしていきたいと思っています。

急速に進む高齢化への対応が今後の鍵

着任されるまでのご経歴をおきかせください。

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大学を卒業後、すぐに東大産科婦人科学教室に入局し、約10年にわたって大学の医局と関連病院との往復を繰り返しながら学びました。以降、日立総合病院で12年間臨床の最前線に立ち、日赤医療センターにおける周産期の責任者を経て、当院に着任した次第です。日赤医療センターでは、以前から定評のあった助産師の力をより強化して母乳育児の啓発に取り組んだ結果、WHOとユニセフから、都内で先駆けて「赤ちゃんにやさしい病院(Baby Friendly Hospital)」に認定されました。今、当院の産科を考える上で、日赤医療センターで培った「自然出産、母乳育児」というコンセプトが生きていることを実感しています。

今後、地域において求められる役割は何だとお考えですか。

急性期病院の機能に加え、回復期と一部慢性期の患者さんを受け入れられる病棟機能を備えて、進行する高齢化に対応することが急務だと考えています。そのため、院内を一部改装してリハビリテーション機能を拡充します。今後は理学療法士などの増員も図ります。さらに腎不全医療の強化・透析治療の開始を視野に入れて閉鎖中の病棟を再開し、3病棟体制にするところまでが再建の第一段階ですね。2020年頃には、現存病棟に隣接する駐車場に新棟が完工する計画です。新しい建物は病院機能と介護老人保健施設を兼ね備えた施設とし、地域の皆さまの健康と長寿に貢献していきたいと思います。

最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

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今後は地域の医療連携ネットワークの一員としての役割を果たし、救急を含めた幅広いニーズに対応できる体制を整えながら、再建の歩みを着実に進めていきたいと思っています。チームワークがよく、合併症が見つかれば別の診療科でその日のうちに治療できるのも当院ならではの強みです。さらに、総合健診センターは精度の高い診断システムで健康長寿のニーズに対応し、地域の皆様の健康を守っています。診療待ち時間の短縮に努め、身近で気軽に相談できる「小回りの利く総合病院」として、地域のお役に立ちたいと思います。

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