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黒野 晴子 院長の独自取材記事

みなと芝クリニック

(港区/芝公園駅)

最終更新日:2023/05/15

黒野晴子院長 みなと芝クリニック main

芝公園駅からほど近い「みなと芝クリニック」は、黒野晴子先生が院長を務めるクリニックだ。2022年、前院長である川本徹名誉院長からの引継ぎを機に、総合診療内科に加え曜日ごとに専門の医師が対応する消化器内科、皮膚科、外科、整形外科、大腸・肛門外科の新体制にリニューアル。総合力と専門力の二本柱で、身近な街のクリニックながら総合病院の専門性を有するハイブリッドなかかりつけ医をめざす。自身を「話好き」と評する黒野院長は患者との対話を何よりも重視。会話をヒントに症状の「根本」にある悩みに着目し、体、心、家族など多方面へのアプローチを図る。「診療科目に関わらず、患者さんの悩みを解決するのが私の務めです」とほほ笑む黒野院長に、診療方針や志す医療のあり方などを聞いた。

(取材日2023年1月27日)

総合力と専門力の二本柱で幅広い医療ニーズに対応

まずはクリニックの歩みを教えてください。

黒野晴子院長 みなと芝クリニック1

当クリニックは現名誉院長である川本徹先生が2010年に立ち上げました。都心には専門性の高い病院は数多くありますが、その入り口となる何でも話せる地域型医療が必要だと考え開業に至ったと聞いております。その後も総合診療だけでなく地域の医療ニーズに対応し、対応できる科目を増やしながら患者さんの悩みに広く寄り添ってきたそうです。私は川本先生に出会い、疾患ではなく患者さんそのものを診る「森を見て木を見る」という診療理念に深く共感し、診療を手伝うようになったんです。2022年9月に院長を引き継ぐことになり、これに伴い総合診療に加え曜日ごとに専門科目の異なる医師を配置することで、さらに特色ある医療が提供できるようになりました。

「森を見て木を見る」診療とはどのようなものなのでしょうか。

まず先入観を持たないようにすること、そして全体を眺めてから、個々の症状を診ていく、ということです。患者さんのその個々の“症状”だけに捉われると、その本質的な問題を見失ってしまったり、またその“人”ではなく“病気”や“症状”の解決だけにフォーカスしてしまったりすることがよく起こります。そうすると、“病気”が良くなったとしても患者さんの悩みはまだ解決していないという事態を招いたり、患者さんは困っているのに、医療サイドは“病気ではないから大丈夫、それは問題じゃないよ”と言ってしまうようなちぐはぐな状態を生んでしまうこともあります。専門的になればなるほど“木”や“枝”を診ていく技が長けてくるわけですが、あくまでもわれわれ医療人が関わっているのは“人”なのだということ、その“人” を診させていただいていることを忘れずにいたいと常に思っております。

診療科目ごとにさまざまな医師が在籍されていますね。総合診療と専門医療を併せ持つ利点は何でしょうか。

黒野晴子院長 みなと芝クリニック2

現在は総合診療内科のほかに、消化器内科、皮膚科、整形外科、大腸・肛門外科、乳腺・更年期の診療を行っています。患者さんにとって街のクリニックの利点は気軽に受診できることですよね。一方、専門性の高い大きな総合病院の受診はハードルが高くなりがちです。そこで、当クリニックがめざしているのは2つのハイブリッドである「受診しやすく」「専門性の高い」クリニック。以前から必要に応じて患者さんを専門的な治療のできる病院に紹介することはしていましたが、初めから専門の医師がいることで患者さんの安心感を生み、早期受診につながればいいなと期待しています。医師同士は連携を取り、密な情報共有も行っていますから、どの曜日に来ていただいても安心してお話しいただけます。

プライマリケアで診療科目にとらわれない総合力を発揮

患者さんの年齢層と、主訴を教えてください。

黒野晴子院長 みなと芝クリニック3

都会のクリニックなので若い方が多いと思われがちですが、高齢の患者さんも多いんですよ。20代から80代まで幅広い年齢層の方にご来院いただいています。相談内容については、さまざまな悩みを寄せられるため本当に多岐にわたるのですが、内科だけではなく皮膚科や整形外科にまつわるご相談も多いです。

先生はプライマリケア専門の医師でもあるそうですが、プライマリケアとはどのようなものなのでしょうか。

例えば、発疹があって近所のクリニックへ行ったら「皮膚科はやっていません」と断られた……そんな経験を持つ患者さんは意外と多いようです。診療科目のくくりが患者さんの受診のハードルを上げ、治療までのタイムロスを生むこともあるでしょう。一方、プライマリケアとは、特定の臓器や疾患だけでなく何でも診て、病気に限らず広く相談に乗る総合的な医療を指します。「長年服用している薬をやめたい」「眠りが浅い」「診療科目がわからない」など何でも良いので、お気軽にご相談いただきたいです。また、プライマリケアでは患者さんとの対話を重視しているのも特徴です。会話の中で聞いた患者さんを取り巻く環境、家庭のストレスなど、思いもよらぬことが疾患の原因だとわかることもあるんです。心と体のどんな悩みにも寄り添い、患者さんにとってのベストをともに模索するパートナーだと思ってもらえれば良いですね。

診療を行う上で大切にしている考えは何ですか。

黒野晴子院長 みなと芝クリニック4

少し変かもしれませんが、目の前の患者さんを幸せにしたい、という思いがベースにあります。その方にとっての幸せは何なのか、どんなことに幸せに感じる方なのか、大切にしているものは何なのか、またその家族はどんな方なのか、そんなことを話の中で感じながら、その方にとっての最善を模索しています。私は医者なので、医学の面でのサポートができるかもしれないですが、もちろん私だけでは到底その方を幸せにすることはできません。そのような場合は、他の職種のいろんな方の助けをお借りすることもあります。外来で少し会っただけかもしれませんが、病気や症状だけを診るのではなく、その方との出会いの中で、少しでもその方の幸せに近づく診療ができたらなと思っております。

目の前の患者だけでなく、周囲の人も健康に導く医療を

医師を志した経緯と、その中で総合診療に興味を持ったきっかけを教えてください。

黒野晴子院長 みなと芝クリニック5

医師を志したのは父の影響が強いですね。父は心療内科の医師で体と心のバランスを診ることに長けた人でした。私が病気をではなくその方を診るというのが当たり前と感じるようになったのは、小さい頃から父の診療を見ていたからだと思います。当初は心療内科の道も考えましたが、心の不調が体の不調を引き起こすという考えに加え、私はその方の生活習慣や価値観、仕事、家庭の環境などさまざまな要素が重なることで引き起こされる病気や不調もあるなと感じ、患者さんの価値観、社会的背景まで含めた「人」そのものを診る診療がしたいと願い出て、広島市立北部医療センター安佐市民病院で総合内科の立ち上げに参加しました。その後もOregon Health&Science大学で家庭医療について学ぶなどして、現在も自己研鑽を積んでおります。

地域全体を診る医療の課題として感じていることをお聞かせください。

不調を抱えながらも病院にかかることができない方が意外と多いことです。高齢で外出が難しい場合もあれば、仕事が忙しく時間がない方、育児や介護など家庭内の負担が大きく自身の健康管理が後回しになっている方など、事情はさまざま。こうした潜在患者の存在は来院された患者さんの家族の悩みとして明らかになることが多く、医療にかかれない家族を持つ人の不安も計り知れません。目の前の患者さんだけではなく、その家族、ひいては地域全体への広いケアが必要ですから、診察室で待っているだけでは不十分だと感じています。当クリニックではオンライン診療を導入し、外来にかかるのが難しい方々のお声も聞けるようにと思っておりますし、また一人ひとりが自分と家族の健康を守り、家庭の主治医となるような予防医学の普及にも力を入れています。

医師をやっていて良かったと思う瞬間を教えてください。

黒野晴子院長 みなと芝クリニック6

患者さんが喜んでくれたら、いつも幸せな気持ちになります。特に印象的なのは、時々言われる「誰にも相談できなかったけど、黒野先生には聞いてほしい」という言葉。患者さんって、きっとこちらが思っている以上にたくさんの気遣いをされながら受診されているんですよね。混んでいるから、診療科目が違うから、そんなふうに気後れして聞きたいことの半分も聞けない方もいるのではないでしょうか。そんな患者さんが私とのコミュニケーションの中で「この人なら」と信じて一歩踏み出してくれたのならうれしいです。医師をやっていて良かったと思う瞬間ですね。

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