岡宮 裕 院長の独自取材記事
代官山パークサイドクリニック
(渋谷区/代官山駅)
最終更新日:2025/03/12

おしゃれなショップが立ち並ぶ八幡通り沿いのビルの2階に入る「代官山パークサイドクリニック」は、一般内科を中心に幅広い診療を行うクリニック。患者が気軽に相談できる「かかりつけ医」として、一人ひとりの症状やライフスタイルに合った診療を提供している。西洋医学と漢方を取り入れた東洋医学を有機的に組み合わせることも同クリニックの特色の一つで、「体に負担の少ない、一人ひとりに最適な医療をめざしている」と語る院長の岡宮裕(おかみや・ゆたか)先生の予防医学の考え方にも通ずる。当の岡宮院長に、力を入れている更年期障害の治療や海外渡航前のトラベルワクチン接種のこと、さらに今後めざす診療スタイルや診療の際に心がけていることなどについて、じっくり話を聞いた。
(取材日2025年2月14日)
一人ひとりの症状やライフスタイルに合った柔軟な診療
こちらのクリニックでは幅広い診療内容を掲げていらっしゃいますね。

気になることがあれば、まずはお気軽に相談してくださいというのが基本的なスタンスです。風邪やアレルギーはもちろん、腰痛、肩凝り、更年期障害、花粉症、ニキビなど、さまざまな症状を診ています。その根底には患者さんのニーズに応えたいという思いがありますね。専門的な治療が必要な場合には、専門の医師への紹介状を書きます。内科の医師として、患者さんが安心して相談できるかかりつけ医でありたいと考えています。また、予防医学の観点から東洋医学も有用なものという考えから、漢方薬の処方も行っています。西洋医学と東洋医学を有機的に組み合わせることで、体に負担の少ない、一人ひとりに最適な医療を提供することをめざしています。
新型感染症の流行を機に、通院をやめてしまった患者さんを懸念していると伺いました。
新型コロナウイルスの感染拡大時には、外出の自粛や感染を心配し、通院しなくなってしまった患者さんは少なくありませんでした。流行が落ち着いてからも「病院に行っていないけれど、薬を飲まなくても体調は悪くないし、大丈夫では」と考えていらっしゃるようです。実際、高血圧症や糖尿病といった慢性疾患は、短期的には変化はなくても、中長期的にいいますと、服薬や治療を継続しないことで健康リスクにつながる可能性があります。だからこそ、通院を再開し、継続的な通院を推奨しています。このことをきっかけに、当院も地域の方々のかかりつけ医として、オンライン診療にも積極的に取り組むようになりました。
「かかりつけ医としてオンライン診療に取り組む」とは、具体的にはどういったことでしょうか。

オンライン診療には2通りあります。1つは、風邪や体調不良などで医療機関へ行くのが難しい救急疾患の際に利用するケース。もう1つは、慢性疾患を持つ患者さんが、毎回の通院が大変という場合に通院回数を減らし、その間をつなぐための手段として活用するケースです。例えば、親の介護をすることになり、頻繁に通院できなくなってしまった場合、次回の受診までの間をオンラインで対応するということができます。処方箋もオンラインで調剤薬局ともつながっているため、国内であればどこにいても必要な薬を受け取ることが可能です。外来と併せてオンライン診療も上手に活用していきたいと思っています。
注力している更年期障害の治療とトラベルワクチン
更年期障害の診療に力を入れていると伺いました。

更年期障害といえば女性の問題として認識されがちですが、男性の更年期障害も軽視できません。しかし、世間的にはまだ理解されていないというのが現状です。男性更年期の場合は、生活習慣病との関連が強く、男性ホルモンの低下によって健康リスクが高まります。しかし、適切な診療科が明確でないため、受診を迷う方も中にはいらっしゃいます。泌尿器科でED治療と関連づけられることもありますが、更年期障害というのはそれだけではないため、内科的な視点も重要ではないかと考えています。更年期の症状は精神的な不調と区別がつきにくく、ファジーなものであるため、漢方などの東洋医学を取り入れ、柔軟な診療を行っています。
トラベルワクチンはどういった経緯で始められたのですか?
トラベルワクチンは、旅行や出張、留学などで海外に渡航する前に受けるワクチンのことで、渡航先で感染症から身を守るためにもぜひ接種をお勧めします。私自身、もともと旅行が好きで、患者さんから「どこどこの国へ行きたいんだけど、ワクチンはどうしたらいいですか」と相談を受けることがあり、それで関心を持ちました。当時は現在に比べてトラベルワクチンを提供するクリニックが少なく、需要があると感じたため、本格的に取り組むことにしました。
トラベルワクチンに関しては検索していらっしゃる方が多いのでしょうか。

そうですね。あと、企業単位で請け負ったり、留学前にいらっしゃったりする方が多いです。特に留学の場合は、ワクチン接種が受け入れの条件になっていることもあります。ワクチンは、生活習慣病と同じで、打たなくても何もなければ問題ないという考えを持たれがちですが、病気の発症リスクを抑えるという点で重要です。命を落とさずともウイルスの後遺症に苦しんでいる方をたくさん知っています。ワクチン接種は、大事に至る前に予防するという予防医学の重要性と、体に負担の少ない診療という考え方に通じるものです。
生活全般を整えることこそ予防の起点
患者さんと接するときに心がけていることはありますか?

まずは患者さんの話を真摯に聞くということです。どこまでできているか、いささか自信はないですけど、だからこそ心がけています。あとは、治療へのモチベーションを生むことも大切にしています。理由もなく「この薬を飲んでください」と言われても、患者さん自身が納得しなければ長続きしません。例えば、血圧やコレステロールが高いと何が問題なのかをしっかり説明し、その上で薬を飲むことの利点を伝えるようにしています。患者さん自身が治療の意味を理解した上で取り組めることを大切にしています。
先生ご自身の健康法があれば教えてください。
ちょっとくらい大丈夫と思わずに、苦しくなったり、つらくなったりする前から医療機関に通うということですね。私自身は月に3日ほど通院にあてています。日常的な健康法としてはとにかく歩きます。犬がいるので、散歩は欠かせません。休みの日には、気候が良ければ4〜5キロ歩くこともあります。食事面では、勤務中はデスクで慌ただしく食事を取ることが多いので、家ではなるべく粗食を心がけ、捨てる部分が少ない食べ方をしています。例えば魚は切り身ではなく丸ごと使って、捨てるようなところは鍋に入れるなどしています。野菜は生ではなく、温野菜にして体を冷やさないようにしています。これは漢方の養生にも通じるので、患者さんにも口を酸っぱくしてお伝えしていることです。
最後に、今後の展望を教えてください。

病気の治療はもちろん大切ですが、それ以前の段階で対策を講じることがより重要だと思っています。昔は発症した病気を治すことが医療の中心でした。しかし、本当に大事なのは、もっと前の段階での病気にならないための健康づくりです。例えば、糖尿病にならないように、消化管や胃腸の状態を整えたり、良好なメンタルを保ったりすることが、生活習慣病の予防につながります。ひいては生活全般を整えることこそが大切です。それには西洋医学だけでは難しい部分もありますので、東洋医学の考え方も取り入れながら、取り組んでいきたいと思っています。