渡辺 亨 院長の独自取材記事
わたなべ矯正歯科
(横浜市金沢区/京急富岡駅)
最終更新日:2022/03/15
2001年に「わたなべ矯正歯科」を開業した渡辺亨院長。高校時代に尊敬する歯科医師と出会って歯科医療を志し、生物学への興味・関心から矯正歯科を選択したという。「矯正治療は技術が注目されがちですが、診断が7割だと私は考えています。患者さんの現状から原因を特定し、将来を正確に予測していくことが重要です。矯正は見た目の美しさに加えて、機能の改善が重要で、その人が健康で楽しく生きるために必要不可欠な治療なのです」と語る。住宅地の中という立地もあり、開院当初は近隣に住む子どもの矯正治療が中心だったが、紹介の輪が広まり、最近では成人の矯正も増えてきたとのこと。「歯だけでなく、筋肉や骨格も含めて適切な状態に戻していくのが矯正歯科医師の役割」と話す渡辺院長に同院の矯正治療について聞いた。
(取材日2021年12月16日)
小児矯正・成人矯正・顎変形症の治療まで、幅広く対応
まず、こちらのクリニックの特徴を教えてください。
当院は矯正専門の歯科医院で、患者さんは中高生を中心に、2〜3歳のお子さんから70代の方まで、幅広い世代の方が来られます。アナウンサーや声楽家の方など「より美しく聞き取りやすい声が出せるように」と矯正を希望されることもあります。近隣の方が中心ですが、駅前なので遠方からも通院しやすいです。また一般的な歯列矯正に加え、「口唇口蓋裂」などの先天異常・顎変形症の方の矯正治療も行っています。ご家族と一緒にお入りいただけるカウンセリングコーナーもあり、初診時や矯正を始める時だけでなく、治療の途中にもしっかりと時間を設けて、患者さんやご家族から丁寧にお話をお聞きしています。また経験豊富なスタッフとともに、徹底した虫歯治療にも取り組んでいます。「わかりやすく、心やすらぐ治療」が当院のモットーなのです。
開業までの経緯について聞かせてください。
高校時代に尊敬する歯科医師と出会って歯科大学への進学をめざしました。矯正歯科を選んだのは、もともと興味があった生物学を医学に応用できるような研究がしたかったからです。歯科医療では、詰め物やかぶせ物を作る技工的な分野がよく知られていますが、矯正治療は生物学に非常に近い、いわば内科的な分野だと思うのです。お子さんから成人になる人間の成長をマクロな視点で追う一方、歯の一部が壊れて転化・吸収・代謝され、また歯の成長につながるといったミクロな生物学的現象を応用して、できるだけ無理なく歯を移動させるのが矯正の考え方なのです。そこに惹かれて大学院で研究を続け、母校の講師などを経て2001年に当院を開業しました。
矯正治療は、診断が大事なのですね。
そうです。矯正という言葉のイメージから歯を移動させる技術重視と思われがちですが、技術は治療全体の3割程度で、これはトレーニングである程度、身につくものでしょう。本当に難しいのは診断なのです。「矯正しなければこうなる、矯正でここまで変えていくことが可能」といった、患者さんの5年後・10年後の状態をさまざまな可能性も考慮しながら予測します。精密に予測していくには歯並びが乱れた原因として何が考えられ、それらがどのように影響し合い、成長や加齢によってどう変わっていくのか、という分析が不可欠です。診断が不十分だと、いったん希望どおりの歯並びになっても、いずれ無理が出て後戻りしたり、あるいは予想以上に治療が長引いて、結果的にうまくいかないケースもあるのです。
不正咬合の原因にアプローチし、根本的な治療を行う
どうして歯並びに問題が起こるのでしょうか。
不正咬合は、遺伝や歯の欠損などの先天的要因を除くと、ほとんどの場合「歯の大きさと顎の大きさのずれ」が原因です。人類の歴史の中で歯のサイズは変わらぬまま、顎は小さくなり、親知らず以外の28本さえ正常に並ぶスペースが足りない方が増えています。そのような顎で親知らずが成長を始めると、奥歯を前に押し出し、ドミノ倒し的に影響が出ることになります。「前歯の乱れを治したい」とご相談に来られても、原因は骨に埋まったり横向きに生えている親知らずというケースは案外多いのです。また扁桃肥大による舌位置の沈下が顎の発育に影響しているケースでは、耳鼻咽喉科での手術後に矯正治療を始めることもあります。
矯正治療は、何歳ぐらいで受けると良いのですか。
何歳からでも矯正はできますが、小児矯正の場合は、発達段階によって治療方法が異なります。小学校高学年なら成人と同じワイヤーを使った矯正から始めますが、小学校低学年まででしたら歯の生え替わり時期の活発な代謝を利用した矯正も可能です。これは、将来起こる歯並びの乱れ・顎の発育不全などを防ぐ目的もあります。また上顎と下顎は発達時期がずれており、下顎より先に上顎は成長が止まります。お子さんが出っ歯の場合、歯が前に出ているのではなく、下顎が発達不足で後退した位置にあることも多いので、歯ではなく顎の位置や大きさの調整がポイントになることもあります。成人の場合、歯周病が進行して矯正ができないこともありますが、噛み合わせが歯周病の原因になっていることも多いです。そのため50代・60代になって、歯を守るために矯正治療を受けられる方もいらっしゃいます。
診療方針について聞かせてください。
不正咬合のさまざまな原因にアプローチし、歯・筋肉・骨格のバランスを正しい位置に戻していくことを重視しています。初診時に「何が気になって、どのように治したい」というご希望を詳しくお聞きし、検査後に歯並びが乱れた原因や過程を順序立ててわかりやすくご説明させていただきます。矯正治療は長期戦ですから、患者さんに納得していただいてから治療を始めていきます。
見た目の美しさに加え、機能を重視した矯正が信条
ところで、プライベートな時間の過ごし方を教えてください。
以前は茶道を習っていたのですが、ここ数年はヨガに取り組み、インストラクターの資格も取得しました。運動不足解消のために始めたヨガですが、正しい姿勢や呼吸が心身の健康へつながっていく様子が矯正の考え方と共通していて、とても興味深いです。
専門家の立場から、気になることがありますか。
出っ歯や受け口、凸凹以外にも、さまざまな不正咬合があります。噛み合わせが深すぎる「過蓋咬合」の場合は、歯並びは悪く見えないので放置されがちですが、年齢を重ねるにつれて咬合崩壊が起こり、奥歯から始まって前歯にまで負担がかかってくることもあります。日常的に口呼吸をしていると、上下の歯がきちんと閉じられない「開咬」になることもあります。こうした不正咬合を放置すると歯周病などの原因となり、いずれ歯を失ってしまうことも少なくないのです。歯並びや噛み合わせの問題は、見た目の美しさだけではなく、口腔全体から全身の健康に影響します。幼稚園の年長から小学校低学年ぐらいになると「過蓋咬合」などの問題もわかるので、ぜひ矯正歯科でチェックしていただきたいです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
矯正の「矯」の字は、「誤ったものを正す」という意味です。歯だけでなく筋肉や骨格を含めてトータルに治療することが、私たち矯正歯科医師の仕事だと考えています。開業から20年で得た知識と経験を生かしてこれからも皆さまの健康に貢献したいと考えています。また、矯正治療のハードルが低くなって治療を受ける方も増えましたが、噛み合わせが深い「過蓋咬合」や、上下の歯が閉じられない「開咬」などは見逃されがちです。最近、一部の歯が生えてこない「先天性欠如」も増えているように感じます。上下の歯の数が異なると噛み合わせに影響しますから、早めにご相談いただきたいです。そして、歯並びや噛み合わせは見た目の美しさだけでなく、さまざまな機能や、口腔全体から全身の健康へとつながっていることを多くの方に知っていただきたいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは弾性ワイヤーを用いた矯正/71万5000円~、マウスピース型装置を用いた矯正/82万5000円~、小児矯正/22万円~、
※筋機能療法は、矯正料金に含まれる