豊田 河清 院長の独自取材記事
黄水歯科医院
(横浜市瀬谷区/三ツ境駅)
最終更新日:2026/03/10
三ツ境駅から徒歩6分、白を基調とした外観が目を引く「黄水歯科医院」。豊田河清(とよだ・かせい)院長は神奈川歯科大学卒業後、40年以上臨床の現場に立ち続けてきたベテラン歯科医師だ。長年診てきた患者との関係を続けたいという思いから、高齢の患者が通いやすいよう1階で開業できる場所を選び、新たな想いで一念発起し2026年に同院を開業。以前営んでいた歯科医院を息子に託した。同院では、同じく歯科医師である娘とともに診療にあたる。長年にわたり予防歯科に取り組み、「治療できるのは当たり前。その後どう関わっていくかを大切にしたい」と穏やかに語る豊田院長に、同院の特徴や地域の患者への想いについて聞いた。
(取材日2026年2月16日)
「患者と一緒に生きていきたい」その想いで再び開業
開業されたばかりとのことですが、経緯を教えてください。

息子に以前の歯科医院を託してから、一度は歯科医師としての歩みを終えることも頭をよぎりました。ですが、これまで築いてきた患者さんとの関係を思うと、やはり続けていきたいという気持ちが湧いてきたんです。長年診てきた患者さんも高齢になり、以前の歯科医院では階段を上るのも大変になっていた頃でした。80代後半から90代の方にとって、階段を上るのはたいへんなご苦労ですからね。そんなこともあって1階で開業できる場所を探していた時、ご縁がありこの物件に出会いました。閑静な住宅街の中で、近くには商店街もあるので、地元の方が通いやすい環境だと思います。
40年以上の臨床経験をお持ちの先生が、診療で大切にしてきたことは何ですか。
1977年に神奈川歯科大学を卒業してから、もう40年以上この仕事を続けてきました。その中で気づいたのは、とにかく予防の大切さです。治療によって口腔内の改善を図ってから予防の段階に入り、それを継続する。すると、20年たっても歯が残っているということも、経験上、十分めざせると思っています。治療が終わって「よく頑張りました、終わりですよ」と言ってしまうと、そこで関係が終わってしまう。でも予防に入っていけば、歯を守るために関わり続けることができます。虫歯を治療した際には、「虫歯になる原因があるなら、そうならないよう気をつけなければ」と今後のケアの重要性に気づいていただきたいですね。
診療において、特にこだわっていることを教えてください。

何か特別なことをしているのではなく、私の考えは「治療できるのは当たり前」ということです。虫歯の痛みを取ることを図り、機能の回復をめざす。入れ歯を入れて、噛めるような状態をめざす。それらは歯科医師として当然のこと。大切なのは、その後どのように関わっていくかです。当院の特徴は何かと問われれば、それは患者さんとの関わり方だと思います。長く、長く患者さんに関わり続けて歯の健康を支えることを、もう40年続けています。もちろん最新の道具や技術は素晴らしいものかもしれませんが、それだけが正解ではないという実感があります。長く続けてきた経験にも、それだけの価値があるのではないでしょうか。維持管理という言葉がありますが、まさにそれが私の診療の軸。歯を守るために関わり続けていくこと、それが患者さんにとって本当に必要なことだと信じています。
日頃のことを話しに来たくなる歯科医院でありたい
患者さんとの関係づくりで工夫されていることは何ですか。

長く通いたいと思っていただけるような「付加価値」といいますか、魅力を感じていただくことを意識してきました。五円玉も銭洗弁財天で洗い清めて、磨けばより特別なものになりますよね。考え方はそれと同じで、治療以上にお渡しできるものがあるとすれば、当院の場合はやはり、会話を通じて患者さんに寄り添うことだと思っています。以前の歯科医院では、得意な切り絵を院内に展示していました。患者さんが「すごい」と褒めてくださり、どんどん本格的なものになっていきましたね。あくまで趣味から始まったものですが、それもまた一つの会話の種であり、信頼関係を構築する土台になっていたように思います。「欲しい」とおっしゃる方もいらっしゃいましたが、そんな時は「私の作品はお口の中に入っていますよ」とお伝えしていました(笑)。
どのように患者さんとお話しされているのですか?
意見を言うだけでなく、患者さんの声を聞くことを重視しています。行く度に「ここが汚れていますよ」「もっと磨きましょうね」と言われ続けたら、誰だって通いたくなくなるでしょう。もちろん必要なことは伝えますが、それだけではない。「今日どうだった?」「お子さん元気?」といった治療以外の話のほうが長いくらいです。共感を持つということが、お互いの信頼につながると感じています。患者さんとの共通点を探すことで、こちらの伝えたいことも自然と届くようになる。以前の歯科医院では、当時70歳のおばあちゃんがブログを書いていて、写真の撮り方を教えてほしいと相談されたことさえありました。歯科医院らしくない会話かもしれませんが、そういう関わりこそが大切で、私の楽しみの一つでもあります。
お付き合いが長いご高齢の患者さんも多いのでしょうね。

ええ。パートナーが亡くなられて独居の高齢の方も増えています。普段は話し相手がおられない方々が当院に話しに来られるんですね。以前、90代のおばあちゃんに「元気?」と聞いたら、「年を取ったら嫌なものよ。毎日花に水をあげて、メダカの餌をやって、そんな毎日なのよ」とつまらなそうにおっしゃいました。だから「死ぬまでは生きていなきゃならないからね、頑張らなきゃ」と返したんです。1ヵ月後「相変わらずだけれど、でも先生、死ぬまでは生きてなきゃならないんでしょ」とおっしゃられて。その言葉の重みが胸に響きました。昔は「死ぬまで元気」が目標でしたが、そうした患者さんとの関わりから、「元気」でいることというより、今は「みんなで一緒に生きていこう」というのが一番の目標に変わりました。治療はその一手段であって、目的ではないわけです。
これから先も信頼と共感のぬくもりを地域に
娘さんもこちらで診療にあたられていますね。

はい。娘は子育て真っ最中で、同世代のお母さん方の気持ちがよくわかるようです。最近では「ママ友がいない」「相談できるところがない」という方も少なくありません。歯のことに限らず、ちょっとしたことでも話せる「第三の場所」でありたいと娘はよく話しています。やはりまだ若いからこそ時代の変化や傾向にも敏感で、最近では口の発達が弱い子どもが多いことを危惧していました。しゃぼん玉や風船など、口を使うような遊びや機会が減ったことがきっかけの一つだそうです。現状問題がなくても、将来的に誤嚥につながってしまったり、歯並びに影響してしまう可能性もあります。保護者の方々が日常生活でそういった知識を得る場は少ないと思いますので、私ならではの視点と娘ならではの視点を生かして生活指導なども行えるようにしています。
どのようなときに歯科医師としてのやりがいを感じますか?
患者さんが喜んでくれるから、40年続けてこられたのだと思います。とにかく患者さんの口腔内の良い状態をめざし、食べられなかった物を食べられるようにするために力を尽くしてきました。もし、その結果として患者さんに喜んでいただけるのなら、それは何にも代えがたいものです。先日、長い間お付き合いのある患者さんに感謝の言葉をいただきましたが、私は「私だけじゃなくて、一緒に頑張ってきたからだよ。長い間来てくれたからこそ今があるんだよ」とお答えしました。口腔内のケアは私一人でできるものではありません。通い続けてくださり、一緒に口腔内を守ってきた結果なのです。そういう関係を築けることが、この仕事の一番のやりがいだと感じています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

この歳で開業する歯科医師はあまりいないでしょう。でも私にとっては、患者さんとの関係を続けていくことが何より大切でした。治療だけをするのであれば、どこの歯科医院でも同じかもしれません。でも当院は、歯のこと以外でも気軽に話せる場所でありたいと思っています。「お子さんを何歳から連れて来ればいい?」といった些細な疑問でも構いません。娘も子育て中ですので、同じ立場でお話しできることも多いはず。お子さんのお口の適切な発達についてのアドバイスを送ることもできます。共感と信頼関係を大切にしながら、患者さんと長くお付き合いしていきたい。それが私の願いです。どうぞお気軽にご来院ください。

