伊藤 美紀 院長の独自取材記事
船橋駅前なかやまメンタルクリニック
(船橋市/船橋駅)
最終更新日:2026/04/03
心療内科の初診予約が半年待ちにもなるという船橋地区で、行き場のない人々の受け皿となるべく、2026年1月、船橋駅北口から徒歩1分の地に誕生した「船橋駅前なかやまメンタルクリニック」。院長を務める伊藤美紀先生は、長崎大学で児童精神医学のトレーニングを積み、精神科病院での診療部長も経験した日本精神神経学会精神科専門医。子どもから大人まで幅広い年齢層に対応し、とりわけ子どもの心の問題に取り組んできた。思いやりに満ちた穏やかな語り口が印象的な伊藤院長に、「来て良かった」「道筋が見えた」と患者に感じてもらうための診療の工夫や、今後の展望などを語ってもらった。
(取材日2026年3月10日)
脳に魅せられ精神科へ、幅広い世代の心を診る
まずは、船橋に開業された経緯をお聞かせください。

当法人は柏に本院「柏駅前なかやまメンタルクリニック」を構え、2026年1月に船橋で分院を開業しました。船橋周辺では心療内科の初診予約が半年待ちになるほど受診先が不足していて、診てもらえる場所がなかなか見つからず、船橋や習志野方面から柏の本院まで通われる方も少なくない状況でした。中山貴至理事長はもともと船橋の出身で、生まれ育った地域で精神医療に取り組みたいという長年の願いを持っていたと聞いています。こうした地域の深刻な状況を何とかしたいという思いと重なり、今回の開業に至りました。私自身は2019年から柏で診療にあたっていたのですが、中山理事長からお声がけいただき、船橋の院長をお引き受けすることになりました。
医師を志したきっかけや、精神科を選ばれた理由を教えてください。
実はもともと建築家になりたくて、ですがデッサンがどうしても上達せず断念したのですが、「人の役に立つ人間になりなさい」という親の教えを思い出し、医療の道を志し医学部に進みました。卒業後は脳神経外科を希望したものの、当時は女性の入局がなかなか認められない時代で、かないませんでした。それでも臓器の中で脳が一番複雑で神秘的だという思いは変わらず、脳を診る精神科へと進みました。長崎大学では教授の指導のもと児童精神医学のトレーニングを積み、児童相談所の嘱託医も経験しました。その後は精神科病院で診療部長を務め、身体合併症にも携わりましたが、もう一度子どもの診療に向き合いたいという思いから、2019年に柏の本院へ入職しました。
こちらではどのような診療体制を整えていますか?

小学4年生から高齢の方まで幅広い年齢層に対応しているのが当院の大きな特徴です。精神疾患だけでなく、不登校や発達の問題、養育に関するご相談もお受けしています。子どもの診療には児童精神医学の専門的なトレーニングが欠かせません。子どもは大人のミニチュアではありませんから、対応できる医師が限られているのが現状です。当院では医師3人に加えて心理士によるカウンセリング、精神保健福祉士による医療福祉相談も行っています。リラクゼーション目的のヨガにも取り組んでいて、呼吸法を中心にしたゆったりした内容と、講師を囲む茶話会のセットで心身のリフレッシュにつなげていきます。処置室も備えており、採血検査や心電図検査のほか、不登校のお子さんに多い起立性調節障害の検査にも対応可能です。
「来て良かった」と思える、道筋を示す診療を
診療において大切にしていることをお聞かせください。

限られた時間の中でも患者さんに「来て良かったな、道筋が見えたな」と感じていただけることを一番のモットーにしています。100%の解決は難しくても、今日の受診が明日につながる、その先にもつながるという見通しを丁寧にお伝えするよう心がけています。私は恩師から「待合室に座った時から診察は始まっている」と教わり、30年間それを守り続けてきました。マイクは使わず自分で待合室まで歩いていき、お名前をお呼びして診察室までご案内します。その間に、座っていた位置や歩き方、服装や表情からその日の状態を読み取るんです。診察室ではまずお天気の話などの雑談から入り、反応を見ながら少しずつ本題にふれていきます。こうした丁寧な対話の積み重ねを大切にしています。
お子さんの診療では、どのように接していますか?
お子さんが入ってきた様子を見て、緊張しているなと感じたら、まず好きな動画やスポーツの話など雑談から始めます。お話ししながら「この子はこういうタイプかな」「ここがつらいのかな」と察していき、具体的な状況はお父さんやお母さんから伺うスタイルです。初診ではプイッとしている子もいますが、心を開いてくれるようじっくりお話しします。「またあの先生の所に行きたい」と思ってくれたら、とてもうれしいですね。受診のきっかけは親御さんが異変に気づかれる場合や、学校の先生から勧められるケースなどさまざまです。不登校や発達の偏り、学習の困り事など相談内容は幅広く、ただ半数近くは明確な病名がつきません。病名の有無に関わらず、一人ひとりに丁寧に向き合うことを大切にしています。
お子さんの診療以外にも注力している分野はありますか?

中山理事長が線維筋痛症の治療に力を入れています。心療内科でこの疾患に対応している所は非常に少なく、私も柏に入職して初めて知って驚いたほどです。痛みの背景には、脳の中で痛みを感じるセンサーがうまく調整できなくなっている状態があり、その根本に不眠や自律神経の乱れが隠れていることが少なくありません。中枢神経からのアプローチに切り替えることもできますので、整形外科で長く治療を続けても改善しなかった方はご相談ください。大切なのは痛みそのものに対処するだけでなく、その大本にある原因を整えていくという考え方です。何年も複数の医療機関を渡り歩いてこられた方にとって、新たな道筋が見えることが一番の安心材料になるのではないでしょうか。
気軽に頼れる心療内科として、地域の安心を支えたい
スタッフの方々の温かな雰囲気が印象的ですが、チームづくりで心がけていることはありますか?

心療内科には緊張して来院される方が多いため、受付の時点から安心していただくことがとても大切です。そのため当院では、患者さんにお声をかけたときにふわっとした温かさが伝わる方や、やわらかな雰囲気の方をスタッフとしてお迎えするようにしています。日頃から心がけているのは、隙間時間にもこまめに声をかけ合い、事務的なやりとりだけにならないフレンドリーな関係をつくることです。週1回の院内カンファレンスでは、医師・心理士・精神保健福祉士がそれぞれの視点で患者さんの状態を共有し、受付・診察・カウンセリングのすべての場面において、安心できる雰囲気を保つことをチームワークの要としています。
今後、力を入れていきたい取り組みはありますか?
今後はデイケアをさまざまなかたちで広げていきたいと考えています。柏の本院での取り組みを参考に、不登校のお子さんが安心して過ごせる勉強会や、発達障害に向き合うトレーニング、引きこもりの方のためのマンツーマンの作業療法など、多彩なプログラムを展開していきたいです。お子さんから働き盛りの世代、ご高齢の方まで、それぞれが安心して集まれる居場所を段階的に整えていきたいですね。お薬だけに頼るのではなく、カウンセリングやデイケアをはじめ、複数の選択肢をそろえるなど一つの枠にとらわれず、困っている方に一人ひとりに合わせた支援を届けていくことが目標です。
最後に、心療内科の受診を迷われている方へメッセージをお願いします。

心療内科や精神科と聞くと構えてしまう方も多いかもしれません。ただ、胃が痛ければ消化器内科に行くのと同じで、ストレスで脳の調子が崩れたときに来ていただく場所が精神科です。私は患者さんによく「脳にちょっとバグが起きているだけですよ、おなかが痛いのと同じですからね」とお話しします。眠れない、気分が沈むといった症状は性格や精神力の問題ではなく、脳という臓器の不調です。初めて来られた方にも「全然普通の所でしょう、怖くなかったでしょう?」とお声がけしています。ホームページには医師全員の顔写真を掲載し、事前に顔を知って安心してお越しいただけるようにしています。困ったときにふらっと立ち寄れる場所でありたいですし、「船橋には『なかやま』があるから安心だよね」と感じていただけたら、これ以上のことはありません。

