小川 晋太郎 院長の独自取材記事
田迎耳鼻咽喉科
(熊本市南区/南熊本駅)
最終更新日:2025/12/15
地域住民の耳鼻咽喉科領域の健康を守りたいという思いから2025年に開業した「田迎耳鼻咽喉科」。院長の小川晋太郎先生は、熊本大学を卒業後同大学病院や市民病院、クリニックとさまざまな医療機関で重症の手術から軽症の疾患まで幅広い診療経験を積んだ耳鼻咽喉科のスペシャリスト。補聴器適合判定に精通する医師であり、めまいの診療についても豊富な知識を持つ。痛みの少ない医療機器を使用した検査で患者の負担軽減に努め、「地域に根差したクリニックにしたい」と語る小川院長に、同院の特徴である幅広い診療内容を中心に話を聞いた。
(取材日2025年10月28日)
地域の耳鼻咽喉科領域の健康を守るため開業を決意
開業のきっかけを教えてください。

熊本大学病院の耳鼻咽喉科では、頭頸部や咽頭がん、喉頭がんなど体力・精神力とも大変な手術を多く修練しました。そういった経験を通して悪性腫瘍を含む耳鼻咽喉科全般を自信を持って診療できるようになったことが、開業の大きな理由ですね。さらに自身の考えで治療をしたいという思いも開業につながったと思います。開業の場所については地域医療に貢献したいと、耳鼻咽喉科が少ないエリアを探してこの地を選びました。ここは小学校もあり高齢者も多く居住する地域なので、幅広い年齢の方の耳鼻咽喉科領域の健康を守るお役に立ちたいと思っています。また、ここは市の中心部からも近く交通の便がいいので、患者さんも通いやすいのではないかと思います。
外装・内装のこだわりと、オンラインシステムについて教えてください。
患者さんが楽な気持ちで来院できるように、明るい配色を心がけました。内装は明るく広々とした印象になっていると思います。院内は一般外来と発熱症状を専門に診る外来とで分けながらも、医師1人なので動線にこだわり、私が全体を見渡せるように工夫しました。さらに補聴器の診察のため、2m×3mの防音室を設置しています。クリニックでは電話ボックスサイズの防音室が一般的なので、この大きさの防音室を備えたクリニックは珍しいと思います。この部屋では補聴器製作のための、補聴器適合検査を行います。また、患者さんの利便性を図りオンラインでの予約、問診票記入、決済システムを導入しました。今後は軽症の患者さんを対象としたオンライン診療や薬の処方も導入していく予定です。
詳しい診療内容について伺います。

耳鼻咽喉科全般の診療と発熱症状に特化した外来です。そのほか、耳鳴りやめまいを専門に診る外来も設けています。耳鳴りの患者さんには、内服治療などで症状の改善を図り、めまいでお悩みの患者さんには平衡感覚の異常を調べるために眼振検査を行います。このほか舌下免疫療法、睡眠時無呼吸症候群の診療も行っています。舌下免疫療法とはアレルギー源を調べてから、舌の下側にスギやダニなどのエキスの入ったタブレット薬を服用して、アレルギー体質の根本治療を図るもので、治療期間は3~5年と長期にわたります。睡眠時無呼吸症候群の診療はまず専用の機器で鼻や喉の空気の通り道が狭くないかをチェックし、必要に応じて1時間あたりの無呼吸の回数も確認。重症の方には呼吸を補助する機器を使用するCPAP療法を導入します。扁桃腺が大きいため疾患を発症している場合には、ケースによっては扁桃腺を切除することもあります。
一人ひとり異なる難聴の症状に合わせた補聴器を作製
さまざまな医療機器がそろっていますね。

精度が高く患者さんの痛みが少ない機器を積極的に導入しています。主なものを挙げると耳鼻咽喉科専用CTは、県内でも導入しているクリニックは少ないと思います。これは中耳炎や副鼻腔の検査のほか、中耳炎の中でも特殊な滲出性中耳炎の検査にも適応します。さらに鼻や目の周りなどの微細な骨折の検査にも適しています。アレルギー検査機械は、指先から少量の血液を採取して多数の項目のアレルギー検査を行えるものを導入しています。従来の採血より痛みが少なく30分ほどで結果が出る点もメリットですね。細径鼻腔内視鏡は、喉の奥や鼓膜、声帯まで観察ができる機械です。従来の経口内視鏡よりも細いため検査時の苦痛が少ない点が特徴です。
補聴器にも力を入れられているとか。
難聴に対して一般的に行われている対処法が補聴器の装着です。当院では補聴器のご相談をお受けする外来を設けています。診察では私の補聴器適合判定について詳しく学んだ経験を生かし、補聴器専門会社と協力して患者さんに合った補聴器を提供するように努めています。まず外来で聞こえ具合を検査し、難聴が疑われると先ほどお話しした防音室で補聴器を試し、そのデータに合わせ微調整をして一人ひとりに合ったものを作っていきます。補聴器製作の際には音が聞こえるかどうかだけではなく、語音明瞭度検査で、言葉がどの程度聞き取れるかを調べ、補聴器の有無でそれぞれどの程度言葉を聞き取れているかを確認します。補聴器は言葉の周波数だけを上げることもできるのです。また、小児難聴といって、遺伝の関係で子どもでも難聴を発症するケースがあります。幼少期に難聴になると言葉の発達が遅れてしまうため、早期の補聴器装着が望ましいのです。
診療の際に心がけていることは?

わかりやすい説明を心がけています。患者さんがどんな疾患にかかっているのかをお伝えし、その疾患の特徴や治療方法について専門用語ではなく理解しやすい言葉を使って説明しています。場合によっては画像や動画をお見せすることもあります。また耳鼻咽喉科領域の医療も日々進化しているため、患者さんに常に新しい治療を提供できるように定期的に勉強会などに参加して勉強を続けています。さらにクリニックとしてもスキルアップができるよう、スタッフの勉強会も開いています。先日はモニターを使用しながら舌下免疫療法の勉強会を行いました。クリニックは患者さんに気持ち良く通院してもらうことも大切なので、スタッフの接遇の勉強会も行っています。
高い専門性を持ちながらも気軽に足を運べる身近な医院
耳鼻咽喉科を選んだ理由と、今日までの歩みを教えてください。

子どもの頃、アレルギー性鼻炎などでクリニックに通い耳鼻咽喉科医に診てもらっていたことがきっかけですね。耳鼻咽喉科は内科と外科に分かれておらず、アレルギー疾患から悪性腫瘍まで幅広く診られる点が魅力に感じ専門に選びました。最初にお話ししたように大学病院では咽頭がんや喉頭がんなど大きな手術を多数経験しました。その後に派遣された市民病院では大学病院よりはもう少し身近な、扁桃腺摘出手術などを経験し、さらにその後はクリニックの外来で5年間、幅広い年齢の患者さんの軽度から重度までのさまざまな診療を担当しました。クリニックでは春は花粉症、冬は発熱症状の患者さんが多かったですね。クリニックでの手術は市民病院よりもさらに身近なものが主で、レーザー手術や鼓膜切開手術などを経験しました。それぞれの場所での経験を、当院での診療に役立てています。
医師になって良かったことは何ですか? 休日の過ごし方も教えてください。
熊本大学病院時代にある舌がんの患者さんを担当したことがありました。今回クリニックを開業した際に、その患者さんがお祝いに植物を贈ってくれました。こちらが一生懸命治療にあたったことを覚えていてくれたのだと知り、うれしかったですね。プライベートでは小さい3人の子どもの父親なので、休日は子どもたちを公園に連れて行くことが多いですね。妻は子育てのほか、当院の事務的な作業を担当してくれているので、休日は私が家事を手伝っています。趣味は料理で、外資系大型ショッピングセンターで大きな肉塊を買ってローストビーフを焼くと、子どもたちも喜んで食べてくれます。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

いつでも気軽に足を運べる身近な存在でありながら、専門性の高い医療を提供できるクリニックでありたいと思っています。地域医療に貢献することを最も大切にしていきたいですね。今が接種時期のインフルエンザワクチンは、注射ではなく鼻の中にスプレーして接種するタイプのものを導入しています。こちらは18歳までが対象となりますが注射と比べて痛みが少ない上に年2回の注射と異なり、1年に1回で済むためぜひご利用ください。また風邪の際には内科を受診される方も多いと思いますが、耳鼻咽喉科は喉や声帯の奥まで診ることができるので、症状に合わせた適切な治療が可能です。ちょっとした不調など何かご不安なことがあれば、悩まずにお気軽にお越しください。スタッフ一同でお待ちしています。

