口腔リハビリテーションで支える
何歳になっても自分らしい生活
まつざき歯科クリニック
(門真市/大和田駅)
最終更新日:2025/11/20
- 保険診療
食事をする時に、むせや飲み込みにくさが気になってはいないだろうか。その場合、「この症状はどこで診てもらえばいいか」と問われると、答えられない人も多いだろう。歯科医院で飲み込む力、「嚥下機能」まで診ることは、一般的にまだあまり認識されていない。デンマークのオーフス大学で口腔リハビリテーションを学び、その知識を地元・門真に還元している「まつざき歯科クリニック」の松崎悟士院長は、「摂食嚥下の問題は年齢とともに徐々に悪化していくため、健全な状態から定期的に検査を受け、客観的数値を把握しておくことが大切です」と説く。「年齢を重ねて摂食嚥下に問題が出てきたことを理由に、地域の輪が狭くならないでほしい」と語る松崎院長に、摂食嚥下の問題と口腔リハビリテーションについて話を聞いた。
(取材日2025年11月10日)
目次
年齢とともに徐々に悪化する摂食嚥下。定期的な検査で客観的数値を把握しておくことが早期発見と改善の鍵
- Q摂食嚥下の問題にはどのような症状がありますか?
-
A
▲摂食嚥下機能の低下は、肺炎のリスクにもつながる
摂食嚥下機能が悪くなると、飲み込みに痛みや詰まり感を感じる、食事が喉に引っかかって食べにくい、むせることが増えるなどの症状が現れます。食事を飲み込む際に喉や食道の動きがスムーズでなくなるため、食物や液体が気管に入ってしまい、肺炎になるリスクも高まりますね。歯周病がある場合は、誤嚥した際に菌が一緒に取り込まれてしまい、誤嚥性肺炎の悪化につながります。最悪の場合は死に至ることも。嚥下障害は徐々に飲み込む力が弱くなっていくため、気づかないうちに食べ物の形態がやわらかいものばかりになってしまうんです。悪化すると栄養が不足しがちになって体重が減少したり、心身のフレイルを招いたりというリスクもあります。
- Q口腔リハビリテーションとは何ですか?
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A
▲しっかり噛む力をつけていけるようサポートする同院
口腔リハビリテーションとは、年齢とともに落ちていく食事や飲み込み、会話などに関する口腔の機能を回復・維持するためのリハビリテーションです。咀嚼機能検査や舌圧検査などを通して、どれくらいお口が動いているかを客観的に評価します。そして、その評価に合わせて専門の歯科医師や歯科衛生士が口腔内の筋肉や嚥下の動きに対し筋力強化や反射の調整を行い、患者さんが自分らしく食事を楽しんだり話したりできるようサポートしていきます。噛む力が不十分な場合は歯科治療で噛み合わせの調整を行い、しっかり噛めるよう整えていくことも必要ですし、飲み込む力が弱ってしまっている場合は食べ物の形状を一緒に考えることもありますね。
- Qどんな方が口腔リハビリテーションの対象になりますか?
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A
▲定期的に検査を受けることで、口腔内の変化にも気づきやすい
食事中によくむせる、飲み込みに時間がかかる、声がかすれる、食事量が減って体力が落ちてきた、誤嚥性肺炎を繰り返しているといった方はもちろん対象ですが、基本的には困っていない段階から関心を持つことが大切です。嚥下障害は徐々に悪くなっていくため、健全な時の数値を取っておくと悪化し始めた段階がわかりやすく、早期に対策を考えることができます。また、検査をすれば客観的な数値が出ますから、誤嚥性肺炎になることを心配されている方にとっては安心の裏づけにもなります。現状がわかれば安心してごはんをおいしく食べられると思うので、ある程度の年齢になったら、定期的に検査を受けてデータを取っておくことをお勧めします。
- Qこちらで行っている口腔リハビリテーションの特徴は何ですか?
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A
▲どんなことでも、気になることがあれば気軽に相談を
「ものを飲み込む力」は、特に症状がない時から検査するなどして意識を持っておくことが大切です。当院では、ご高齢の方には通常の歯科診療に加え、口腔リハビリテーションの観点からも総合的に口腔内をチェックしています。口腔リハビリテーションは、日常生活に寄り添うもの。仮に何かの数値が悪いとわかったとしたら、それを理解し、日常生活の中でほんの少し意識してうまく適応するだけで、問題なく過ごすことができると思うのです。ですから、まずは自分の健康状態を客観的な数値と一緒に理解していただくことを大切にしています。現状を把握して意識するだけでも、随分変わってきますから。
- Q嚥下障害が改善すると、日常生活にはどんな変化がありますか?
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A
▲食べる喜びや、話す楽しさを大切にしてほしい
口からしっかり食事できるようになるので、全身の健康状態に良い影響が出ると思います。また、食べることに対する自信がつくため、家族や友人との食事が楽しみになり、コミュニケーションも活発になるでしょう。食事が取りにくいと心配が勝ってせっかくの食事が心から楽しめませんし、そもそも「うまく食事ができないから」と人と会うのを躊躇して、徐々にコミュニティーから孤立していってしまうんです。年齢を重ねて摂食嚥下機能に問題が出てきたことを理由に、地域の輪が狭くならないでほしい。食事は、人と人とがつながる大切な機会です。口腔リハビリテーションを通して、食べる喜びや話す楽しさを取り戻してほしいなと思います。

