吉原 光 院長の独自取材記事
西宮夙川ひかる歯科クリニック
(西宮市/夙川駅)
最終更新日:2025/11/21
阪急神戸本線・夙川駅より徒歩1分、黒と白を基調としたラグジュアリーな「西宮夙川ひかる歯科クリニック」が2025年10月に開業した。吉原光院長は薬学部から歯学部へ転身し、病理診断まで学んだ異色の経歴の持ち主。高齢の家族が噛み合わせの悪い歯で食べ物を喉に詰まらせて亡くなったという原体験から「食べることの重要性」を痛感し、歯科医師の道へ進んだという。「なぜその歯が虫歯になったのか」という根本原因を追求し、位相差顕微鏡で細菌を可視化して説明するなど、病理学の経験を生かした独自の診療方法を確立している。「通院することに価値を感じてもらえるサードプレイスとしての歯科医院をつくりたい」と語る吉原院長に、開業への思いと診療理念について聞いた。
(取材日2025年11月1日)
食べることの重要性を知り、歯科医師の道へ
薬学部から歯学部へ転身されたと伺いました。

幼い頃から化学が好きで、化学式を見るのが趣味でした。薬の添付文書を集めるほど興味があり、その関心から薬学部に進学しました。ちょうどその頃、介護を受けていた家族の義歯が合わず、食事がつらそうな様子が見られました。そして食形態が合わなかったことで食べ物を詰まらせ、命を落としてしまったことから、食べることの重要性を深く実感しました。また同時期に東日本大震災があり、歯科法医学によって身元不明のご遺体を歯科所見から特定するという社会的使命に強く惹かれました。手に職をつけたいという思いも重なり、歯科医師になることを決意しました。
その後、病理診断まで学ばれた理由をお聞かせください。
神戸大学医学部附属病院の歯科口腔外科では、口腔がんの診療に多く携わっており、がんの診断には病理診断が欠かせないことを学びました。その経験から、がんの診断や基礎研究に興味を持つようになりました。また歯科大学に編入する前から法医学の仕事に関心があり、新潟大学大学院の病理学教室へ進学。そこでは医学部の脳研究所に出向し、脳の解剖も学びました。全身を解剖し細胞レベルで診断するという経験を通じて「なぜそうなったのか」という根本原因を探る姿勢が、現在の診療方法につながっています。既往歴や服薬状況からその人の背景を読み解き、歯だけでなく全身を診る視点を持つことができるようになりました。
なぜ夙川の地で開業されたのですか?

加古川のクリニックで歯科の基礎を徹底的に学んだ後、東京の山崎長郎先生のもとで診査・診断や噛み合わせについて1年間深く学びました。さらにその技術を研鑽するため大阪のクリニックでも3年間じっくりと学び、そこで虫歯になった原因や背景を把握する重要性についても学びました。勤務医時代の目標をやり遂げて開業場所を探していたとき、夙川駅前の物件に出会いました。もともとファストフード店が入っていた場所で地域の注目度が高く、駅から徒歩1分という立地も魅力でした。患者さんの通いやすさを第一に考えたとき、理想的な環境だと感じました。この地域の方々は健康意識が高く、根本的な治療を求める方が多いと感じたことから、しっかりとした診断と治療を提供したいという思いでここに開業することを決めました。
細菌を「見せる」診療で根本原因に迫る
「なぜ虫歯になったのか」を追求する診療とは?

例えば、歯が痛い、虫歯です、削って詰めましたで終わらせることはありません。なぜその歯が虫歯になったのか、細菌・噛み合わせ・生活習慣など、背景や原因を丁寧に探ります。その一環として、位相差顕微鏡を使い患者さん自身に口腔内の細菌を実際に見てもらいます。細菌が動いているのを見たら「こんなもの見たことがない」と驚かれるのではないでしょうか。初診では資料をしっかりと取り、次回に検査結果と治療プランを丁寧に説明します。患者さんが納得した上で治療を受けられるよう、時間をかけて向き合うことを大切にしています。こうした診療方法は、病理学や大阪時代の勤務医経験を通じて「なぜそうなったのか」を深く考える姿勢が身についたからこそ確立されたもの。当時の教授や師匠の先生からすべての現象に理がある。木を見て森を見ずにならないようにと常々厳しく指導をいただきました。当時はつらかったですが、今では感謝の念しかありません。
特に注力している治療について教えてください。
当院では、診査・診断と根管治療に注力しています。歯の土台となる大切な部分の治療なので、どんなに良いかぶせ物をしても診査・診断や根管治療がしっかりしていなければ歯を長く守ることはできません。そのためマイクロスコープを使って精密な治療を行い、型採りにはデジタル光学印象を用いて細部までこだわっています。また歯科技工士との連携もとても重要です。院内には歯科技工士の資格を持つスタッフが在籍しており、また大阪の歯科技工士専門学校でインストラクターを務める技工士さんとも連携しています。以前の職場でも院内に技工士がいる環境だったため、当院も密な連携が取れる体制を整えました。技工物の精度は治療の質に直結するため、妥協せず丁寧に取り組んでいます。
患者さんと接する中で大切にしていることは?

すべての方にきちんと顔を合わせることです。例えば定期検診でいらした方にも、スタッフから「次は3ヵ月後ですね」と伝えるだけでなく、私自身がごあいさつをし、できる限りお見送りもしています。まだ開業したばかりで時間に余裕がある分、一人ひとりとしっかり向き合うことができていますが、今後もできる限りこの体制を続けていきたいと思います。お子さんの場合は興味のあることを聞いて、その話題を出すと安心してくれるんですよね。治療の説明は専門用語をなるべく使わずわかりやすい言葉で丁寧に伝えることで、不安を和らげ、患者さんとの信頼関係を築くことを大切にしています。
通院に価値を感じてもらえるサードプレイスをめざして
スタッフの働きやすさを重視されているそうですね。

歯科医院は女性スタッフが中心の職場が多いです。結婚や出産などをきっかけに一度退職するとそのまま歯科業界に戻らない方も多くおられます。でもそれはとてももったいないと思います。患者さんとの信頼関係が築けていたのに、スタッフが辞めてしまうことで患者さんも寂しく思うのではないでしょうか。だからこそ長く安心して働ける環境づくりが大切だと考えています。当院ではできる限り残業をなくし、18時には全員が帰宅できるようにしています。非常勤スタッフの中には、保育士の資格を持つ方や英語が話せる方、看護学校に通っている方などそれぞれのスキルを生かして働いてくださっています。どんなライフステージにあっても、自分らしく活躍できる職場でありたいと思っていますし、今後、託児所の設置も検討しています。スタッフが安心して働ける環境は、患者さんにとっても安心につながると信じています。
「サードプレイス」でありたいという理念をお持ちだそうですが、どんな意味なのでしょう。
学生時代にコーヒーチェーン店でアルバイトをしていたのですが、そこで掲げられていた「サードプレイス」という理念にとても感銘を受けました。サードプレイスとは、第1の場所が家、第2が職場や学校、そしてそのどちらでもない、くつろげる第3の居場所のことです。私も、歯科医院がそんな“サードプレイス”のような存在になれたらいいなと思っています。そのために、高級感だけでなく、歯の形の鏡を置いたり、親しみやすさも大切にしています。また、働く世代の方々にも通いやすいように、土日も診療を行っています。インプラントなどの自費診療にも力を入れていて、保険診療では対応が難しいケースにも、しっかりと向き合えるようにしています。ここに来ることで、ちょっと特別な気持ちになれるような、そんなクリニックづくりをめざしています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

開業して間もないですが、「今の私の歯の状態ってどうなんですか?」としっかり診断を求めて来られる方が多いです。「痛いから治してほしい」ではなく、根本的な改善を望まれている。そうした方々のニーズに今後も応えていきたいですね。細菌を見てもらったり、なぜこうなったのかを丁寧に説明したりすることも、患者さんの満足度につながっているように感じます。夙川はファミリー層も多いエリアなので、お子さんの治療にも力を入れています。歯科技工士さんとの連携、デジタル設備の導入、そして何よりホスピタリティーを大切にしながら、地域に愛されるクリニックをめざします。サードプレイスとして、皆さまの健康を支えていきたいと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/49万5000円~

