東谷 紀和子 院長の独自取材記事
西小山とうや内科・糖尿病循環器クリニック
(品川区/西小山駅)
最終更新日:2026/03/13
西小山駅から徒歩2分、駅前商店街から1本入った閑静な住宅街のビル1階にある「西小山とうや内科・糖尿病循環器クリニック」。2025年開業の同院は、入り口を開けるとすぐに笑顔の受付スタッフが迎えてくれる、開放的な造りが特徴だ。淡いカラーと木目調で統一された院内は、穏やかな安心感に満ちている。院長の東谷紀和子先生は、東京女子医科大学の糖尿病センターで長年経験を積んだ日本糖尿病学会糖尿病専門医。患者と対話をしながら、対等な立場で治療を決める「共同意思決定」を大切にしている。取材に居合わせたスタッフからも、「先生は誰に対しても穏やかで、患者さんの話に共感している姿をよく見る」と信頼の声が上がる。東谷院長に糖尿病治療への思いや診療で心がけていることについて話を聞いた。
(取材日2026年2月13日)
一時的な診療ではなく、生涯を通じて寄り添える場を
開業に至るまでの経緯をお聞かせください。

長年勤務していた東京女子医科大学の糖尿病センターでは、網膜症や足の切断など、糖尿病の合併症が進行した患者さんを数多く診療してきました。私は腎臓チームに所属していたため、透析導入が必要となった方や、維持透析中の患者さんを診察する機会も多くありました。そうした臨床経験を通して、糖尿病は合併症が進んでから治療するのではなく、早い段階から適切に管理することが非常に重要な病気だと強く感じていました。糖尿病は、虫垂炎のように手術をして治療が完結する病気ではなく、多くの場合、患者さんが長い年月をかけて付き合っていく慢性疾患です。そのため、患者さんの人生に断片的に関わるのではなく、長く寄り添いながら健康を支えていける医療の場を作りたいという思いが強くなりました。こうした思いから、地域の中で患者さん一人ひとりの生活や背景にも目を向けながら、継続的にサポートできる医療を実践したいと考え、開業を決意しました。
先生の診療の根底にある考え方についてお聞かせください。
夫がアメリカに留学した際に帯同し、メイヨークリニックの糖尿病の教室で勉強させていただきました。そこで出会ったのが「Shared Decision Making」、日本語では「共同意思決定」と呼ばれる考え方です。治療の選択肢を示し、良い点・注意点を説明した上で、私たち医療者と患者さんが、対話を通して、治療の選択肢やその医学的根拠、患者さんの価値観や生活背景を共有して、協力して治療を決めていくことを意味します。実際の外来を見学した時、信頼関係の中で本当にフラットに話し合っている姿に感銘を受けました。私自身、もともと「こうしなさい」と押しつけるタイプではなく、「私はこう思うけれどもどうかしら」と患者さんの納得感を重視することを大事にしてきたので、この理念がとてもふに落ちたのです。まだ日本ではあまり浸透していない言葉ですが、この小さなクリニックから少しずつ実践していけたらと考えています。
クリニックの特徴や雰囲気について教えてください。

ふらっと気軽に立ち寄れる場所にすることを大切にしました。当院は1階にありますが、扉を開けるとすぐに受付スタッフの顔が見えるレイアウトですので、近所の方が「これから診てもらえますか」とのぞいてくださることもあるんです。また、院内はバリアフリーで段差をなくし、内装は淡い青や緑、木目調をメインとし、落ち着いた雰囲気で統一しました。淡い青は糖尿病のシンボルであるブルーサークルからイメージし、淡い緑は私自身が好きな色ということもありテーマカラーに選びました。また、糖尿病内科では尿検査が欠かせませんので、少しでも快適に過ごしていただくため、トイレは男女別にしています。
患者の価値観を尊重し、最善の選択をめざす
診療で大切にされていることを教えてください。

患者さんがクリニックを訪れるときは、自分が病気なのか、状態がどれくらい悪いのかなど、さまざまな不安を抱えていらっしゃいます。そうした不安を少しでも和らげるためには、患者さんが思っていることを遠慮なく話していただけるようにすることが大切だと考えています。私自身はつい質問をしてしまうタイプなのですが、忙しそうな医師の前では「こんなことを聞いてもいいのかな」とためらってしまう方も多いのではないでしょうか。だからこそ、目を見てしっかりお話を聞くことを心がけ、診察の最後には「ほかにご質問はありますか」とお声がけするようにしています。特に初診の方には、できるだけ安心してお帰りいただけるよう、丁寧に対応することを意識しています。
糖尿病の治療ではどのようなことを心がけていますか?
糖尿病の治療は、患者さんのモチベーションと深くリンクしています。長年の経験から痛感しているのは、患者さん自身が納得してはじめたことでなければ、結局結果につながらない、ということです。たとえ数値が思うように改善していなかったとしても、「この薬は飲みたくない」「もう少し薬を使わずに頑張りたい」という思いがあれば、よほど緊急性がない限り尊重するようにしています。また、糖尿病は基本的に卒業のない病気ですから、血糖コントロールを差し置いても優先すべき人生のイベントや、結婚・出産などもあるはずです。そうした患者さんの人生のフェーズを把握しながら、一緒に治療を進めていきたいと考えています。最近は体重管理も重要なキーワードになっており、体重の減少は血糖値以上に患者さんのモチベーションになることも多いので、減量のご提案も積極的に行っています。
検査体制や地域の医療機関との連携についてお聞かせください。

首・腹部・甲状腺・心臓のエコー検査を実施しています。心臓エコーは検査日以外でも、循環器の専門医師である当院副院長も担当しており、金曜午後と土曜であれば当日対応も可能です。動悸に悩む患者さんも多いため、ホルター心電図は2台体制にしました。副院長は、通常の検査では見つけにくい微小血管狭心症や冠攣縮性狭心症などの胸痛疾患を専門としており、必要に応じて造影CTやカテーテル検査につなげられる体制も整えています。また、東京医療センターや昭和医科大学病院、東京都立荏原病院などとも連携し、精密検査が必要な方も速やかにご紹介可能です。糖尿病治療は日進月歩の分野のため、常に新しい医療情報を診療に生かすことを大切にしています。
症状がないうちから気軽に相談できる存在でありたい
クリニックのスタッフさんについてお伺いできますか?

私から特別な指導や指示はしていませんが、主体的に動いてくれるスタッフたちで、とても頼りにしています。受付スタッフは待合室で患者さんと気さくに話し、自然な会話の中から診療につながるヒントを得てくれています。また看護師は、糖尿病の患者さんが自宅で行う持続血糖モニタリングやインスリン注射の方法を教えてくれています。80代の方でもスマートフォンを使ったデータ連携が無理なくできているようです。そして管理栄養士は患者さんに寄り添いながら食生活を聞き取り、栄養指導を行っています。チームで取り組む大切さを日々実感していますし、「来て良かったと思えるクリニックに」という思いを共有してくれる、素晴らしい仲間に恵まれました。
今後、地域でどのような存在でありたいとお考えですか?
何かあったら、ふらっと立ち寄って相談だけして帰っていただいても構いません。そんなふうに気軽に頼っていただける存在でありたいと思っています。糖尿病や循環器疾患など、動脈硬化に関わる病気は、いかに早い段階で予防・管理するかが重要です。そのため、地域の中で動脈硬化や生活習慣病の予防についての啓発活動にも力を入れていきたいと考えています。多くの合併症は、一度進行してしまうと完全に元に戻すことが難しく、治療の目的は進行を穏やかにすることになる場合もあります。だからこそ、症状が出てからではなく、症状のないうちから気軽に相談に来ていただきたいです。適切に治療を続ければ、必ずしも怖い病気ではないことも知っていただければうれしいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

品川区には20歳から受けられる健診制度がありますし、会社の健診でも構いません。ぜひ健診を活用してください。近年「隠れ糖尿病」の方も増えていますし、妊娠糖尿病と言われたものの、出産後は子育てに追われて受診ができなかった、という方も多くいらっしゃいます。「自分は黄色信号かもしれない」と感じながらも、忙しくて受診できていない方がいらしたら、当院に気軽に足を運んでみてください。一緒に考え、選択していきましょう。

