鈴木 琢真 院長の独自取材記事
新川崎こどもと家族のクリニック
(川崎市幸区/新川崎駅)
最終更新日:2025/11/28
かつて貨物列車の操車場があった新川崎。その歴史を大切にしたいという思いから、汽車や駅舎をモチーフに設計が進められた「新川崎こどもと家族のクリニック」。鈴木琢真院長は、忙しい中で子育てをしている家族が使いやすいようにと、駅からすぐという利便性の高い立地で、日曜や月曜の夜も診療を実施している。小児科を専門としつつ、幅広く地域のプライマリケアを担い、「家族が一緒に風邪をひいた場合は、一緒に診るのが望ましいんですよ」と、年齢の垣根も越えて診療。自身の子育て経験を生かした医院づくりや診療における心がけまで、多岐にわたるテーマについて話を聞いた。
(取材日2025年10月31日)
ちょうど良く、質の高い医療サービスを提供
新川崎での開業を決めた経緯についてお聞かせください。

世田谷で内科医と一緒に勤務していた時期もありましたが、小児科医として、自分らしい診療をしっかり行いたいという思いが段々と強くなっていきました。そうして物件を探していた際にこの場所を見つけ、駅から徒歩2分で雨の日でも濡れずに来られる立地に魅力を感じました。ビル内にはスーパーやカフェ、保育園もあり、特に子育て世代の方にとって便利な環境だと思います。新川崎は、かつて貨物列車の操車場があった歴史ある街です。地域の歴史も大切にしたいと考え、院内のデザインには汽車や電車のモチーフを取り入れました。待合のソファーは客車をイメージして配置し、子どもたちが楽しみながら過ごせる空間をめざしています。
「子どもと忙しいご家族のために」がコンセプトだと聞いています。
はい。共働き家庭が増える中、平日に受診するのが難しい保護者の方が本当に多くいらっしゃいます。その点、当院は駅からも近く、日曜や月曜の夜も診療を行っています。コンセプトの中心にあるのはプライマリケアです。体のことで何か気になることがあったとき、あるいは「何科に行けば良いかわからない」というときに、まず相談していただける場所でありたいと考えています。小児科が専門ですが、感染症やアレルギーの診療内容は年齢によって大きく変わるものではありません。ですから、「16歳以上は別の医院へ」という形態ではなく、ご家族皆で通っていただくのが理想です。家族全体の健康情報がそろうことで、より適切な診察につなげることができると思っています。
家族全体を診ることの意義をどのようにお考えですか?

例えば、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症で家族全員が体調を崩したとき、子どもは小児科、大人は内科と分けて受診するのは大変です。体調が優れない中で、別々の医療機関を探して通うのは大きな負担になることも理解しています。親御さんはどうなのか、赤ちゃんはどうなのか。家族全体の状況を立体的に捉えられたほうが、より適切な診断につながります。小児科には隔離室などの設備も整っているため、そのままの環境で家族皆を一緒に診ることができる体制が整っています。より多くの方に通っていただくためにも、こうした体制はぜひ取り入れるべきだと以前から思っていました。
子育て世代も家族で受診しやすい仕組みづくりを
予約制と診療時間の工夫について詳しく教えてください。

すべて予約制にしているのは、混雑状況をあらかじめ把握してもらうためです。順番待ちのシステムでは、行ってみないと混み具合がわからないこともありますが、時間予約なら空き状況を一目で確認できます。もし2時間待ちになりそうなら、他の選択肢を検討することもできます。予定が立てやすくなれば、次の行動にも移りやすいですよね。診療時間については、私自身が共働きで子どもを保育園に送り迎えしていた経験も参考にして設定しました。平日に小児科へ連れていく大変さを実感していたからこそ、月曜は19時まで、そして日曜も診療という体制にしたんです。仕事や家事で忙しい方々にとって、少しでも頼りになる存在でありたいと考えています。
予防接種・健診専用時間や小児のご相談専用枠を設けているのはなぜでしょうか?
昼の1時間と午後の始めの1時間を、「予防接種・健診・ご相談専用」の時間にしています。これは「時間的隔離」と呼ばれるもので、風邪などの感染症の方と接触しない環境で、安心してワクチン接種や健診を受けていただくための工夫です。特に乳児期早期の子を持つ親御さんは、風邪の子と同じ空間になることを心配される方も多いので、このような時間を設けています。ご相談専用枠では、赤ちゃんのちょっとした心配事から、学生さんの不登校など心身の問題まで、時間をかけて丁寧にお話を伺います。慢性疾患のご相談はどうしても時間がかかるため、一般診療の混雑する時間帯とは分けて、しっかり対応できるようにしています。また、オンライン診療にも対応していますので、外出が難しい方でも安心してご相談いただけます。
診療の際に心がけていることはありますか?

病気を「理解してもらうこと」を何より大切にしています。例えばインフルエンザなら、「通常はこのような経過をたどります」と説明し、もしそうならなかった場合は再度受診してくださいとお伝えします。つまり、まず「普通の経過」を共有しておくことで、そこから外れたときに「異常だ」と気づいてもらえるようにしているのです。医師には経験から来る判断力がありますが、患者さんやご家族にはそれがわかりにくいこともあります。だからこそ、正常と異常のパターンをあらかじめ共有することで、お父さんお母さんが交代で見ていても「ちょっとおかしいな」と気づけるような状態をめざしています。また、子どもの顔を見て、その子に合わせた話し方をすることも心がけています。子どもが「行きたくない」と思う場所には、それ以降来てもらうのは難しいと思っていますからね。
小児科医だからこその関わりでその人の人生を支えたい
これまでの経歴と、小児科医を選んだきっかけを教えてください。

外科で研修医をしていた頃、60代の潰瘍性大腸炎の患者さんを診ました。若い頃から病気と向き合い、仕事を続けるのも難しく、長い闘病生活を送られていた方です。その後、小児科で10代の同じ病気の男の子を担当しました。点滴治療から内服に切り替え、改善をめざす経過を見守る中で感じたのは、この病気は医師の診療方針一つで、その人の人生が大きく変わり得るということでした。同じ病気でも、社会で活躍できる人もいれば、仕事や生活に支障を来す人もいる。だからこそ、小児科で早くから適切に関わることの意義はとても大きいと思いました。父は眼科医で、当初は自分も眼科に進もうと考えていましたが、半年ほど悩んだ末に小児科を選びました。
開業に至った経緯について詳しく伺います。
日本大学の新生児部門で4〜5年研鑽を積み、赤ちゃんの対応には自信がつきました。その後、医局を離れて常勤医として勤めた病院では、小児科だけでなく内科や皮膚科も診療しており、毎日がとても忙しく、でも本当に楽しい日々でした。当時の院長先生が「街の中の医者として、何でも診る」という姿勢を貫いていて、その姿がとてもかっこよく、自分もそんな医師になりたいと思ったんです。実体験としても、10年前私の子どもがまだ小さかった頃、日曜日に診てくれる小児科が近くになくて本当に困ってしまったことがあって……。「同じ医師が、いつもそこにいてくれる」、そんな「かかりつけ」の存在の大切さを、身をもって感じた出来事でした。世田谷での経験を重ねる中で、自分の理想とする診療を形にしたいという思いが強まり、開業を決意しました。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

体調が優れない時に、まず思い出してもらえるような地域のクリニックでありたいと思っています。今後は、園医や校医といった地域医療活動にも積極的に取り組んでいく予定です。お子さんのことはもちろん、ご家族の方の体調についても、小児科や皮膚科に関することであれば幅広く対応が可能です。日曜日も診療していますので、お休みの日に気になることがあれば、どうぞお気軽にご来院ください。また、慢性疾患でお困りの方も遠慮なくお申しつけください。「何科に行けば良いかわからない」といった場合でも、まずは当院にご相談いただければ大丈夫です。地域の皆さんにとって、一番身近で頼れる「健康の窓口」として、これからも安心を支えていきたいと考えています。

