大島 壮太郎 院長、大島 朋実 さんの独自取材記事
湘南茅ヶ崎よろづ診療所
(茅ヶ崎市/茅ケ崎駅)
最終更新日:2025/12/26
2025年8月、地域に根差した診療をめざして開業した「湘南茅ヶ崎よろづ診療所」。落ち着いた院内には、子どもから高齢者まで誰もが相談しやすい雰囲気が漂っている。院長を務める大島壮太郎先生は、沖縄の離島診療や軽井沢での地域医療を経験してきた。家庭医療および総合診療を専門とし、まず患者の困り事を受け止める姿勢が印象的だ。妻であり管理栄養士の大島朋実さんによる栄養指導も含む、食事や生活面まで寄り添うスタイルを大切にしている。幅広い検査に対応し、訪問診療にも力を注ぐ同院。「まずここに相談すれば良い」と思える場所をめざす2人に、開業の経緯や診療への思いを聞いた。
(取材日2025年11月10日)
へき地医療での経験を生かし、何でも診られる医院へ
これまでのご経歴を教えてください。

【壮太郎院長】大学卒業後、「どうせやるなら一番厳しい所で修行しよう」と沖縄県立中部病院で初期研修を受けました。離島診療を担う「何でも診られる医者を育てる」病院で、そこに憧れたんです。その後、家庭の事情もあって出身地である神奈川に戻り、大学病院の総合診療科で研鑽を積んだ後、沖縄の小浜島に2年間赴任しました。人口700人、観光客を含めると1000人規模の島で、夜間や台風の時は医師は自分だけ。日々の体調不良から心筋梗塞といった命に関わる病気の方まで、本当にすべて自分1人で診る環境でした。2年の任期を終えた後は長野県の軽井沢病院に勤め、さらに地域に根づいた医療に従事。そこで、患者さんに一番近いかたちで医療を提供できたらと考え、開業を決意しました。
なぜ医師の道を選んだのですか?
【壮太郎院長】もともとは大学卒業後に建築系の仕事をしていたんです。でも、常に新しいデザインを出し続けなければならないというプレッシャーに疲れてしまったんです。そんな中で考えたのが「医療であれば自分の頑張りがそのまま患者さんのためになるのではないか」ということ。ダイレクトに人の役に立てて人と関われる仕事をしたいと思い、31歳で国立の旭川医科大学に入り直しました。北海道で学ぶ中で、都会とは異なり、地方では限られた医療資源の中で幅広く対応できる医師が求められていることがわかりました。それを支える、家庭医療や総合診療が専門の医師の存在意義を強く感じ、「自分がやるべきはこれだ」と確信しました。
2025年8月に現在の地で開業されました。

【壮太郎院長】私の実家が神奈川県藤沢市にあり、開業するなら地元で、地域に根差してやりたいと考えて準備を進めていました。その中で「みよし内科クリニック」の三好保由先生とのご縁があり、それまでの私の経験を評価いただき、2025年8月に医院を引き継ぐかたちで開業したんです。三好先生からの提案で「何でも診られる」を表すため「よろづ」を院名に採用しました。現在は、一般的な血液検査から、エックス線や超音波など緊急性の判断ができる検査、糖尿病に必要な検査は一通り可能で、尿でがんを調べる検査や各種委託検査も扱っています。スタッフは血液内科を扱っていた前医院時代から勤務しているベテランばかりで、採血が非常に得意です。睡眠時無呼吸症候群の検査やアレルギー検査にも対応し、「ここに来れば困らない」というような体制を整えています。
管理栄養士による栄養・食事指導で、最期までサポート
診療の特色を教えてください。

【壮太郎院長】「よろづ」の名のとおり「まず相談してもらえる場所」として環境を整えました。まずは専門診療科や専門医資格を持つ医師に、との考えも根強いのですが、実際には受診先がわからず、あちこち受診してしまう方も少なくありません。だからこそ最初の窓口として導ける存在として幅広く診る一方で、無理に抱え込むのではなく、離島で働いていた頃と同じように、必要と判断すればすぐ専門家に紹介し、また戻って来てもらうという循環を大切にしています。また、診療をするときは管理栄養士である妻の朋実の意見も取り入れながら、生活や食事面まで含めて支えられる体制を整えています。なお、三好先生にも週2回外来を担当していただき、地域を支える力を重ねながら診療を続けています。
注力している訪問診療では、食事・栄養の部分も重視されているそうですね。
【壮太郎院長】栄養の重要性を実感しています。誤嚥を恐れて食事をせず、最期の時を待つために退院してくるという患者さんもいらっしゃいます。しかしご自宅に戻り、姿勢やペースをご本人に合わせられる環境になると、無理のない範囲で食事が進むこともあるんです。妻に相談して食べやすい食材や形態などを提案してもらい、食事を再開し、元気を取り戻していただけたらと思います。
【朋実さん】体調と食事は深く関係しているため、お薬に頼るだけでなく、食事を見直すことが大切です。私たち管理栄養士の役割は、最期まで「食べる」を支えること。食事にお困りのまま、ご自宅での在宅療養に入る方が増えている傾向があるため、その方がどんな状況で、どんな食事なら無理なく取れるのかを一緒に探し、在宅でも食べ続けられるような仕組みを整えることを大切にしています。
お互い、どんなところを尊敬されていますか?

【壮太郎院長】「あれは食べては駄目」「こうしなきゃ駄目」と一方的に制限を突きつけるのではなく、何を食べられるかを一緒に探してくれる存在です。専門的な課程も修了していて、論文を書いたり大学院に通ったり、とても研究熱心なところも魅力であり、尊敬しています。開業を考えた理由の一つにも、彼女が活躍できる場をつくりたかったという思いがあります。
【朋実さん】どこまでも人のために力を尽くせる、本当に優しい心の持ち主です。一見すると不器用に見える瞬間もありますが、その奥には揺るがない温かさがあります。誰かに寄り添い続けることは簡単ではありませんが、それを当たり前のようにやってのける姿を心から尊敬しています。
24時間患者を思い、寄り添い続ける「よろづ」診療所
普段、お二人はどのように連携されていますか?

【壮太郎院長】普段から「今日こんな患者さんがいたよ」「訪問時にこう話していたよ」と、気がつくと一日中患者さんの話をしています。24時間そんな感じなのですが、お互いそういう話が好きで、患者さんのことをずっと考えていられるタイプ。だから診療でも同じ方向を向きやすく、相性が良いんだと思います(笑)。医学的に正解があったとしても、その方にとってつらい選択なら意味がありません。遺されたご家族が後悔しないように、最もその人らしい選択を一緒に探したいですね。
【朋実さん】私はその方の「本当の思い」を引き出せるように心がけていますし、共有した情報をもとに自分に何ができるかを常に考えています。そうやって一緒に考え続けられる関係はとても心強いです。
朋実さんが中心となって取り組む「認定栄養ケア・ステーション」について教えてください。
【朋実さん】「認定栄養ケア・ステーション」は、日本栄養士会が認定する仕組みで、管理栄養士が日常生活の場で栄養ケアをするための場です。病気ではないけれど「食事について専門家に聞きたい」「家庭や施設の食事内容が適切か知りたい」というケースなど、日常の食生活にまつわる幅広い相談に対応しています。また、訪問栄養指導などのご依頼は、このステーションでもお受けしています。まずはどのようなご相談があるのか内容を伺い、その方の状況に合わせて訪問指導または来院指導を行っています。
今後の展望と、地域の方へのメッセージをお願いします。

【朋実さん】困ったときに手を差し伸べられる存在でありたいです。まだ学ぶことも多いですが、もっと力になりたいという気持ちは強く、患者さんやスタッフ一人ひとりの思いを大切にしたい。その方に寄り添いながら、ここなら頼れると思っていただけるよう成長していきたいです。
【壮太郎院長】少しわかりづらい場所にありますが、これは三好先生が「患者さんを増やすことより落ち着いて話せる環境が大事」と考えて選んだ場所なんです。長く働いてくれているスタッフも多く、患者さんに自然に声をかけられるような、温かい雰囲気があります。地域やここで働くスタッフの生活も大切にしながら、関わる人皆が幸せになれる診療所にしていきたいと思っています。まずは何でも相談してください。赤ちゃんからご高齢の方まで、一緒に考え、その方にとって最善のかたちを探していきます。

