久保 伸貴 院長の独自取材記事
ユーカリが丘総合診療・家庭医クリニック
(佐倉市/ユーカリが丘駅)
最終更新日:2025/11/10
ユーカリが丘駅から徒歩8分。街のランドマーク的な高層マンションの2階にある「ユーカリが丘総合診療・家庭医クリニック」は、2025年9月に開業したばかりの家庭医療クリニックだ。久保伸貴院長は、瀬戸内海で地域医療に携わっていた父の姿を見て医師を志し、医学生時代に家庭医療という学問体系に出会った。「父が実践の中で積み上げて体現していたことを、体系的に学べることに魅力を感じた」と語る久保院長。訪問診療で患者の生活に寄り添い、地域の暮らしを肌で感じながら研鑽を積んできた経験が、今の診療スタイルの礎となっている。「困ったことがあれば、躊躇せずに当院をいつでも頼ってほしい」という思いで、乳児から高齢者まで家族をまるごと診る医療を実践する久保院長に、開業の理由や診療への思い、地域医療にかける想いを聞いた。
(取材日2025年10月15日)
地域の「困った」に応える家庭医療の実践
家庭医療を提供するクリニックとして開業された理由は?

既存の家庭医療のクリニックで働く選択肢もありましたが、総合診療と家庭医療を提供できる医師を養成できるクリニックは、日本にまだ多くありません。自分がそういったクリニックを開業することで認知度が広がり、それをめざす医師が増えていけばいいなと考えました。将来的にはここで教育までしていきたいと思っています。また、誰かの幸せをサポートしていくためには、働くスタッフ自身が幸せであることが大切だと考えています。患者さんの健康や幸せと、スタッフの幸せを両立させていくことを目標にしています。
医師を志したきっかけと、家庭医療を選んだ理由を教えてください。
瀬戸内海で地域医療に携わっていた父の背中を見て育ちました。父は常に俯瞰的な視点で「島の医療がどうあるべきか、地域の医療がどうあるべきか」を考えていて、その姿がとても印象的で、誇りにも思っていました。医学部に入り、地域をどう診るか、家族をどう診るか、個人を全体としてどう診るかということが、家庭医療という学問として確立されていることを知りました。それを学ばずして父がすでに島の医療で体現していたことにも、また驚きました。そこで、医学部にいるだけでは学べない、家庭医療という領域に進むことを決めたのです。
このクリニックでも家庭医療を実践されていますが、具体的にはどのような診療を行っていますか。

地域とそこに住む患者さんのニーズに応えていくことが一番の特徴です。患者さんの困っていること、悩んでいることに寄り添って、さまざまな立場からサポートできることを提案し、問題解決に努めていく。そういった領域を専門にしています。また、患者層としては赤ちゃんからご高齢の方に至るまで、ご家族みんなの困り事に対応しています。例えば子どもが熱を出して、お母さんもだるさを感じている場合は、一緒に受診していただくこともできます。複数のクリニックに通っていて通院がとても大変だというような場合、ご本人の希望があれば、病状や通院歴を確認した上で、当院でまとめて診るといったご提案もできます。何科に行けばいいかわからない方、病院に行くほどではないけれど相談したいという方も、まずは気軽に来ていただければと思います。
訪問診療で培った全人的医療への思い
開業前に、訪問診療を豊富に経験されています。そこから学んだことは何でしょうか。

患者さんの生活しているところや家庭の状況、その地域の様子が垣間見えるのが良かったですね。漁師さんや農家さんの生活、この時季はこんなおいしい物が取れる、といったことまで、人間の幅が広がるようなさまざまな貴重なことを教えていただきました。その中で、例えば農家さんのご家族が農作業で忙しい時期に、寝たきりのおばあちゃんをどう診ていくかなど、地域やご家族の状況、病状の変化に合わせたサービスの調整や提案を考える機会に恵まれました。私自身訪問診療はとても好きですし、答えがない部分が多いものの、その分大きなやりがいがありました。当院でも訪問診療を始める準備ができたところです。
診療におけるコミュニケーションで大切にしていることは何でしょう。
病状が切迫しているものでない場合、最初の数分は話を遮らずに質問を深掘りしながら、患者さんの状況の理解に努めています。話すことですっきりすることもありますし、たとえ解決できなかったとしても、それにどう向き合っていくかを考えていく。その中で「抱えるつらさに一緒に伴走してくれる人がいる」というメッセージを伝えるのも、家庭医療を提供する医師としての大事なスキルだと考えています。一方、しばしば症状の裏に心配事やストレスが隠れている場合もあります。その際には、症状との関連性を考えた上で、心配事の解消の方を先にご提案もすることもあります。また、過剰な検査や薬の処方は避け、本当に必要なものだけを提案することも心がけています。例えば、ご自身の疾病の定期検査と、一般的な健康診断とで重複している検査項目があれば、そこもご指摘して、患者さんの負担を減らすよう心がけています。
幅広い年代層の方が来られますが、心がけていることはありますか。

どの患者さんにも、一人の人間としてきちんと対応したいという思いがあります。特に私より年上の患者さんには、敬意を持って接するよう努めています。一方で就学前のお子さんの場合、ご本人は名前よりも歳のほうが言いやすいので、年齢、名前、誕生日の順で聞くようにしています。誕生日まで言えたら一回褒めてあげると、本人もうれしいと思うんです。小学校以上のお子さんには病院受診のマナーを知ってもらえるよう、敬語できちんと話をして自分で名前を言ってもらうなどその年代ごとに得てほしい安心感を感じてもらえるように、意識しています。
躊躇せず頼れる地域のかかりつけ医として
院内の環境づくりで工夫されたことは?

木目を基調にグリーンを取り入れナチュラルな雰囲気を心がけました。待合室は特にゆったり過ごしてもらえるよう意識してつくっています。診察室はご家族含め、4、5人程入っても十分なスペースを確保しました。家庭医療として、家族まるごと診るという理念を形にしました。また、感染症の方とそれ以外の方の動線を分けていますので、感染の心配も少ないことから安心して来院していただけると思います。
今後の展望について教えてください。
地域の人の「困った」にしっかり対応していきたいと考えています。「ちょっと相談したい」という要望をなるべく断らないようにしたいと思っています。ほかの医療機関で、今日受診したいけど受診できないという方もいらっしゃると思います。そんな場合、少しお待ちいただく場合もあるものの、当院で「困った」への対応をできる限りやっていけたら、と思っています。今後患者さんが増えていった際には、並行して常勤医師を確保するなどして、「困った」をできるだけ断らずに対応できる医療機関であり続けたいですね。
地域の方へのメッセージをお願いします。

何か困ったことがあれば躊躇せずに受診していただければと思います。特に健康面で何かお困りの方、こんなことで医師に相談していいのだろうかと迷っている方、どこの科を受診すればいいのかわからない方、複数の科に通院されてご負担に感じている方など、当院でも何らかのお力になれるかもしれません。まずは気軽に当院を頼っていただければと思います。これからも末永く、地域の皆さんの幸せやご健康のために、精一杯努力していきたいと思っていきます。

