加納 永将 院長の独自取材記事
両国横綱クリニック
(墨田区/両国駅)
最終更新日:2025/09/16

相撲の聖地・両国駅ホームから正面に見えるビルの6階に「両国横綱クリニック」はある。2025年8月に開業した加納永将院長は、開業医だった祖父の「地域に根差した医療で人々に貢献する」という真摯な姿勢に影響を受け、学生時代から暮らす両国での開業を決意した。順天堂大学卒業後、スタンフォード大学への留学や離島医療など多彩な経験を積み、日本専門医機構認定の総合診療専門医として活動。「どの診療科に行けばいいかわからない」という悩みに応える診療を展開しており、地域住民はもちろん、通勤・通学者や旅行者にも対応し、日曜・祝日診療や英語診療も行っている。クリニック名には「横綱のように信頼される存在でありたい」という院長の思いが込められている。今回は、診療へのこだわりや今後の展望について話を聞いた。
(取材日2025年8月20日)
両国に根差す総合診療専門医としての出発
両国で開業されたきっかけを教えてください。

2つの理由があります。1つは、学生時代から両国周辺に住み続けており、この地域に深い愛着があること。母校の順天堂大学が御茶ノ水にあることもあり、両国の南端・千歳に長く暮らしてきました。土地勘もあり、周辺病院とのつながりもある、自分にとって最も心地良い場所です。もう1つは、墨田区に総合診療専門医が少なく、両国駅周辺には皮膚科クリニックも限られていること。だからこそ、当院を開業することで地域の方々のお役に立てるのではと考えました。JR中央・総武線両国駅は都営大江戸線との乗り継ぎで改札を出る人も多く、駅東口から徒歩0分の当院は、通勤・通学の途中にも立ち寄りやすい立地だと思います。
「両国横綱クリニック」という院名に込めた思いとは何でしょう?
クリニック名には「堂々とした、横綱のように信頼される存在でありたい」という思いを込めました。隣の通りは「横綱横丁」という飲食店街で、西口側には国技館がある相撲の聖地です。通り名にも由来し、覚えやすく親しみやすい名前になったと思います。私自身も相撲観戦が好きで、国技館にも足を運びます。外国人力士が異文化の中で挑戦し、トップをめざす姿には感銘を受けますし、それを受け入れる相撲界の懐の深さにも魅力を感じています。
総合診療専門医をめざしたきっかけは何だったのですか?

祖父は京都で開業医をしており、地域の方々を分け隔てなく診る昔ながらの医師でした。その姿に憧れ、私も地域に根差した医療を提供しながら、現代の多様なニーズに応える医師をめざすようになりました。総合診療専門医は、臓器や病気にとらわれず、患者さんを総合的に診るのが特徴です。当院では内科・皮膚科・アレルギー科を中心に、けがの処置から心臓・呼吸器・神経・糖尿病まで幅広く対応しています。「本物のプライマリケアを提供したい」という理念のもと、地域の皆さまの健康を守っていきたいです。
多様な患者ニーズに応える診療体制
どのような患者さんが来院されていますか?

開院から間もないにもかかわらず、幅広い方々にお越しいただいています。現時点では皮膚科の患者さんが多く、帯状疱疹や円形脱毛症、湿疹などさまざまな皮膚疾患でお困りの方が来院されています。日曜・祝日に診療を行う医院は都内でも少ないため、ホームページを見て遠方から来られる方もいらっしゃいます。アレルギー科ではアナフィラキシーで緊急対応が必要なケースもありました。高齢の患者さんも多く、複数の疾患を抱える方も少なくありません。こうしたケースでは、総合診療専門医として力を発揮できる場面だと感じています。エリアとしてはJR中央・総武線沿線の方が多く、新小岩や小岩方面に帰宅途中で立ち寄る方も見られます。また両国という土地柄、旅行者や外国の方も多くいらっしゃいます。現在、多くの方々に気にかけていただいており、父の会社の元上司の方がわざわざ受診に来てくださったときは、本当に感激しました。
クリニックの診療の特徴を教えてください。
まず、私が総合診療科専門医であることが当院の大きな特徴です。最近話題の総合診療科専門医をテーマにした連続医療ドラマで描かれているように、患者さんを幅広く診て深く理解し、必要に応じて専門機関と連携する診療スタイルを大切にしています。当院で対応している睡眠時無呼吸症候群の精密検査は墨田区でも限られた施設でしか対応できません。また舌下免疫療法などのアレルギー診療、性感染症診療も行っています。内科と皮膚科を標榜し、両方の視点から診ることで、患者さん自身をより深く理解できる点も強みです。日曜・祝日も診療しているため、平日お忙しい方にもご利用いただけます。また、英語での診療にも対応しており、子どもの頃に米国で生活していた経験から、英語での対話にも不自由はありません。外国人が多い両国という土地柄、旅行者にとっても安心できる存在でありたいと考えています。
診察で心がけていることはありますか?

患者さんの主訴以外に問題がないかどうか、常に気をつけています。これを一番大切にしているかもしれません。例えば、発熱で来院された方でも、普段飲んでいる血圧の薬や持病から今の症状が出ている可能性もあります。患者さんが困っていることと、医学的に重要な点の両方を深掘りしていきます。患者さんの話し方、服装、歩き方、生活背景、飲んでいるお薬、持病。いろいろなことを考慮して、他の可能性を医学的に探していく。それが総合診療科専門医の仕事だと思っています。それから、基本的なことですけれども、視診・触診をしっかり行うことも重視しています。問診票でわかるような症状でも、きちんと見て触れることで、患者さんに安心感を与えることもできるのではないかと思っています。
地域に愛される「小さな横綱」をめざして
総合診療が必要とされる理由をどうお考えですか?

高齢になると、問題が一つだけということはほとんどありません。認知症に加えて床ずれがある、生活習慣病の方が水虫を患う、睡眠時無呼吸症候群に精神的な不調も抱えているなど、複数の問題が絡み合っています。日本人の平均年齢は約50歳となり、多くの方が複数のトラブルを抱える時代です。病院を3〜4つかけ持ちするのは負担が大きく、「だるい」といった曖昧な症状で、どの診療科に行けばいいかわからない方も少なくありません。だからこそ、地域医療のハブとして、総合診療科専門医がまず患者さんを総合的に診て、家族背景も含めて対応する。そして、より専門的な治療が必要な場合は大規模病院へ紹介する。これが最も望ましい医療のかたちだと考えています。
今後の展望について教えてください。
クリニックの規模を大きくするよりも、質の高い診療を続けることを大切にしたいです。離島の診療所のように、地域の方々に長く愛される小さなクリニックでありたいのです。新島や式根島で地域医療を経験し、医師の人数が限られた環境で築く患者さんとの関係性の大切さを学びました。都内でも、そうした信頼関係を築いていきたいですね。「ここに行けば多くの問題が解決できる」と思っていただける、地域の健康相談窓口のような存在をめざしています。日々の医療的トラブルを身近な範囲で対応しつつ、必要に応じて大学病院などへ紹介する。けれど、ほとんどのことは両国横綱クリニックで解決できる—そんな存在をめざしています。
お忙しい毎日かと思いますが、お休みの日はどんなふうに過ごされていますか?

4歳と0歳の子どもがいるので、家族で外食や買い物、公園で遊ぶなど、ごく普通の生活をしています。少し変わっているのは、日常会話に英語を取り入れていることですね。英語が話せると、自分の学びを海外の方にも伝えられ、そこから新たな気づきも得られると思っています。さまざまな国の人と接することで、子どもたちの人生にも良い影響があるのではと感じていて、世界の公用語である英語に不自由しない子に育ってほしいと思っています。子どもたちは、心のどこかで「なんでお父さんは英語なんだろう?」と思っているかもしれません(笑)。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
当院は、お父さんもお母さんも、お子さんも、家族全体を診療させていただくファミリークリニックとして地域に根差した診療を続けていきます。平日はお忙しくて受診が難しい方は、日曜日、祝日に受診いただければと思います。何か困ったことや気になる症状があれば、気軽にご相談ください。どの診療科に行けばいいか迷ったときも、総合診療専門医として適切に判断します。両国の温かい地域性を大切にしながら、皆さんの健康をサポートいたします。