いつまでも続くつらい咳
クリニックを受診するべき?
元八事ファミリー内科クリニック
(名古屋市天白区/八事駅)
最終更新日:2025/10/15


- 保険診療
新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症は、冬だけでなく夏にも流行することが多くなった。感染症になってしまった時、咳症状がひどいと夜も眠れなかったり、咳き込んで息が苦しくなったりと、本当につらい。そんなつらい咳症状がいつまでも治まらなかった経験のある人も多いのではないだろうか。熱は下がっても夜になるとひどく咳き込むということも多い。こういった長引く咳はどうして起きるのか? また、放置しておいて良いものなのか?などの疑問を、日本呼吸器学会呼吸器専門医に質問してみた。「元八事ファミリー内科クリニック」の浅野貴光院長が、長引く咳について詳しく解説する。
(取材日2025年9月16日)
目次
長引く咳の裏に咳喘息が隠れていることも。慢性化してしまう前に受診することが大切
- Q咳が長引くのはどのような原因が考えられるでしょうか?
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A
▲さまざまな可能性を考えながら診療を進める
咳が長引く場合、咳が続いている期間は重要なポイントであり、診断する一つの材料になります。3週間未満、3~8週間、8週間以上に分けて考えますが、3週間未満であれば、風邪をはじめとしたウイルス感染による急性の咳であることが多いです。3週間以上続く咳であれば、咳喘息や逆流性食道炎、副鼻腔気管支症候群、間質性肺炎、肺結核などが疑われます。日本人で一番多いのは咳喘息で、その要因となるのは、ハウスダストや花粉などのアレルギーをはじめ、気温や気候の変化など。咳喘息になる人は、咳だけではなくて息苦しさなども伴う気管支喘息を発症してしまうこともあるので、早めに咳喘息と診断し、治療を開始していくことが大切です。
- Q咳を放置すると、喘息を発症してしまうこともあるのですね。
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A
▲慢性的になる前に治療をすることが大切
「ただの風邪」「単なる一時的な咳かも」と思ってしまう方も多いですが、その裏に喘息が隠れていることがあります。喘息は子どもから大人まで幅広い年代で発症し、特にアレルギー体質の人はその素因を持っています。咳が長引く場合や、就寝中や明け方に咳き込みや息苦しさが強くなる場合は、自己判断で放置せず、早めに受診することが大切です。放置すると慢性的な症状や繰り返す発作につながってしまうこともあります。また、気道の内側の壁が厚くなったり、固くなったりして、気道の内腔が狭くなってしまう、「気道リモデリング」という状態が進むと、薬を使っても症状が改善しにくくなり、慢性的な咳や息苦しさが残ってしまうこともあります。
- Q3週間以上続くような長引く咳の場合、どんな検査をしますか?
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A
▲長引く咳には思いもよらぬ疾患が隠れていることも
検査内容は問診や聴診で、判断します。咳が出るきっかけや、朝や夜などの時間帯、咳が出るシチュエーションなどを詳しく問診します。逆流性食道炎や副鼻腔炎など、気管支や肺とは別の疾患の可能性もあるため、胸焼けや胃もたれ、鼻水や鼻詰まりといった症状も確認します。喘息の場合、聴診をすると息を吐ききる最後に喘鳴(ぜんめい)が聞こえることがあります。検査内容は必要に応じて、エックス線撮影や呼吸機能検査、呼気NO検査を実施します。また、喘息の原因はアレルギーである場合が多いため、血液検査でアレルギー素因を確認します。当院では、指先からの採血によるアレルゲン検査も可能で、注射が苦手なお子さんにも対応できます。
- Qこちらのクリニックで行う治療について教えてください。
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A
▲治療について話す浅野院長
治療の基本はステロイド・気管支拡張薬といった吸入薬です。吸入の際に用いる吸入デバイスにはさまざまな種類があり、デバイスごとに「ゆっくり吸うタイプ」と「勢い良く吸うタイプ」に分かれます。小児や高齢者の場合、器具を押す力が弱かったり、吸う力が弱かったりするとうまく使えないことがあるので、使う人や状況に応じて薬や吸入器具を使い分けます。まずは正しい吸入方法をマスターすることが大事。当院では、吸入薬を処方して終わりではなく、わかりやすく説明し、薬局とも連携しながら正しい使用法を伝え、時には補助器具なども使いながら吸入をサポートいたします。吸入薬によって病態の安定をめざすため、治療の継続は大切ですね。
- Q咳症状が治まっても治療の継続が必要なのですね。
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A
▲炎症の程度を確認しながら治療を継続していく
3週間未満の急性の咳であれば、咳止めを処方して様子を見てもいいと思いますが、喘息であれば気道にアレルギー性の炎症が残っていることがあります。そのため、症状が落ち着いている状態でも、治療を継続して炎症を抑え続けることが、将来の発作や悪化を防ぐために大切です。咳が治まると自己判断で治療を中止してしまう方もいますが、喘息は症状が良くなっても気管支の炎症がすぐに治まっているわけではありません。見えないところで気管支のアレルギー性の炎症が残っていることも多いため、1ヵ月おきに通院してアレルギー性の炎症の度合いを評価しながら、治療を継続していくかどうかを見極めていくことが肝心です。