浅野 貴光 院長の独自取材記事
【2025年10月開院予定】元八事ファミリー内科クリニック
(名古屋市天白区/八事駅)
最終更新日:2025/08/28

【2025年10月開院予定】※開院前の情報につき、掲載情報が変更になる場合があります。
商業施設や大学が立ち並ぶ八事から南へ続く県道220号線沿い、天白区池見の住宅地に2025年10月、「元八事ファミリー内科クリニック」が開業する。院長の浅野貴光先生は呼吸器内科を専門としつつ、大学病院や総合内科クリニックで内科全般や小児科を含む幅広い診療経験を積んできた。「昔からなんでも診てくれる『町のお医者さん』に憧れがありました」と話す浅野院長の口調はゆったりとしており、取材する側の緊張も自然とほぐれる。「かかりつけ医として、患者さんに寄り添い、地域に寄り添うクリニックでありたい。『ますは相談してみよう』と思っていただけるクリニックに」と語る浅野院長。患者への思いや今後の抱負について語ってもらった。
(取材日2025年8月5日)
「まず相談しよう」と思ってもらえるクリニックに
開業の経緯について教えてください。
医師になった頃から、地域の皆さんに寄り添う「かかりつけ医」として地域を支えていきたいという思いを抱いていました。風邪をひいたり体調を崩したときに、すぐに診てくれる“町のお医者さん”に昔から憧れていたのだと思います。高校生の頃、人の健康に関わる仕事に携わっていきたいと考え、医師を志しました。大学卒業後は天白区の名古屋記念病院で初期研修を行い、その後、東部医療センター、名古屋市立大学病院、総合内科クリニックなどで幅広い診療経験を積みました。この地を開業場所に選んだのは、研鑽を重ねた名古屋記念病院と同じ区内というご縁に加え、自宅から通いやすくより自分にとって、身近な地域に貢献していきたいと考えたからです。
この辺りはどのような地域でしょうか?
当院の周辺には、昔から住んでおられる方も多く、暮らしやすい地域だと思います。買い物ができる商業施設や飲食店があり、保育園や小中学校、さらにもう少し北の八事のほうに行くと大学もあります。小さなお子さんから若い世代、中高年、そしてご高齢の方まで幅広い世代が暮らしています。このような地域の中で、どなたにとっても「まず行ってみよう」と思っていただけるクリニックでありたいと考えています。
「ファミリー」というクリニック名も、その思いからでしょうか?
はい。親しみやすく、家族みんなで通いやすい“町のお医者さん”のイメージに合うと思い、この名前にしました。ロゴはオレンジ、水色、ライトグリーンの3色を使い、丸や三角などの形を組み合わせています。さまざまな地域や年代、個性を持つ方々、そして「どの科に行けば良いのかわからない」と迷われるような症状の方にも、まずは気軽にご相談いただきたい――そんな思いを込めました。また、「地域の皆さまがいつまでも笑顔で健やかに過ごせますように」という願いを込め、周囲をカラフルなドット模様で彩り、治療を通じて明るく元気を取り戻していく姿もイメージしたロゴのデザインになっています。院内のデザインも、鮮やかな彩りや木目調を随所に取り入れ、スタイリッシュさよりも“落ち着ける温かさ”を大切にしています。
喘息やCOPDなど専門的な治療も可能
こちらでは内科全般を診てもらえるのですね。
はい。内科全般の診療に幅広く対応していますが、特に専門は呼吸器内科です。喘息や長引く咳、つまり慢性咳嗽(まんせいがいそう)の診療には、大学病院や大学院での経験を生かして取り組んでいます。喘息は子どもだけでなく、成人にも多く見られます。また、喫煙歴があり「痰がからむ」「坂道や長距離を歩くと息切れがする」といった症状がある場合は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の可能性もあります。気になる症状があれば、早めに受診していただきたいですね。当院では、エックス線撮影、呼吸機能検査、呼気NO検査、当日に結果がわかる血液検査、さらに睡眠時無呼吸症候群の検査も行うことが可能です。
長引く咳について教えてください。
咳の期間は、3週間以内を急性咳嗽、3~8週間を遷延性咳嗽、8週間以上を慢性咳嗽と定義します。数週間咳が続くと「なかなか治らない」と感じることが多いと思います。急性咳嗽の多くは風邪など感染症が原因ですが、長引く場合には、別の疾患が隠れている可能性を考えていく必要があり、その診断には医師の経験や専門性が問われると思います。日本人で多いのは「咳喘息」と呼ばれるタイプです。私も名古屋市立大学病院在籍時にはさまざまな慢性咳嗽に関する臨床研究に携わり、その有病率の多さを確認してきました。咳喘息は通常の喘息と異なり、息苦しさや「ヒューヒュー・ゼイゼイ」といった喘鳴がなく、咳だけが唯一の症状です。ですが、たかが咳だけとはいえ、放置しておくと喘鳴や息苦しさを伴う気管支喘息に移行する恐れがあるので、早めの段階からしっかりと治療することが望まれます。
咳が長引く場合の診療はどのように進むのですか?
まずは問診と聴診から始めます。咳が出るきっかけや、朝や夜などの時間帯、咳が出るシチュエーションなどを詳しく伺います。逆流性食道炎が関係している場合や、副鼻腔炎が影響している場合もあるため、胸やけや胃もたれ、鼻水や鼻詰まりといった症状も確認します。聴診では、息を吐ききる最後に喘鳴が聞こえることがあるため、最後まで丁寧に聴くようにしています。その後、肺炎などを除外するためにエックス線撮影を行い、必要に応じて呼吸機能検査や呼気NO検査を実施します。また、喘息の原因はアレルギーである場合が多いため、血液検査でアレルギー素因を確認します。当院では、指先からの採血によるアレルゲン検査も可能で、注射が苦手なお子さんにも対応できます。ご自身のアレルギーを知り、生活改善に取り組むことも、喘息のコントロールを良くするためには大切なことだと感じています。
身近になって親しみやすく安心できる場に
喘息の治療について教えてください。
治療の中心は吸入ステロイド薬です。ただし、吸入薬には「ゆっくり吸うタイプ」「勢い良く吸うタイプ」などさまざまな種類があり、器具(デバイス)も多様です。5歳未満のお子さんの場合、吸入が難しいことがあったり、お年寄りの方は器具を押す力が弱かったり、吸う力が弱いことがあります。そのため、まずは正しい吸入方法をわかりやすく説明し、ご理解いただくことを重視しています。時には、補助器具などを使って吸入をサポートすることもあります。また、吸入薬に関しては処方して終わりではなく、薬局とも連携し、吸入指導までしっかり取り組んでいきたいと思います。
喘息の患者さんへのメッセージをいただければ。
咳が治まると自己判断で治療を中止してしまう方もいますが、喘息は症状が良くなっても気管支の炎症がすぐに治まっているわけではありません。見えないところで気管支のアレルギー性の炎症が残っていることも多いため、通院を継続してご自身の体調や気管支のアレルギー性の炎症の度合いを評価しながら、治療を継続していくかどうかを見極めていくことも、大切なことだと思います。小児喘息に関しては成長とともに寛解することもありますが、成人では完全に軽快することは難しいと言われています。それでも、気管支の炎症を適切にコントロールできれば、症状のない普通の状態を維持でき、運動も自由に楽しめます。実際に、アスリートの中にも喘息の方は少なくありません。私たちは、喘息について、正しい知識や情報をお伝えし、患者さんが豊かな人生を送れるようサポートしていきたいと考えています。
あらためて開業に向けての抱負をお聞かせください。
医師として、患者さんにどれだけ親身になれるかが一番大切だと思っています。お話を丁寧に聞き、安心して相談できる雰囲気をつくっていくことを一番に心がけたいです。病院勤務時代には、医師に直接伝えられず、窓口で言い残したことをお話しする患者さんを目にすることもありました。そのようなことのないよう、親しみやすい、安心して気軽に話せる場をつくっていきたいですね。幸い、こうした理念に共感してくれるスタッフが集まってくれました。皆で力を合わせ、地域の方が安心して通える、そして何か体の不調があった時に「まず相談してみよう」と思っていただけるクリニックをつくっていきたいと思います。また、私は訪問診療の経験も積んできましたので、地域の方で病院やクリニックに通えなくなった方のご自宅などにも訪問していきたいと考えています。長く患者さんに寄り添い、地域に寄り添い、かかりつけ医としての役割を果たしていきたいと思います。