久富 隆太郎 院長の独自取材記事
ひさとみこどもクリニック
(大阪市天王寺区/玉造駅)
最終更新日:2025/09/16

玉造駅から徒歩1分、医療ビルの6階に開業した「ひさとみこどもクリニック」。カメレオンのロゴが印象的な同院で、「保護者に優しいクリニックでありたい」という思いを胸に診療にあたる久富隆太郎院長は、日本小児科学会小児科専門医であり日本腎臓学会腎臓専門医。大阪市立総合医療センターの総合診療部門で幅広く診てきた経験と、腎臓内科の専門性を併せ持つ。「大きな病院に紹介される皆さんはとても不安を抱えている。もっと早い時点でお話しし安心を届けたい」との思いから開業。3人の子どもを持つ父親として子育ての大変さを実感し、母親はすごいと心から思うからこそ、保護者の負担を少しでも軽くしたいと考えている。子どもの個性を大切にする診療方針や、地域医療への思いについて話を聞いた。
(取材日2025年8月22日)
保護者の不安に寄り添う町の小児科医として
開業までの経緯を教えてください。

三次病院である大阪市立総合医療センターの小児総合診療部門で経験を積み、軽症から重症まで幅広く診療してきました。その中で、不安を抱えて病院に来られるお子さんや親御さんの姿を目にすることも多く、もっと早い段階でこれからのことをお話しできれば、より安心していただけるのではないか――そう感じるようになりました。ちょうどその頃、脇本産婦人科さんが建てた医療ビルで「小児科に来てほしい」と声をかけていただきました。これもご縁だと思い、これまでの経験を地域に還元したいと考えて開業を決意しました。
総合診療部門での経験は、今の診療にどう生きていますか?
総合診療部門は入り口の部門なので、いろんな患者さんと最初にお話しする機会が多かったですね。親御さんは、お子さんのことなのでわからないことも多く、不安になってしまうんですよね。そうした経験から、これは大丈夫とか、こういう時は注意が必要とか、最初の段階でしっかりお話しして安心していただくことの大切さを学びました。また、軽症から重症まで幅広く診てきたので、クリニックでどこまで診て、どこから大きな病院に紹介すべきかの判断、いわゆるトリアージもできます。大阪市立総合医療センターをはじめ、大阪医療センターや大阪赤十字病院、医学研究所北野病院とも連携していますので、必要に応じて適切にご紹介することも可能です。
なぜ小児科の医師を志したのですか?

子どもが好きなのはもちろんですが、小児科の先生というと、子どもの成長を見守りながら病気も診る、相談役のような存在をイメージしていたんです。未来ある子どもたちが健康で元気に過ごせるようにという想いから小児科の道を選びました。子どもの病気って、大人のように生活習慣や不摂生で起きるものではありません。先天性の病気の場合、その子が何かしたわけでもないのに、闘病しなければならないことがあります。毎日お薬を飲まなければならなかったり、周りの子がしていることができなかったり。そんな子どもたちを少しでも助けてあげたい、という想いが強かったですね。また、新米医師の頃に出会った腎臓内科の先生の影響で腎臓に興味を持ち、小児科の中でも腎臓を専門に研鑽を積んできました。
感染症からアレルギーまで小児疾患・症状を広くカバー
どのような患者さんが来院されていますか?

発熱や咳などの患者さんが多いですが、湿疹や腹痛、学校検尿異常などいろんな症状で受診される患者さんがおられます。また、お隣の脇本産婦人科さんでお生まれになったお子さんが、初めての予防接種で来られることもあります。基本的に当院ではなんでも診させていただいています。アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、喘息などの疾患にも対応していて、舌下免疫療法も行っています。小児科なので全身をトータルに診ながら舌下免疫療法もできる、というのがメリットですね。診療は高校生まで対応しており、付き添いの保護者さんも同じような症状であれば一緒に診ています。例えばインフルエンザにかかって家族全員が熱を出しているとき、子どもは小児科、大人は内科と分けて行くのは大変ですよね。そういう負担を少しでも減らしたいと思っています。
検査設備にはどのようなこだわりがありますか?
当院の強みの一つは、エコー検査がしっかりできることです。腎臓の形や大きさを確認できるので、腎臓専門医としても大切にしています。そのほかに、胸やおなかの写真が撮れるエックス線検査や、血液検査では微量採血と通常採血の両方が可能です。尿検査については特にこだわっていて、タンパク/クレアチニン比というより詳しい検査ができる試験紙を使っています。当院ではタンパク尿や血尿を調べるだけでなく、さらに細かいところまで確認できます。心電図もありますので、こうした設備をそろえることで「大きな病院に行かないと受けられない」と思われがちな検査を、できるだけ院内で完結できるようにしています。その分、患者さんやご家族の負担を少しでも減らせればと考えています。
腎臓専門医として、学校検尿の結果の精査からおねしょの相談まで幅広く対応されているそうですね。

小児腎臓を専門に診る医師は実は多くありません。大阪市立総合医療センターでは腎炎・腎症、慢性腎臓病などを専門的に診ていました。子どもの腎疾患は慢性腎臓病一つをとっても、大人では糖尿病性腎症から透析になる方が多いのですが、子どもは生まれつき腎臓が小さいとか形に異常があるといったケースが多く、大人とは原因がまったく違うんです。また、子どもでは毎年学校検尿が行われます。病気を早く見つけるために重症な検査ですが、広く検査している分、「本当に問題があるのかどうか」をしっかり見極めることが大切なんです。当院で尿検査やエコー検査をして必要な場合だけ紹介すれば、多くは当院で経過を見ることができます。おねしょの相談も多いのですが、腎臓の状態をエコーで確認できるので、原因を見極めた上で適切なアドバイスができます。そうやって、専門性を生かしながら地域のお子さんに寄り添った診療をしていきたいと考えています。
子どもの個性を大切に自由な成長を見守りたい
カメレオンのロゴマークに込めた思いを教えてください。

子どもたちには自由に成長してほしいと思っています。カメレオンっていろんな色に変われるでしょう。自分の色を見つけて個性を伸ばし、それぞれの場所で活躍できる子になってくれたらなと。実はロゴのアイデアは、恐竜と爬虫類が大好きな長男が出してくれました。ちょうど好きな絵本作家の本に、自分の色を探すカメレオンが出てくるんですけど、「カメレオンがいい!」って言われて、まさにクリニックの思いにぴったりだなと感じました。院内もカラフルにしていて、部屋ごとに壁紙の色や柄を変えています。子どもってそういうのをよく見てるんですよね。実は、受付カウンターの下にハリネズミの絵を忍ばしているんですが、大人はほとんど気づきません。でも、キッズスペースからはよく見えるんです。そのほかにも、ちょっとマニアックな動物もいたりして、子ども目線で楽しめる工夫をしています。
診療で大切にしていることは何ですか?
お母さんに優しいクリニックでありたいというのが一番です。うちも3人子どもがいて、妻が大半の育児を担ってくれています。やっぱりお父さんよりお母さんが大変なんですよね。子どもを連れて受診するって、仕事も休まないといけないし本当にすごいこと。だから来てくれるだけでありがたいと思っていますし、不安を受け止めてあげたいです。お子さんについては、診察室でも自由に、伸び伸びとしてもらっています。新米医師時代に先輩から言われた「医師にとって患者さんは何人かの患者さんのうちの一人だけど、患者さんにとって主治医はあなた一人しかいない」という言葉を大切にして、一人ひとり丁寧に接することを心がけています。
読者へのメッセージをお願いします。

お子さんのことで気になることがあれば、どうぞ気軽にいらしてください。総合診療で培った幅広い経験と、腎臓の専門性を生かして、いろんな患者さんを診ていきたいと思っています。どんなことでも遠慮なく相談してください。私自身も子育て中ですが、本当にすごいのはお母さんたちだと思っています。少しでもその負担を軽くできるような存在でありたいですね。東京で勤務していた頃、教授が「ご縁」という言葉を大切にしていて、とてもすてきだなと思い、それ以降自分も「ご縁」を大切にしています。ここに来てくださったのも一つのご縁。せっかくのご縁を大切にして、お子さんが元気に笑って過ごせるようお手伝いできればと思っています。