田窪 明仁 院長の独自取材記事
たくぼ整形外科リハビリテーションクリニック
(今治市/今治駅)
最終更新日:2025/09/08

2025年5月、今治市馬越町に開院した「たくぼ整形外科リハビリテーションクリニック」。院長の田窪明仁先生は、関東の急性期病院などで整形外科の医師として経験を積み、地元今治に貢献したいという思いから開業に踏みきった。診療では「切らずに治す」ことをモットーとし、症状に合わせて注射やリハビリテーションを駆使して、患者一人ひとりに寄り添った治療を実践している。特に注力しているのが、広く充実したリハビリ設備を生かした機能回復支援。肩や膝の慢性的な痛み、スポーツ障害などにも幅広く対応し、高齢者から学生まで多くの患者が通う。誰もが気軽に相談できる「地域のかかりつけ整形外科」として、日常の痛みに寄り添う診療を続けている。
(取材日2025年7月9日)
通いやすく、心もほぐれる整形外科へ
クリニックづくりで意識したのはどんなことでしょうか?

診療科の特性上、高齢の方や足腰に不安を抱える方が多いため、「安心して通えること」を第一に考えました。建物はバリアフリー設計で、車いすのままトイレや診察室へ入れるよう動線にも配慮しています。外観は白と黒のシンプルなデザイン、内装は木のぬくもりを生かして、やわらかく落ち着いた雰囲気に仕上げました。天井も高く、開放感のあるリハビリスペースを確保し、圧迫感のない環境でトレーニングや施術を受けていただけます。壁や床の素材にもこだわり、清潔感と温かみの両立を意識しました。ロゴマークは「T」と「A」を組み合わせたシンボルで、あえて医療的要素よりも「印象に残る格好良さ」を意識しました。整形外科というと堅いイメージがあるかもしれませんが、少しでも親しみやすく、通うのが楽しみになるような場所になればと願っています。どの年代の方にも「ここなら大丈夫」と思っていただけるような空間をめざしました。
どんな方に来てもらいたいと考えていますか?
「手術はしたくないけれど、どこか痛い」「病院に行くほどではないかも」と迷っている方に、ぜひ気軽に来ていただきたいですね。整形外科は、ケガや骨折のような急性疾患だけでなく、肩凝りや膝痛、加齢による関節の違和感といった慢性的な悩みにも幅広く対応できます。実際、パソコン作業による肩の凝りや、スポーツ後の違和感などで来院される40〜50代の方も多くいらっしゃいます。診察の上で「異常なし」であれば、それも大きな安心材料になるはずです。診療において大切なのは、悪くなる前に手を打つこと。少しでも気になる痛みや違和感があるなら、一度立ち寄ってみてほしいと思います。
地域で果たしたい役割について教えてください。

今治市内は高齢化が進んでおり、整形外科・リハビリのニーズは年々高まっています。そんな中で、当院がめざすのは「地域の整形外科の玄関口」のような存在。専門性が求められる治療や手術が必要なケースでは、適切な医療機関へご紹介できますし、逆に「そこまでではないけれど、困っている」患者さんには、通いやすい距離感でリハビリや注射などの治療を提供できます。どこに相談すればいいかわからないような段階でも構いません。どんな方にも門戸を開いて、地域にとって頼れる存在でありたいと思っています。また、高齢の方だけでなく、学生さんや働き盛りの世代にも整形外科の役割をもっと身近に感じてもらいたいです。日常の些細な不調も含めて、体のことを気軽に相談できる場所として、地域の健康を支えていけたらと考えています。
「切らずに治す」ための選択肢を、丁寧に届けたい
整形外科の医師をめざしたきっかけを教えてください。

両親は医師ではなかったのですが、親戚に医療関係者が多く、自然と医師という職業に興味を持つようになりました。整形外科を選んだのは、学生時代からスポーツに親しんでいたことが大きいですね。大学でも野球をしていて、肩を壊した経験もありました。自分の体と向き合う中で、整形外科の領域の奥深さや面白さを実感したのです。その後は東京の大学病院や急性期病院で多くの症例を経験し、手術だけに頼らないアプローチの大切さを学びました。ケガや障害があっても、きちんと向き合えば日常生活を取り戻すことも望める……そうした整形外科の前向きな側面にも惹かれています。だからこそ、今は「切らずに治す」ための整形外科医療に力を入れています。地域の皆さんが少しでも快適に過ごせるよう、これからも知識と経験を生かして支えていきたいと思っています。
「切らずに治す」とは、どのようなことを目的とした治療ですか?
当院では、痛みの原因をしっかり見極めた上で、リハビリや注射を中心とした保存療法を行っています。代表的なものは、筋膜リリース注射や関節注射などですね。さらに注目しているのが、PRPと呼ばれる多血小板血漿を用いた治療です。これは、患者さんご自身の血液の中にある成分が、これからの医療に応用できないかと研究が進められている分野です。先進の研究やその発表にも常にアンテナを張って、患者さん一人ひとりに丁寧な診察を行い、日々得た知見を生かして治療法を提案していきたいです。
手術が必要な場合の対応はどうしていますか?

もちろん、すべての症状が保存療法だけで改善が見込めるわけではありません。手術が必要と判断された場合には、連携先の愛媛県立今治病院や、済生会今治病院、愛媛大学医学部附属病院など、適切な医療機関へご紹介しています。私は以前、県立今治病院にも勤務しており、紹介もスムーズに行えます。「紹介されたら大きな病院に行くだけ」と思われるかもしれませんが、その前段階で不安や疑問を整理する橋渡し役として、当院をご利用いただければと思います。患者さんの思いに寄り添いながら、最善の道を一緒に探していくのが私たちの役割です。
日常の痛みにこそ、早めのケアを
受診の目安となるサインはありますか?

「どの程度の痛みで受診していいのかわからない」という声はよく聞きます。実は、少し気になるくらいの段階こそ大切なんです。例えば、肩が上がらない、膝に違和感がある、最近よくつまずくようになった……。そんな小さな変化が、初期のサインかもしれません。放置すると慢性化したり、治療に時間がかかることもあるため、早めの受診が予防にもつながります。痛みの程度に関係なく、「何か変だな」と思ったら、まずは気軽に相談してみてください。
診療で大切にしていることを教えてください。
患者さんの生活背景を踏まえて、「どうすれば少しでも楽になるか」を一緒に考えることを大事にしています。単に症状を治すだけでなく、その方が日常を快適に過ごせるかどうかを重視しています。注射やリハビリに加えて、サポーターや足底板などの装具を活用することもあります。手術を選ばずに済む道を模索するには、時間と対話が必要です。だからこそ、患者さんとしっかり向き合い、「こうすれば良くなるよう導けるかもしれない」と希望を持てる診療をめざしています。
最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

体の痛みは、我慢すればするほど生活に支障が出てきます。特に肩凝りや五十肩、膝痛は、改善の実感が望めるケースも多く、生活の質の向上をめざした取り組みとして注力しています。生活の質を上げるためにも、気になる症状があれば早めに対処しておくことが大切です。当院は駐車場も広く、車いすを利用される患者さんも快適に来院いただけるような設計です。高齢の方も、ケガをした若い方も、どんな方でも歓迎です。「ここなら相談できそう」と思っていただけるよう、スタッフ一同で温かくお迎えしています。些細な違和感でも構いませんので、まずはお気軽にご相談ください。診察の結果、治療が不要であればそれも安心材料になりますし、何かしらの対策が必要であれば一緒に考えていくことができます。今後も、患者さんの声に耳を傾けながら、より良い医療を提供し続けられるよう努めてまいります。気軽に頼れる地域の整形外科として続けていきたいと思います。