伊東 孝浩 院長の独自取材記事
たかひろ整形外科
(菊池郡菊陽町/原水駅)
最終更新日:2025/10/01

菊陽町津久礼の菊陽バイパス沿いに位置し、赤色の看板と院長のイラストが目印となっている「たかひろ整形外科」。2025年5月に開業した院内は、広々としたリハビリテーション室があり、大きな窓から光がよく入り温かみのある空間だ。伊東孝浩院長は、日本整形外科学会整形外科専門医であり、股関節と膝関節の変性疾患治療など数多くの手術経験を持つ。「一人ひとりの目を見て話を聞き、しっかりと寄り添いたい」と真剣なまなざしで語る伊東院長に、診療についての思いや、今後の展望などについて話を聞いた。
(取材日2025年8月6日)
広々としたリハビリテーション室や先進機器を備え開業
これまでのご経歴を教えてください。

佐賀大学を卒業後、地元である熊本赤十字病院で初期研修を受けました。その後は九州大学整形外科学教室に所属し、関連の病院で数多くの手術を執刀してきました。股関節と膝関節の変性疾患を中心に、外傷をはじめとした幅広い整形外科領域に対応し、実践的な経験を積み上げてきました。特に佐世保共済病院では約8年間にわたり勤務し、手術を中心とした診療に力を注ぎました。ここで培った技術や知見は、私の医師としての礎になっています。それだけでなく、今でも「旅行のついでに」と言いながらも、当時の患者さんが来院してくださることがあります。このような信頼関係を築くことができたのも、医師としての大きな経験でした。そして2025年5月に当院を開業し、現在に至ります。
開業するにあたり、院内設備でこだわったポイントはどこですか?
こだわりは大きく2つあります。まずはリハビリ室を広くしたことです。整形外科というと薬や注射、手術が中心というイメージがあるかもしれませんが、私自身の経験から一番大切なのは「動くこと」だと強く感じています。リハビリを通して運動の大切さを実感し、予防の観点からも体を動かす習慣を持っていただくことが重要だと考えています。そのために広々としたリハビリ室を設け、患者さんが安心して運動に取り組める環境を整えました。もう1つは動線設計です。診察から処置までスムーズに移動でき、スタッフ同士もぶつからず効率良く連携できるよう工夫しました。受付や看護師とのやりとりも含め、院内全体がつながるよう意識して設計しています。さらに窓を大きく取り、自然光を感じられる開放感のある空間にしたことで、患者さんに少しでもリラックスして過ごしていただけるようにしました。
機器も先進の物を導入されているそうですね。

少しでも患者さんの負担を減らすことができたらという思いから、機器は新型の物を導入しています。例えば、骨や筋肉の付着部に起こる慢性的な炎症や痛みの治療ができる機器です。薬や注射だけでは改善しにくい症状に対して特殊な刺激を与えることで組織の活性化を図り、血流を促しながら自然な治癒を助ける仕組みです。これにより、長引く腱や関節周りの痛みの軽減が期待できます。エックス線検査も被ばく量が少なく、スムーズに撮影できる物を導入しています。骨粗しょう症対策として先進の骨密度測定装置も導入しました。従来は複数部位の撮影をする場合は移動が必要でしたが、現在は短時間で負担なく全身を測定できます。高齢化が進む中で骨折は健康寿命を大きく縮める要因となり、特に大腿骨の骨折は生活の質を著しく下げることがわかっています。そのため積極的に骨密度検査を受けてもらい、骨折予防や寝たきり防止につなげたいと考えています。
骨粗しょう症やスポーツによるけがまで幅広く対応
特に力を入れている診療は何ですか?

骨粗しょう症の診療です。骨粗しょう症自体は、痛みなどの自覚症状が乏しいため、つい見過ごされがちですが、骨折をきっかけに生活が一変してしまう方を手術の現場で数多く見てきました。元気に動けていた方が骨折を機に歩けなくなり、生活の質が大きく低下するケースは少なくありません。その恐ろしさを知っているからこそ、早期発見と予防が何より大切だと考えています。特に女性は閉経を迎えたら年に1回の骨密度検査を強くお勧めします。男性でも、体重や歩行能力の低下を感じた時点で検査を受けていただきたいです。身長が若い頃より縮んできた、慢性的な腰痛があるといったサインも受診のきっかけになります。こうした小さな変化を見逃さず、骨折予防につなげていきたいです。
スポーツをされている方の治療も得意分野だと伺いました。
私自身も運動経験があるため、選手や部活動に取り組む方の気持ちが理解できます。また、スタッフには運動やトレーニングに詳しい者がおり、部活でのサポートやスポーツ障害の予防、リハビリ方法などを専門的に担当してもらっています。手術が必要な場合でも、本人の目標や大会のスケジュールに合わせ、適切な対応を検討します。特に高校生や競技を続けたい方の希望に寄り添い、一人ひとりの状況に合った治療やサポートを提供することを大切にしているので、不安なことがあればいつでも相談してください。
院内ではスキルアップ活動が盛んだそうですね。

医療は常に進歩していくため、学び続ける姿勢を大切にしています。私自身もウェブセミナーや現地での勉強会に参加し、骨粗しょう症や超音波診断など幅広い分野の知識を深めています。院内でも月に2回ほどランチミーティングを開き、スタッフ同士で情報を共有しています。理学療法士からリハビリ機器の活用や注意点を学んだり、私からは整形外科の疾患や注射、薬の特徴について解説したりと、互いに学び合う場になっています。また医療知識だけでなく、診療の効率化や患者さんにとってより良い対応方法についても多職種で意見交換を行い、議事録に残して改善につなげています。職種に関わらず全員が最低限の知識を持ち、患者さんがどのスタッフに尋ねても安心して答えられる体制をつくることが目標です。知識を共有し合うことで、スタッフ全員が同じ方向を向き、患者さんに質の高い医療を提供できるよう努めています。
患者の目を見て、一人ひとりとしっかり向き合う
医師をめざしたきっかけを教えてください。

私は子どもの頃、無顆粒球症という白血球の一種である好中球がゼロになってしまう病気を患い、小学校に上がる頃まで大学病院で入退院を繰り返していました。幸い今は完治していますが、当時は病院が生活の一部のように身近な存在でした。幼いながらに医療に助けられているという感覚があり、病院で過ごす時間を通して自然と「将来は医師になりたい」という思いを抱くようになったのだと思います。成長するにつれてその気持ちはより強くなり、自分も誰かを支えられる立場になりたいと考えるようになり、医師になる道を選びました。
診療時に心がけていることは何ですか?
診察の場で最も大切にしているのは、患者さんとしっかり向き合い、安心して話していただける空気をつくることです。そのためカルテ入力はスタッフに任せ、私はできるだけパソコンを触らずに患者さんと目を合わせて会話するようにしています。医師がきちんと目を見て話を聞いてくれるだけで、患者さんは「自分を理解してもらえている」と感じ、安心につながると考えているからです。また、カルテ入力に時間を取られない分、実際に患部に触れたり動きを確認したりと、診察そのものにしっかり時間をかけられるようにしています。さらに、検査結果や診断については模型やパンフレットを用い、できる限り視覚的にわかりやすく説明することを心がけています。その上で「あなたにはこの治療です」と一方的に押しつけるのではなく、「こういう選択肢がありますが、どうされますか?」と対話を重ね、患者さんと一緒に治療法を決めていくことを大切にしています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。

患者さんから「膝が痛いから運動しないほうがいいですよね」といった言葉をよく耳にします。しかし、私は痛みを理由にやりたいことを諦めるのではなく「また走れるようになりたい」「孫と散歩したい」といった一人ひとりの思いをかなえることが大切だと考えています。そのために薬や注射といった治療だけでなく、リハビリを通じて本来の生活や活動に戻れるよう全力でサポートしていきたいです。特に、広いスペースを確保したリハビリ室は今後さらに充実させたい部分。一般的なリハビリだけでなく、スポーツに関する診療にも力を入れ、競技を続けたい方や、けがから復帰をめざす方の力になれる環境を整えていきたいと考えています。痛みを取るだけでなく、その先にある「やりたいこと」を支えるクリニックであり続けたいです。