津野 嘉伸 院長の独自取材記事
つのベビーキッズクリニック
(堺市北区/三国ヶ丘駅)
最終更新日:2025/09/17

三国ケ丘駅から徒歩5分、交通の要衝に位置する「つのベビーキッズクリニック」。モズの親子をモチーフにしたロゴが印象的な同院で、津野嘉伸院長が穏やかな笑顔で迎えてくれた。医学博士、日本小児科学会小児科専門医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医の資格を持ち、NICU(新生児集中治療室)で400グラム台の超低出生体重児から多様な疾患を抱える子どもたちまで、数多くの命を支えてきた。「総合病院では治療を終えたら、その後のつながりが途切れてしまうことが多い。子どもたちの成長をずっと見守れる場所をつくりたかった」と、開業を決意。4歳と10歳の娘を持つ父親としての視点も交えながら、新生児医療への使命感と地域に根差した小児医療にかける思いを語ってもらった。
(取材日2025年8月21日)
子どもたちの成長を長く見守りたい思いから開業へ
NICUでの充実した日々を経て開業を決意した経緯を教えてください。

NICUでは30週未満、1000グラム未満といった超早産児の赤ちゃんたちを診療してました。診療の傍ら、発表や論文執筆など第一線で活躍できる充実した日々を過ごしました。また、2つの総合病院の小児科部長として勤務しましたが、外来業務に追われる日々の中で、親御さんとゆっくりお話できる時間が限られ、子どもたちを診られるのも朝と夕の回診時だけという状況でした。さらに、総合病院では入院治療が終われば、その後つながりが途切れてしまうことも少なくありません。そうした経験から、子どもたちの成長を長く見守り、親御さんともじっくり向き合える場所をつくりたいと強く思うようになりました。2024年で大学卒業から20年という節目を迎えたこともあり、地域に根差し、子どもたちとご家族に寄り添える場を提供したいという思いから、開業を決意しました。
新生児医療を志したきっかけは?
卒後4年目、NICU配属時に担当していた900グラムぐらいの赤ちゃんが亡くなってしまいました。もしあの時、もう少ししっかり検査をしていたら、適切な治療ができていたら助けられたかもしれない……そうした後悔の気持ちがありました。その時の親御さんの表情は今もはっきりと覚えています。つらい経験でしたが、私はそこで逃げるのではなく、もう一度NICUに戻る道を選びました。「二度と同じことを繰り返してはいけない」「悲しい思いをする親御さんを一人でも減らしたい」 その思いが原動力となって新生児科医をめざし、私の経験を後輩たちへの指導の中でも伝え続けてきました。
つのベビーキッズクリニックという名前に込めた思いは?

NICUで新生児集中治療に携わってきた経験から、どうしても「ベビー」という言葉を入れたいと思いました。生まれたばかりの赤ちゃんから元気なキッズまで、幅広く診察したい……そんな願いを込めました。ロゴに関しては、小児科らしく親子のモチーフにしたいと考え、住所が百舌鳥梅北町であることから、モズの親子と梅の花を組み合わせました。モズは小さくてもたくましく、賢く、親しみやすい存在で、私たちも地域の皆さまにとって、そんな存在でありたいと思っています。梅の花は、寒さの中でも美しく咲き、春の訪れを告げる花。子どもたちの健やかな成長を願い、優しさと希望の象徴として添えました。初めての育児で不安を抱える親御さんも、ベビーという名前を目にして少しでも安心し、気軽に来院していただければと思います。
専門性を生かした幅広い小児医療の実践
どのような診療に対応されていますか?

一般小児科として風邪やインフルエンザなど日常的な診療を行ってますが、総合病院で小児科部長を務めた経験もあり、幅広い症状に対応できるのが強みです。生後1ヵ月の赤ちゃんから10代まで幅広い年齢のお子さんに来院いただいてます。これまでには、心臓やおなかの手術を受けた赤ちゃん、先天的に病気を抱える赤ちゃんなど、多様な疾患の子どもたちに向き合ってきました。以前の病院では開業医の先生方から「津野先生にはオールマイティーに対応いただけて、本当に助かっています」とお言葉をいただくこともありました。その一方で、クリニックでできることと総合病院で行うべきことは役割が違います。だからこそ、普段は身近で安心できる診療を行い、必要時はしっかりと総合病院へとつなぐことで、患者さまにとって一番安心安全な医療につながると考えています。
低出生体重児やダウン症のお子さんの診療について教えてください。
NICUで培った経験を生かし、未熟児の発達フォローや定期的な経過観察にも対応します。本来は総合病院で診ることが多い領域ですが、遠方で通院が難しい場合など、地域のニーズに応じ診療を行います。新生児医療に携わる傍ら、約10年間にわたりダウン症外来も担当しました。ダウン症のお子さんの診察では、発達の状況だけでなく、学校などの集団生活や日常生活に困り事がないか、楽しく過ごせているかを必ず確認し、さらに循環器や甲状腺をはじめとした合併症にも注意を払いながら、親御さんが悩みや疲れを抱えていないかといった点も含め診察します。子どもたちの成長だけでなく、そのご家族を含めた周囲の方々のサポートにも心を配り、寄り添う診療を大切にしています。
診療で心がけていることは?

小さな子どもは言葉で訴えられません。大学病院のNICUでは、急変する赤ちゃんが多く、些細な変化に気づき、迅速かつ的確に対応する能力が求められました。そこで培った経験や判断力は、現在の小児科診療にも大きく生かしており、「この子、いつもと様子が違っていないか?」を常に考えています。また、子どもの病気が治るお手伝いをするというイメージを持っています。子どもの病気は基本的に子どもたち自身の力で治していく面が大きく、私たち小児科医はお薬や処置をして補助する役割だと考えています。診療では「焦らずゆっくり、一人一人丁寧に」を心がけ、ただ薬を処方するだけでなく、親御さんが安心できるように、どのように良くなっていくか治療の見通しを立てて説明するようにしています。
ワンチームで支える地域のかかりつけ医
育児相談にも力を入れているそうですね。

私自身、4歳と10歳の姉妹を子育て中で、妻と祖母のサポートを受け試行錯誤している毎日です。姉妹は性格が正反対で、育児の大変さを身を持って感じています。当院のスタッフも子育て中の方が多いため、同じような悩みに共感できることも多いかと思います。些細なことでも、どうぞ気軽にご相談いただければと思います。私たちも同じ立場の親として、何かアドバイスできることがあるのではないかと考えています。また、当院には管理栄養士の資格を持つスタッフも在籍しています。離乳食の進め方や偏食等に関するご相談なども承っておりますので、安心してお声がけください。
スタッフとの連携について教えてください。
事務、看護師ともに、明るくて子どもが好き、真面目に仕事に向き合うスタッフばかりです。保護者の方の中に自然に入り込み、壁をつくらずに会話をする姿はとても頼もしく、私が診察している間も、待合室で保護者の方の声に耳を傾けてくれるのは本当にありがたいことです。「ワンチーム」という考えを大切にしているため、事務と看護師のユニフォームを同じデザインにしています。職種の隔たりなく、全員が一つのチームとして協力し合える体制を整えました。定期的なミーティングでは、四季を感じるように院内の装飾を考えたり、プレパレーション(子どもが治療に安心して臨めるよう事前に理解を促す工夫)を意識し、絵カードや絵本を導入しています。主に看護師の取り組みですが、子どもたちが安心して治療を受けられるようにする大切な工夫であり、スタッフ全員で治療を支えているという意識を共有しています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

まず一般小児科の診療をしっかりと行うことを基本にしつつ、早産・低出生体重児や、ダウン症のお子さんなど、定期的な診療を必要とされる方にも、地域のニーズに応じて対応していきたいと考えています。小学生になると体も強くなり、風邪を引く回数も減ってきますが、来院された際に「こんなに大きくなったんだね」「下の子が生まれたんだね」といった声かけを通して、お子さんだけでなく家族全体を見守るような存在でありたいと思っています。また、些細なことや、ちょっとした育児の悩みも、気軽にご相談ください。焦らずゆっくり、皆さまと「ワンチーム」で地域医療に貢献していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。