眞川 昌大 院長の独自取材記事
あかり在宅クリニック
(宮崎市/日向住吉駅)
最終更新日:2025/10/15
宮崎市中心部から車で北へ約10分、新名爪にある「あかり在宅クリニック」。国道219号沿いの住宅街に位置し、院名に「温かなあかりのように患者さんの心と地域を照らしたい」との思いが込められた同院は在宅医療を専門に診療を行っている。院長の眞川(さながわ)昌大先生は、宮崎大学医学部を卒業後、4つの病院で消化器内科・腎臓内科・透析治療に携わり、その後は在宅医療クリニックで経験を重ねた。2025年に訪問診療を担う医療機関が少ない地域にて開業。これまでの幅広い診療経験と在宅医療で培った知識・技術を生かし、患者一人ひとりに最適な医療を提供することを心がけている。「住み慣れた家で家族とともに自分らしく安心して暮らせるように患者さんに寄り添い伴走したい」と語る眞川院長に在宅医療にかける想いを詳しく聞いた。
(取材日2025年8月30日)
自宅で安心して自分らしく生活できる医療を提供したい
開業までの経緯を教えてください。

私は三重県出身ですが、宮崎大学医学部に進学したことをきっかけに、この地の温かな人柄や地域性に魅了され、「ここで一生働きたい」と思うようになりました。卒業後は、宮崎生協病院や千葉県の亀田総合病院で消化器内科を中心に研鑽を積み、その後、透析室立ち上げの責任を担うために鹿児島生協病院で腎臓内科を学びました。再び宮崎生協病院に戻ってからは、血液透析室の立ち上げに携わり、多くの患者さんと向き合ってきました。その後、学生時代から志していた在宅医療に取り組むため、恩師である清山知憲先生が開設された「ひなた在宅クリニック」にて、2023年より本格的に訪問診療を開始しました。そして2025年、地域に根差した医療をさらに広げたいとの思いから、自ら開業いたしました。
なぜ在宅医療専門のクリニックにされたのでしょう?
大学時代に在宅医療の現場を見学した際、「病院ではなく自宅で過ごす患者さんを支える医療」に強く心を打たれたことがきっかけです。実際に患者さんのお宅を訪ねると、ご本人やご家族がとても喜ばれ、感謝の言葉をいただくことも多く、ただ病気を診るだけでなく、その人の暮らしに寄り添いながら伴走できる医療だと感じました。さらに、西都市出身の妻の祖母が訪問診療を希望したものの医師が見つからず、最期を病院で迎えざるを得なかった経験も大きな転機となりました。外来診療をしていると、どうしても「今すぐ診てほしい」という患者さんのもとにすぐ駆けつけることが難しい場合がありますが、在宅医療専門であればそれが可能です。そうした医療を自分の判断で柔軟に実現したいと思いました。
クリニック名に込められた思いについて教えてください。

在宅で療養されている患者さんは、病気や障害を抱えながら日々不安を感じて生活していることも少なくありません。そうした方々の心に「灯りをともしたい」という思いを込めて、当院を「あかり在宅クリニック」と名づけました。宮崎市の北部や西都市では、まだ訪問診療が十分に行き届いていないと感じ、この地域を拠点に選びました。開院して間もなく、中心市街から北部エリアの高齢の方を中心に、腎不全・腹膜透析、末期がん、神経難病など、さまざまな疾患を抱える患者さんを幅広く診療しています。これまでに培ってきた総合的な経験と知識を生かし、病気があっても自宅で安心して過ごせるよう、きめ細かなサポートを提供しています。そして、「どんな患者さんでも紹介していただけるクリニック」であり続けることをめざしています。
病気だけではなく「人」を診る診療を重視
診療方針を教えてください。

病院では主に、病気を見つけて治療することが重視されます。一方、在宅医療ではそれだけでなく、患者さんやご家族の生活を支えることも大切な役割です。当院では「病気」だけでなく、「人」を診ることを大切にしています。例えば、生活の中で不自由を感じる場面を見つけ出し、「生活の延長にある医療」を意識しながら、患者さんやご家族の思いを尊重した診療を心がけています。そのためには、地域のケアマネジャーさんを中心に、訪問看護・介護や福祉用具の手配など、多職種との連携が欠かせません。当院のスタッフがこういった多職種の連携を調整してくれるので、本当に心強いです。
在宅医療の中でも腹膜透析に注力されているそうですね。
鹿児島生協病院で腹膜透析に出合い、患者さんが自分らしく生活する姿に感銘を受けて以来、私のライフワークとなりました。宮崎ではまだ普及が進んでいないことを知り、「この医療を宮崎に広めたい」と考えるようになりました。血液透析は通常、週3回の通院が必要で、移動まで含めると1回に半日程度を要しますが、腹膜透析は自宅で自分のペースで行えるのが大きな利点です。また、血液透析は最期まで継続することが難しく、中止すると体調が急速に悪化する場合があります。それに対し、腹膜透析は亡くなるその日まで継続可能であり、苦痛を少なく、ご家族とともに穏やかな最期を迎えられる可能性があります。当院では、主に県立宮崎病院の腎臓内科と連携し、在宅医療が必要な患者さんの腹膜透析に取り組んでいます。在宅医療との相性も良く、今後も力を入れていきたいと考えています。
在宅医療に特化することの強みはどんなところにあるのでしょうか?

強みは2つあると考えています。1つは、外来と訪問の両方ともに多くの時間を取る場合と比べ、在宅医療に特化することで時間の調整がしやすく、緊急時にも迅速に患者さんのもとへ駆けつけられることです。もう1つは、在宅医療では多職種との連携が欠かせないため、その調整に熟練したスタッフがそろっていることです。これにより、患者さんに必要なサポートを円滑に提供できます。
関わる人すべてが幸せになるクリニックをめざす
眞川院長はなぜ医師をめざされたのですか?

家族が難病で入院を繰り返す姿を見ていたことから、もともと医療に強い関心を持っていました。しかし当時は医師をめざせる学力や自信がなく、一度は別の大学に進学しました。ところが今度は自分自身が病気で入院することになり、そのとき、熱心に耳を傾け、親身に診てくださる医師と出会いました。患者に寄り添うその姿勢に深く心を打たれ、「医師は人生をかけて取り組める仕事だ」と感じました。一度死を覚悟した経験から恐れるものがなくなり、「やりたいことをやらなければ生きている意味はない」という思いで医学部を再受験し、医師になることができました。
これまでに印象深い患者さんや恩師はいらっしゃいましたか?
今から15年以上前、研修医1年目のときに担当した患者さんから、開業時にお祝いの手紙をいただきました。ホームページで当院のことを知ったそうですが、覚えていてくださったことにたいへん感動しました。その手紙を通じて「初心を忘れず、一人ひとりを大切にしよう」と改めて心に刻みました。患者さんからの言葉だけでなく、学生時代にお世話になった在宅医療の先生方からの温かい応援も、私の大きな原動力になっています。また、私自身が入院していたときに、病室に足を運んで話を聞いてくださった先生のことも今も強く印象に残っています。その先生の姿に憧れ、「自分もあの先生のようになりたい」と思い、研修医時代から患者さんの声に耳を傾けることを意識してきました。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

患者さんやご家族だけでなく、スタッフも幸せに働ける環境をめざし、「心に余裕のある体制づくり」を心がけています。その上で、より丁寧で優しい医療を提供していきたいと考えています。また、患者さんに関わる医療・介護職の皆さんにも、気持ち良く連携していただけるクリニックでありたいと思っています。どんな病気や障害があっても、自宅で安心して暮らすことは可能です。あかり在宅クリニックは、その実現を全力でサポートします。当院は土・日曜と祝日を休診日としていますが、かかりつけの患者さんの病状が急変した場合には、24時間365日対応いたします。地域でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

