松井 潤 院長の独自取材記事
まつい赤ちゃんキッズクリニック
(大和郡山市/九条駅)
最終更新日:2026/01/19
近鉄橿原線・九条駅から徒歩1分に位置する「まつい赤ちゃんキッズクリニック」。奈良県出身の松井潤院長は、小児神経科を専門に新生児集中治療室(NICU)での診療や、医療的ケア児の訪問診療に従事してきたドクター。大和郡山病院で6年間、地域の子どもたちに関わってきた経験を生かし、気軽に相談できるクリニックをめざし開業。新生児から18歳まで診療し、専門分野である小児神経や小児アレルギーなど幅広い疾患に対応している。院内は広々とした空間で、感染症と非感染症で待合を分けた「もりのへや」「そらのへや」や、病児保育室、広いフリーホールなど、子どもも保護者も安心して過ごせる工夫を随所に施している。「困ったときだけでなく、子育て全般を支える場所」にしたいと語る松井院長に新しい小児科のかたちや開業の思いを聞いた。
(取材日2025年8月29日)
新生児から成人まで気軽に相談できる場を開く
この地で開業された経緯を教えてください。

私は奈良県の出身であり、開業する前は大和郡山病院に勤めていました。6年ほど勤務する中で、多くの子どもたちやご家族と関わることができたのですが、その経験からもっと気軽に相談できるクリニックとして地域に寄り添ってみたいという思いにつながりました。風邪や発熱などの具体的な症状だけでなく、発達や心の問題など子育てにおける日常の困り事を相談したいというご家庭が多くあると感じたからです。そうした声に応えられる地域に根差したクリニックが必要だと強く感じ、開業を決めました。アクセスの良さや広いスペースを備えた環境を整えることで、安心して通っていただける場になると考え、この場所にクリニックを開きました。
クリニック名に「赤ちゃん」と入っているのが印象的です。
小児科といっても、新生児や赤ちゃんを診ないところも少なくありません。私は新生児集中治療室(NICU)での診療経験があり、低出生体重児や発達に特徴のあるお子さんも多く診てきました。だからこそ「赤ちゃんから診られる小児科」であることをはっきり伝えたくて、あえてクリニック名に「赤ちゃん」と入れました。後に続くキッズという言葉と合わせて、ベビーと迷ったのですが、横文字が続くよりも、赤ちゃんという親しみやすい口語の温かさや安心感がこのクリニックの理念に近いと感じています。
開業にあたって、どのようなクリニックをめざされたのでしょう。

「人によりそい安心できるクリニック」を理念に掲げました。子どもはもちろん、保護者の方が「相談して良かった」と思えることを大切にしています。小児科クリニックは今や風邪だけを診れば良い時代ではなく、単に「病気を診る場」から、子育てを支える場へと変わりつつあると考えています。その思いをかたちにするため、2階には病児保育室「にこるーむ」を設け、保育士が常駐しています。また助産師を含むスタッフとも連携し、子どもの体調や発達、新生児と接する上での悩みなど幅広い相談に応えられる体制を整えました。現在は10人ほどのスタッフとともに、患者さんのためになることはなんでも取り組む姿勢を大切にしています。私たちは「人によりそい安心できる」という理念を軸に、地域に開かれたクリニックをめざしています。
院内の工夫についてお聞かせください。
入り口を感染症と非感染症を区別していますが、「もりのへや」「そらのへや」と名づけ、感染症の待合室も隔離されている感じが出ないよう工夫しました。また、目線の流れにも配慮し、患者さん同士がお互いの視線が気にならないように配慮しています。待合室もただ待つ場所ではなく、子どもたちが自然に遊び出したくなるような広々とした開放的な空間を意識しました。実際に絵本を読んだり、おもちゃで遊んだりして、リラックスして過ごす子どもたちの姿が見られます。2階にはイベントホールを設け、将来的に子育て相談会や講座を開きたいと考えています。
病児保育から訪問診療にも対応する子育て支援
来院される患者さんは、どのような相談が多いですか?

風邪や発熱といった典型的な症状もありますが、実際には皮膚のトラブル、便秘、授乳の不安、夜眠らないなど、育児に関する悩みの相談がとても多く寄せられています。発達や学校生活に関わる相談も増えていて、自閉症や不登校、支援学級の選び方などもご家族と一緒に考えることがあります。医療の枠を超えて、子育て全般の伴走者になれるよう、助産師や保育士など多職種のスタッフと連携しながら取り組んでいます。
診療の特徴について教えてください。
私の専門である小児神経では、てんかんや発達の遅れ、寝たきりのお子さんのケアまで、幅広く診療しています。奈良県内では小児神経を専門にしている医師は非常に少ないため、遠方から通ってくださる方もいます。特にてんかんでは大人になっても症状が続く場合もあるので、そういった場合には成人している患者さんも診療をしています。寝たきりの状態など、医療的ケアが必要なお子さんには訪問診療の対応もしています。そういった場合にはきょうだい児のケアが行き届かない場合も多いので、併せて診療しています。
病児保育室「にこるーむ」についても教えてください。

病児保育室は市からの委託を受けて運営しており、お子さんの体調不良で保育園などに預けられず、保護者の方がやむを得ない事情で育児が困難な時にサポートをしています。安心してお仕事やご家庭の予定を続けてもらうため、また不調でつらい思いをしているお子さん自身を少しでも楽にしてあげるために、スタッフ全員で見守る体制を整えています。予約は前日13時から当日朝7時までインターネットで可能で、抽選制ではなく先着順としています。「当日まで行けるかどうかわからない」という保護者の不安を少しでも減らしたいと考えたからです。病児保育は単なる預かりではなく、スタッフがしっかり見守り、安心できる環境を整えることを大切にしています。
自身の経験を生かした寄り添う姿勢
先生が小児科医を志されたきっかけは何だったのでしょう。

実は私自身が低出生体重児として生まれており、子どもの頃は体が弱く、よく小児科に通っていました。その時の小児科の先生が与えてくれる安心感が大きく、診察してもらうだけで体調が良くなる気がしました。いつしか「自分もこんな先生になりたい」と思っていましたね。大学時代に小児神経に出会い、熱性けいれんなど救急で役立つ分野であることを知って専門を決めました。さらに寝たきりのお子さんなど、医療的ケアが必要な子どもたちを長く支えることができることにも大きな意義を感じました。
患者さんとの印象に残っているエピソードはありますか?
小児神経科では希少疾患を持つ患者さんも少なくありません。勤務医時代に、100万人に1人といわれる疾患の診断をつけたことがあり、その際にご家族から「やっと病名がわかって安心しました」と言っていただいたことは今でも強く印象に残っています。治療法がない病気もありますが、診断がつくことで将来の見通しを立てることもできますし、遺伝性かどうかを知っておくと、次のお子さんを授かる際の参考になったりもします。診療は病気を治すことだけが目的ではなく、ご家族の不安を少しでも軽くすることにも大きな意味があるのだと実感しています。また、小児科では血管が細く、点滴や採血が大変なこともありますが、私は慣れているので「こんなに楽に診てもらえたのは初めて」と言っていただいたことも。それも勤務医時代のうれしい思い出です。
今後の展望についてお聞かせください。

このクリニックを「困ったときだけ来る場所」ではなく、子育て全般を支える拠点にしていきたいと考えています。将来的には2階の広いイベントルームを活用し、助産師や保育士、薬剤師と連携して、おっぱいの飲ませ方、寝かせ方、薬の飲ませ方などを伝える子育て相談会なども行いたいですね。また、地域の幼稚園や保育園への巡回相談も視野に入れています。患者さんが「相談して良かった」と安心した顔を見せてくれることが、私にとって何よりの喜びです。

