平山 泰樹 院長の独自取材記事
御影こども形成外科
(神戸市東灘区/御影駅)
最終更新日:2025/09/09

阪急神戸本線の御影駅から徒歩2分、シンボルツリーのクスノキが目印の「御影こども形成外科」。平山泰樹(ひらやま・やすき)院長は、自身も口唇口蓋裂で幼少期から手術や通院を繰り返してきた経験を持つ。もともとは教育学部で学んでいたが、「自身の経験を生かして誰かの役に立てたら」と医学部に入り直し、形成外科の医師となった。そこには、高校生の時に亡くした母への思いも大きく関わっていたという。院名に「こども」とあるが、大人の形成外科診療にも対応する。同院が特に力を入れるのが赤ちゃんの頭の形に特化した診療と顕微鏡手術設備を生かした眼瞼下垂治療だ。一方で、複数のレーザー機器を用いたあざ治療なども行い、地域で専門的な治療を幅広く提供している。平山院長に、開院への思いや診療方針について詳しく聞いた。
(取材日2025年8月7日)
クリニック開院に至るまでの思い
開院までの経緯を教えてください。

結婚を機に東京から御影に引っ越しました。御影を選んだ理由は、北品川の御殿山の落ち着いた雰囲気にとても似ていたからなんです。そこで御影に家を建て、地域の子どもたちを長く診ていきたいという思いが強くなりました。自宅からほど近い場所にクリニックを構えることで、将来的には休日や時間外診療にも対応できる体制を整えていきたいと考えました。長年大人の形成外科治療に携わってきた経験があり、その技術を生かしつつ、小児専門の治療にも力を入れたいという気持ちがありました。クリニック名に「こども」と入れていますが、大人の形成外科治療についても技術と経験を持っていますので、幅広い年齢層の患者さんに対応しています。
形成外科の道へ進まれたきっかけを聞かせてもらえますか。
生まれた時に口唇口蓋裂という障害があり、幼い頃から度々手術を受け、入通院を繰り返してきました。母は私に障害があることに責任を感じていたようで、いつも心配して付き添ってくれていたんです。ところが母は私が高校生の時に病気で亡くなってしまいました。思春期で反抗していた私は、母とまともに話もしないような状況だったため、後悔の念が残りました。その思いがこの道に進ませてくれたように感じるんです。もともとは教育学部に在籍していたのですが、そこで人の話にしっかり耳を傾ける方法を学びました。その後、自分の経験を生かして誰かの役に立てたらという思いで一念発起し、塾講師をしながら勉強して医学部に入り直したんです。患者さんの不安な気持ちに共感できるのも、過去の体験があるからだと思います。
院内の環境づくりで特にこだわられた点は?

まず一番こだわったのは、天然木のぬくもりを感じられるカフェのような空間にすることでした。実は母がコーヒーとピアノが好きだったことを思い出し、子どもに付き添われる親御さんに、少しでもゆったりとリラックスしていただきたいという思いで院内にコーヒーサーバーを導入したんです。キッズスペースにはタッチパネルや絵本を設置し、お子さんが待ち時間に退屈しないよう工夫しました。また、待合室に面した中庭には芝生とサンシェードを設けて、クリニックの中と外を自由に行き来できる開放的な空間をつくっています。入り口にはスロープがあり、院内もベビーカーや車いすで安心してお越しいただけるようバリアフリー設計にこだわりました。私自身が患者として病院に通った経験があるからこそ、患者さんやご家族が安心して過ごせる環境を整えることの大切さを実感しているんです。
形成外科の医師としての専門性を生かした診療を
形成外科ではどのような診療を行われているのでしょうか。

形成外科は、形や見た目をきれいに整えていくことをめざす医療分野なんです。日常的なけがの治療こそ、私たちが最も力を発揮できる領域だと考えています。特に傷をきれいに治すためには初動が大切で、顔の場合は1日以内、体の場合は8時間以内に適切な縫合をする必要があります。ただ縫って終わりではなく、真皮縫合で皮膚の内側から丁寧に合わせ、細かい糸を使って段差なく仕上げることが重要です。その後も圧迫治療やテープ処置、遮光や保湿の指導をしながら経過を診ていくことで、傷痕を最小限に抑えることが期待できるんです。地域に形成外科があることで、専門的な処置をすぐに受けていただけますし、適切な治療を提供できることに大きな意義があると思っています。
院内には複数のレーザー機器が導入されていますね。
当院では数台のレーザー機器を導入しており、それぞれの用途によって使い分けています。まず保険診療で使用する色素レーザーは、赤あざの治療ですね。例えば、毛細血管奇形、乳児血管腫などに使用します。Qスイッチルビーレーザーは青あざ。蒙古斑や太田母斑などの治療に役立ちます。同じ機器でも自費診療ではしみ・そばかすなどのメラニンを分解する目的のケアにも使用できるんです。特にこだわっているのは、複合レーザー施術を行うことです。複合施術により再発を減らしたり、保険診療だけでは到達できないレベルまできれいに仕上げたりすることがめざせます。痛みの感じ方や気にされるポイントは個人差があるため、さまざまな施術の中からその方に合う治療を続けていただけるよう、厳選した機器を取りそろえています。
「赤ちゃんの頭の形に特化した診療」について教えてください。

赤ちゃんの頭の形に特化した診療では、生後3ヵ月頃から診察を始め、首が据わる4ヵ月頃から矯正用のヘルメットを作製できます。向き癖が原因で4ヵ月から10ヵ月の時期にどんどん悪化していく頭の形もありますので、除圧をして正常な発育発達を促せるよう治療しています。当院は、兵庫県内でも数少ない頭蓋形状ヘルメット治療の取り扱いクリニックとして、専門的で継続的な治療を提供しています。ヘルメット治療は自費診療になりますので、どうしても高額になってしまいます。そのため適応があるかどうか慎重な判断が大切です。ヘルメットを作らない場合の対応方法も含めてしっかりと相談に乗り、経過を診ていくようにしています。
適切な治療で地域へ貢献したい
眼瞼下垂治療では、顕微鏡手術設備も活用されているんですね。

眼瞼下垂は特にご高齢の方からのご相談が多く、治療の判断基準としては、瞳孔にまぶたがかかってくる程度になった場合や、顎を上げてテレビを見たり、肩凝りや頭痛などの症状が出たりする場合に手術適応となります。当院では日帰り手術を行っていますので、なるべく出血や腫れを抑えることが重要になってきます。そのために顕微鏡手術設備を導入し、電気メスを使用し、患者さんの負担を最小限に抑えることを重視して、手術を提供しています。顕微鏡を使用することで細かい部分まで精密に処置でき、術後の回復が早まることも望めます。眼瞼下垂は機能的な改善をめざせる治療です。クリニックレベルで専門的な手術を受けられるのは、患者さんにとって大きなメリットになると考えています。
治療費が気になる患者さんにはどのような配慮をされていますか。
費用面でご不安をお持ちの患者さんには、まず保険診療と自由診療の違いを丁寧に説明するようにしています。お子さんのあざのレーザー治療については基本的に保険診療が適用されますし、乳児医療費助成制度もご利用いただけますので、安心して治療を受けていたきたいと思います。自費診療に関わる部分、例えば頭の形を整えるためのヘルメット治療などについては、費用の詳細を事前にしっかりとご説明し、続けやすい価格設定を心がけています。当院は、形成外科であり美容外科ではありません。ご家族で気軽に一緒に受診していただけるような通いやすい環境を整えています。何よりも患者さんに安心して治療を受けていただくことを第一に考え、事前に詳しくご相談いただけるよう配慮しています。
今後の展望をお聞かせください。

地域に形成外科がある一番の意義は、けがを適切に診られることだと思います。けがをしても救急では形成外科の医師が当直していることは少なく、初期対応が適切にできない場合もあります。形成外科の医師が地域にいることで、けがをした際、すぐに専門的な治療を受けられる。将来的にはご連絡があればすぐに診させていただけるよう時間外や休日の受診にも対応できる体制を整えていきたいと考えています。理想としては、次の世代が通い続けてくれるようなクリニックでありたいですね。スタッフにも「皆さんの地域のクリニックとして育ててください」とお願いし、患者さんだけでなくスタッフにとっても居心地の良い場所として、末永く続けていきたいと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とは頭の形矯正用ヘルメット製作費 39万6000円
レーザーによるしみ・そばかすのケア 5500円〜
複合レーザー施術/1万3200円~