清水 聖童 院長の独自取材記事
ライトメンタルクリニック 渋谷本院
(渋谷区/神泉駅)
最終更新日:2025/09/11

渋谷駅から徒歩5分の場所に位置する「医療法人社団 燈心会 ライトメンタルクリニック 渋谷本院」。夜間診療やオンライン診療にも対応し、「心の予防医療、最前線。」をキーワードに、さまざまな年代の患者のメンタルヘルスを支えている。院長を務める清水聖童先生は、現状の精神医療をより良いものにするために、一人ひとりの意識を変えていくことを目標に掲げる。同院では、メンタルヘルスの不調を示す兆候に早期に手を差し伸べることを重視し、薬物療法一本ではない、多面的なアプローチで患者をサポート。「こんな些細なことを相談してもいいのだろうかと遠慮してしまう人や、逆にこんな状態では手遅れかもしれないと考える人にこそ、来院してほしいです」と話す。取材では、清水院長の診療に懸ける思いや、注力する心理療法について話を聞いた。
(取材日2025年8月6日)
予防に重きを置き、メンタルヘルスの向上をサポート
医師を志したきっかけと精神科を選んだ理由を教えてください。

一つは学術的な興味です。学生時代は人とのコミュニケーションの難しさに悩むことがあって、どうすればうまく意思疎通が図れるんだろうと考えることもありました。シンプルに、人間の考えていることって面白いなと思うこともありましたね。そんな中で心理学にふれ、次第に脳科学の面白さに惹かれていったんです。もう一つは、感情的な理由ですね。友人がそれほど多いタイプでなかった私にとって、友達一人ひとりはかけがえのない存在でした。しかし、仲良くなった複数の友人が、精神的な病気などもあって亡くなってしまったんです。お葬式でご遺族が、亡くなった友人に向かって思いのまま配慮のない言葉を言うのを聞き、精神疾患への偏見の強さに衝撃を受けました。その時に何もできなかった自分が悔しくて、「医師になってこのような世界を変えてやる」という強い思いで精神科の医師をめざすことにしたのです。
どのような思いから開業されたのでしょうか。
当初は研究で現状の精神医療を変えたいと考え、国立精神・神経医療研究センターで学びました。しかし研究には根気と自己犠牲が必要で、経済的にも苦しく、大きな発見ができる可能性も限られていることを痛感したんです。大きなことを成し遂げるとなれば、たくさんの人の協力が必要なこともわかりました。もともと自分一人で行動することが得意な私は、一人でできることの限界を感じ、挫折したんですね。ただ、お金もうけに走るのも悔しかった。そこで、より多くの人を救う影響力を持つためには、勤務医ではできないこともあると感じ、開業を決意しました。診療をベースにしながら、メンタルヘルスの予防に特化した医院として位置づけようと。並行して、健康増進活動を促進するための会社も立ち上げて、予防のための商品を出したりしています。身近なところから、皆さんが早期にメンタルヘルス対策に取り組めるような環境をつくっていきたいと思っています。
院内におけるこだわりなどはありますか?

メンタルヘルスを象徴するような医院にしたくて、院内の環境づくりには特にこだわりました。濃いブラウンの木目調の内装、ぼんやりした落ち着く光、左右の耳に異なる周波数の音を同時に聴かせるバイノーラル・ビートなど、五感に働きかけてリラックス効果があるとされるものを取り入れています。今後はお花も置き、さらに日常の心地良さを演出していく予定です。「医院」というよりは、カフェのようにくつろげる空間をめざしました。メンタルヘルスの悪化の予兆を早期に拾い、軽いうちに対処できるよう、来院のハードルを下げ、受診しやすい医院にしたいと思っています。院名の「ライトメンタルクリニック」にも、その思いを込めています。
患者に伴走し、多面的なアプローチで解決策を探る
先生が力を入れている心理療法について教えてください。

心理療法は、さまざまな精神疾患がある中で、一部の精神疾患に効果が期待できると考えられています。特に、心理的な問題が症状に大きく関与している場合、つまりもともと悩みが多い方、自分のことが好きではないという方に向いていると思います。昔から元気だった人が急に変わってしまったというケースよりも、長年の考え方に癖のある人のほうが心理療法の対象になりやすいということですね。薬物療法だけでは対症療法になりがちですが、心理療法ならば根本的な改善が期待できることがメリットです。
患者さんの主訴にはどのようなものが多いですか?
最も多いのはうつ症状で、気分が沈むという訴えです。その背景には「眠れない」という主訴が多く、不眠の原因を探ると気分の落ち込みが見つかることがよくあります。患者さんの年齢層は幅広く、仕事のストレスを抱える方から学生までさまざまです。また、自分の外見が許せず、痩せたいと悩まれる患者さんも多いですね。摂食に問題がある方は、「痩せないと自分には魅力がなくて生きる価値がない」と考えるような方も少なくありません。その場合、体重の増減よりも、根底にある自己肯定感の低さにも気づいてもらうことが大事です。その上で考え方そのものを少しずつポジティブに変えていくことで、自己肯定感を高めるアプローチにより、ハッピーな状態になれるように導いていくことを大切にしています。ダイエットと精神疾患は密接に関係しているので、依存症のプログラムを応用した心理療法も行っています。
診療の特徴はどのようなところにありますか?

自分の手がける精神医療は「総合格闘技」のようなものに近いのかなと思っています。薬物療法という「パンチ」だけで勝負すると負けてしまう可能性があるので、いろんな角度からアプローチすることを大切にしているんです。薬は必要ないと判断した場合でも、ただ帰すのではなく、なぜ必要ないのかを一緒に検証し、納得してもらいます。その上で、例えば日常生活でメンタルヘルスに役立つスキルなど、その人の人生にプラスになる何かを伝えるよう意識しています。精神医療には正解がないからこそ、患者さんと一緒に悩み、答えを探していく姿勢を大切にしています。
心理的な悩みを抱える人が受診しやすいクリニックへ
スタッフの雰囲気や診療体制についてはいかがでしょうか。

院内は落ち着いた雰囲気で、リラックスできる空間づくりを意識しています。スタッフ同士の関係も良く、その空気感が患者さんにも伝わっているのではないかと思います。
私自身、早口なタイプで緊張感を与えやすいところがありますので、患者さんが少しでも安心できるように対応しています。例えば診察の最初に「何を言っても大丈夫」「答えたくないことは答えなくていいですよ」とお伝えしています。緊張が解けると、少しずつ悩みを打ち明けてくださる方も多いですね。万が一、担当医が合わないと感じた場合には変更も可能ですので、気軽な気持ちで受診いただければと思います。
今後の展望についてお聞かせください。
やはり、治療の必要がない世界線が最高ですよね。そのような世界の実現のためには、知名度を高めて、メンタルヘルスには予防がとても重要だということを社会に広めたいと思っています。年を重ねてからでは考え方の習慣は変えづらいので、若いうちからの教育が重要です。小中学校の段階で自分のメンタルヘルスを保つスキルを教えることができれば、薬が必要になる前に対処できるのではないかと思っています。そのためにSNSでの発信を強化したり商品開発を進めたりして知名度を上げ、医院を増やすことも考えています。いずれにせよ重要なのは、私個人が活躍することより、この考え方が次世代に引き継がれることです。私がいなくなった後も、同じ考えを持つ人が精神医療に携わってくれることを願っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

精神医療や医療そのものに不信感や抵抗感をお持ちの方こそ、ぜひお越しいただきたいと思っています。どんな些細なことでも相談していいんだ、と思える場所でありたいですし、逆に「もう自分の状態はどうしようもないのでは……」「何をしても意味がないのでは……」と諦めかけている方こそ来てほしいと思っています。私たちは、診療だけでなく生活や心の面も含め、多角的にサポートしていきます。少しずつで構いません、ここに来ることで気持ちが楽になった、心が少し軽くなったと思ってもらえるよう、これからも全力で取り組んでまいります。