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冨永 卓男 院長の独自取材記事

ペンギンクリニック

(国立市/国立駅)

最終更新日:2025/10/23

冨永卓男院長 ペンギンクリニック main

国立駅から徒歩2分、海の中をイメージした心落ち着く院内に包まれた「ペンギンクリニック」。冨永卓男院長は、東京都立梅ヶ丘病院、東京都立小児総合医療センターなどで20年近く児童精神科に携わり、2025年7月に開業した。学校や社会での不安や生きづらさを抱える子どもたちと、「どうすれば少しでも楽に生きられるか、一緒に支えていきたい」と穏やかに語る。自身の治療のあり方を「魚にとっての水のような存在になりたい」と表現し、患者の心の成長を静かに支える姿勢を大切にしている。院内のあちこちにあるペンギンの置き物やぬいぐるみは、開業を知った方たちがプレゼントしてくれて、少しずつ集まったという。日々心の問題と向き合い続ける冨永院長に、児童精神科診療への思いや患者との関係性について話を聞いた。

(取材日2025年9月25日)

海をイメージした空間で、前に進むためのヒントを探す

開業に至った経緯を教えてください。

冨永卓男院長 ペンギンクリニック1

父が小児科医として開業していたので、その影響は少なからずあったと思います。ただ直接的なきっかけは、外来治療を通じて、より深く児童精神科の本質に向き合いたいと思ったことだと思っています。大きな病院での入院治療も15年以上経験してきましたが、児童精神科の主体は外来だと思うんです。子どもが親や家族とともに生活しながら治療をしていける環境をつくることが大事なのではないかと。今はまだ、町中のクリニックに児童精神科はほとんどありません。そういった意味でも、大きな病院での入院治療は後進に任せて、自分は開業医としてできることをやっていこうと思いました。国立という場所を選んだ理由は、東京都立小児総合医療センターに長く勤めてこの辺りになじみが深かったからです。落ち着いた町の雰囲気も、クリニックにとっていい環境だと思いました。

なぜ児童精神科を専門に選ばれたのですか?

実は最初は小児科の医師になり、NICU(新生児集中治療室)に行くつもりでした。でもNICUは患者さんとの付き合いが1ヵ月程度になることが多いんです。もっと長くお付き合いしたいと思った時に、小児心身症という分野があることを知りました。初期研修の時に精神科の先生から「それなら精神科でしっかりやったらどうか」と言われて、東京都立梅ヶ丘病院へ。そこは日本の児童精神科に精力的に取り組んできた病院で、3年間みっちり学びました。その後、東京都立小児総合医療センターに開設から約11年間勤務し、入院も外来も経験を積みました。じっくり患者さんと向き合えることが、医師としてのやりがいにもつながっています。

院内のデザインにはどんな思いが込められていますか?

冨永卓男院長 ペンギンクリニック2

心の中に入っていくことを、海の中に例えて表現しています。5階の受付が陸地で、4階の診察室に向かうのは海に潜るように心の中に潜るイメージ。壁の色もグラデーションになっていて、下に行くほど青が濃くなっています。建築家さんと何度も話し合って、こんな空間になりました。ペンギンがいるのは、単純に僕が好きだったから(笑)。でもペンギンは陸と海を行き来する動物。患者さんも同じように、ここで自分の内面と向き合って、また日常に戻っていく。そんな象徴でもあります。病院に行くハードルをあまり感じないような空間になっているといいな、と思います。

子どもの変化を長期的に見守る診療スタイル

児童精神科と一般の精神科の違いは何ですか?

冨永卓男院長 ペンギンクリニック3

子どもの精神科は、一般的な精神科の治療とは少し違うと思うのです。大人の精神科はより薬物治療をメインに対応するケースが多いかと思いますが、子どもの場合は「成長を促進する関わり方」が大事な治療になります。子どもは成長する中で、持っている問題を個性に変えたり、自分のキャラクターに取り込んだりする。問題を「治す」のではなく、どうやってともに歩んでいくかが大切なのです。途中で迷ったり、蛇行したり、後戻りしてもいいんです。でももし立ち止まって困っていたら、前に進むためのヒントを一緒に探していきたい。本人への関わりと周りへの関わりで、成長するための良い環境をつくっていく。それが僕たちの仕事で、児童精神科の役割だと思っています。

対象年齢や、長期的な関係性についてお聞かせください。

当院では3歳のお子さんから上の年齢は特に制限を設けていませんので、発達に不安を抱えた成人の方をはじめ、眠れない、意欲が湧かないことをお悩みの成人の方でも受診いただけます。以前の病院の時から続けて通われて、15年、20年近くお付き合いしている方もいます。例えば小学生の頃は母性を求めていた子が、中高生になると対人関係の悩みに変わり、大人になると子育ての相談になる。その時々で求められるものは変わりますが、必要があればずっとお付き合いしていきたいと思っています。もちろん、ここに来る必要がなくなるのが一番いいと思っていますが。外の世界で苦しくなったときに、世の中全体が敵ではなくて、味方もいるのかもと、感じてもらいたいです。

診療での心がけを教えてください。

冨永卓男院長 ペンギンクリニック4

僕は「魚にとっての水みたいな存在になれればいいな」と思っています。化学反応が進むための良い空間をつくる「バッファー」のような役割です。それ自体は変化しないけど、その中だと反応が進みやすい。患者さんはここでいろいろ話をするけど、結局は自分で自分のことを見つめて、成長が起こっていけばいい。僕自身が出すぎないよう注意しています。精神科の医師になった当初は、「武器がない」と感じたこともありました。薬があっても万能ではないし、外科や内科のように処置をするわけでもない。でも僕らは武器ではなく、自分自身をどう使うかが重要なんだと気づきました。自分をいかに使えるようになるか、コンディションをどう整えるかが大事。診療は大変なこともありますが、患者さんから元気をもらえることも多いんですよ。

苦しい時に、いつでも頼れる「居場所」でありたい

クリニックはどんな場所でありたいと考えていますか?

冨永卓男院長 ペンギンクリニック5

「居場所」や「味方」、「相談相手」、「悪くない場所」と思ってもらえるといいですね。「病院に行く」ということが「悪くない場所に通う」という感覚になればいい。賛否両論あるかもしれませんが、診察室らしくない空間を意識的につくりました。たくさん置いてあるペンギンのぬいぐるみも、時には治療に一役買っているんですよ。投げられたり蹴られたりすることもありますが、その子がどう扱うかを見るのも心の理解の一助になります。表情のないペンギンが泣いているように見えるか、怒っているように見えるか。そういうところも大切だと思っています。ここへ来た子どもたちが安心して話ができて、ほっとできる場所であるようにと願っています。

地域医療への思いをお聞かせください。

せっかく国立という町の中に開業したので、国立、立川、府中、国分寺などの地域の支えになれればと思っています。今後は、学校や小児科の先生、福祉の方たちのお手伝いもできればと思っています。近隣で暮らす皆さんが来院しやすいように、平日は19時まで診療しているので、部活が終わってから、仕事が終わってから来られる方もいらっしゃいます。土曜診療や、SNSで順番をお知らせするシステムなど、できる限り患者さんの負担が少ない診療体制をつくろうとしています。地域で困っている子どもたちとご家族が、気軽に相談できる場所でありたいです。

読者へのメッセージをお願いします。

冨永卓男院長 ペンギンクリニック6

子どもの心はさまざまなものに影響を受けやすく、考え方や体調に影響を与えることもありますので、困ったことや心配なことがあればまずはご相談ください。とはいえ、初診の一歩を踏み出すのは、お子さんもご家族も勇気がいることだと思います。でも「海の中は思ったより暖かく、優しい場所だと気づくかもしれません」とホームページにも書いたように、安心して飛び込んでみてください。僕たちは一緒に考え、一緒に悩み、お子さんの成長を見守っていければうれしいです。一人ひとりが持つ物語に耳を傾けながら、心の苦しさがちょっとでも楽になるお手伝いができればいいなと思っています。

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