舩元 太郎 院長の独自取材記事
ふなもと整形外科
(宮崎市/宮崎神宮駅)
最終更新日:2025/09/12
宮崎市中心部より北西へ車で約30分ほどの佐土原町那珂地区。西都市へと通じる県道44号沿いに「ふなもと整形外科」はある。前身となる「ふくだ整形外科」から建物を継承し、舩元太郎院長が2025年5月に開業した。継承を機にリフォームも施し、新たなリハビリテーション機器も導入。落ち着いた雰囲気でリラックスして診療を受けられる。看護師や理学療法士の中には「ふくだ整形外科」から継続して勤務しているスタッフも多く、以前のクリニックから変わらない安心感が漂う。舩元院長は開業までの長きにわたり、宮崎大学医学部附属病院で豊富な経験を積んできた。そんな舩元院長にこれまでの歩みや力を入れている骨粗しょう症の診療について語ってもらった。
(取材日2025年7月30日)
地域の骨粗しょう症患者を減らすために開業を決意
開業のきっかけについて教えてください。

ご縁があって前身となる「ふくだ整形外科」の院長より建物を継承して開業に至りました。私はそれまで宮崎大学医学部附属病院に長年勤務しており、整形外科分野の骨粗しょう症の診療を専門的に行っていました。骨粗しょう症は潜在的な患者が多く、20%程度の人しか治療を受けていないというデータがあります。治療薬も発達してきているのですが、十分に活用されていません。そんな現状を地域医療の中で変えていきたいと考えていたタイミングでクリニック継承のお話をいただき、開業を決意しました。
現在も骨粗しょう症の診療に力を入れているんですね。
骨粗しょう症は高齢者や女性に多く、治療せずに放置してしまうと骨折のリスクが高まります。特に高齢者の場合は、骨粗しょう症が原因の骨折から寝たきりや認知症の発症につながるケースもあります。自覚症状がないので、いざ検査をしてみると重症例であったという方も少なくありません。早期発見のため、積極的に検査を呼びかけています。骨粗しょう症だとわかったらまずは食事と運動のアドバイスから始め、必要に応じて薬も使用して治療します。しっかり診療に取り組み、「少しでもこの地域の骨粗しょう症患者を減らしたい」という開業時からの目標を叶えていきたいですね。
リウマチ科とリハビリテーション科について教えてください。

リウマチについても長年にわたり専門的に診療を行っており、当院ではリウマチ科も設けています。リウマチに有用な治療薬ができ、最近では手術をしなくても薬物治療のみで寛解が見込めるようになってきました。病気を意識することなく日常生活を送れることをめざして治療方針を立てるので、気になる症状があれば検査を受けていただきたいです。また、整形外科やリハビリテーション科には、高齢の方やクラブや部活動でけがをしたスポーツ疾患の小学生から中高生まで、さまざまな患者さんが来られます。当院には現在2人のベテランの理学療法士がおり、運動療法を中心としたリハビリテーションを受けることができます。関節の動きを良くしたり筋力をつけたりするためには、リハビリテーションの機器だけでなく理学療法士の力が不可欠です。前身のクリニックから継続して勤務しているため、顔見知りの患者さんも多く、信頼関係が築けているように感じますね。
医療素材の開発を行う研究者から整形外科医に転身
医師をめざしたきっかけを教えてください。

実は、高校卒業後すぐに医大へ進学したわけではなく、京都大学農学部に入学しました。卒業後は民間企業の会社員として研究所に勤めていました。医師をめざすことになるとは当時はまったく考えておらず、医療素材の開発をしていました。きっかけとなったのは、仕事を通して医師と接する機会があったことです。時には厳しい視点で私たちが開発した素材に意見をいただくこともあり、「それならば、自分の目で医療の現場を見て開発に役立てたい」と興味がわき、地元・宮崎に戻り、宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)へ入学しました。会社員時代にコラーゲンの研究に携わっていたことから、迷わず整形外科を専門に選びました。
大学病院ではどのような経験をされたのでしょうか?
診療だけでなく自らの研究や医療人の育成も行い、さまざまな経験を積むことができました。診療と並行して進学した大学院では、骨の代謝やロコモティブシンドロームに関する研究に励みました。ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害や衰えによって立ったり歩いたりする運動機能が低下した状態のことを指します。当時、ロコモティブシンドロームという言葉はあまり知られていませんでしたが、地域での健康講座などを通して徐々に認知度が上がっていきました。そういった健康に関する啓発活動にも取り組み、ハードではありましたが充実した日々を過ごせました。
診療の際に心がけていることを教えてください。

心がけているのは、丁寧に説明をすることですね。大学病院に勤務していた頃は診断がはっきりしない患者さんを長年かけて診ていくケースもありました。そうなると、患者さんは「よくわからないまま診療を継続していく」という不安を感じてしまう可能性もあります。丁寧にコミュニケーションをとることで少しでも患者さんの不安を取り除きたいと考え、当時も今も常に意識しています。当院は高齢の患者さんも多いので、ご本人や付き添いのご家族に理解してもらえるようわかりやすい言葉でご説明します。そのため、患者さんから「わかりやすかった」という声をいただくときは、想いが届いていることを実感できて励みになります。
健康を支えるパートナーとして地域に貢献していきたい
印象に残っている患者さんはいますか?

勤務医時代、重症の骨粗しょう症を患っている60代の患者さんがいました。まだ若いので、先々を考えて対応する必要がありました。ある時、それまでに見たことがないほどはつらつとされた表情でいらっしゃったんです。表情だけではなく、薬で期待できる何倍も骨密度が上昇していました。なにか工夫されたことがあるのかと不思議に思っていると、「マラソンを始めたんです」と教えてくれました。骨粗しょう症へのアプローチのための運動や食事が持つ力を改めて実感しましたね。それ以来、私自身も以前にも増して運動や食事の指導に力を入れるようになりました。今もその患者さんは当院に来てくれていて、マラソンも続けているそうです。
先生自身が取り入れている健康法はありますか?
学生時代からスポーツが好きで、ウインドサーフィンをしています。当院のロゴマークも船がモチーフなんですよ。実家がもともと漁師家系で、最初に進学した大学でも水産の分野を学んでいたので、海は昔から好きなんです。最近はマリンスポーツをする頻度は減りましたが、年齢を重ねてもロングボードでゆったりと波に乗れたらいいなと思っています。また、ロードバイクも趣味の1つです。サイクリングにもならないぐらいのレベルですが、マイペースで楽しんでいます(笑)。やっぱり運動と食事、睡眠が健康の秘訣ですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

当院は、地域のお子さまから高齢の方まで、幅広い層の方々の健康に貢献できるクリニックをめざしています。高齢者の方特有の骨粗しょう症は自覚症状がなく、ご自身では気づきにくい病気です。定期的に検査を受けていただき、予防と早期発見をしていきましょう。一人ひとりの患者さんの声にしっかり耳を傾け、丁寧でわかりやすい説明を行います。「痛みがあるから行く」だけではなく、皆さんの健康を支えるパートナーのような感覚で気軽に当院をご利用ください。お待ちしています。

