鄭 栄哲 院長の独自取材記事
いまいけ内科外科クリニック
(名古屋市千種区/今池駅)
最終更新日:2025/09/09

生まれ育った地元で2025年7月に「いまいけ内科外科クリニック」を開業した鄭栄哲(ちょん・よんちょる)先生は、薬剤師である父、地元でクリニックを営む叔父の背中を見て育ち、自らも医療の道に進んだ。勤務医時代には、腹腔鏡手術やロボット手術を数多く経験、先進の大腸がん治療に携わってきた。現在は、クリニックでの診療と並行して、大学で後進の指導にもあたっているという。地域医療を担うにあたり、がんの早期発見・早期治療を重視、医療設備も整えた。地域の人にとって気軽に相談できる存在をめざしているという鄭院長に、開業の経緯や地域に対する想いを聞いた。
(取材日2025年7月25日)
地域医療に力を尽くした叔父の遺志を継いで開業
今池は先生の地元だそうですね。

この場所はもともと実家の薬局があった場所でした。少し離れた所には、叔父が院長を務めていた今池南クリニックがあり、叔父は患者さんから慕われており、外国人や障害者といった社会的弱者に寄り添う人だったんです。昨年、病に倒れ、その後亡くなりましたが生前、叔父から「弱者のため」という人として、医療人としての考えを日々教えてもらいました。そんな叔父や薬剤師である父が働く姿を間近で見ていて、人の助けになる仕事はいいな、と思うように。高校生の頃は薬剤師をめざそうと思っていたんですが、直接患者さんと向き合い、医療に携わることができる医師という仕事にも魅力を感じるようになりました。高校在学中は真面目に勉強に取り組んでこなかったのですが、卒業後「これはまずい」と思って一念発起。浪人して勉強を頑張りました。3年かかって、医学部へ入学しました。
その後、消化器外科を選ばれたのは、叔父さまの影響が大きかったのでしょうか?
そうですね。叔父のクリニックにもよく遊びに行っていましたし、仲も良かったので、叔父と同じ消化器を専門としていくんだろうな、というイメージは最初からありました。そして、僕自身、食べることが大好きなんですね。人間が生きていく上で、食べられる幸せはとても大切なことです。大学時代には小腸や大腸に発生する疾患を扱う下部消化管外科に入局しましたが、そこで「消化器外科は、メスを持った内科医である」と教わりました。つまり、手術だけできれば良いのではなく、内科的視点で全身をしっかり診られてこそ外科医として一人前だということです。当時、この言葉にとても感銘を受けました。近年、大腸がんの患者数が増えていますが、大学病院から退院する時は笑顔で退院していく患者さんが多くいらっしゃったんです。自分が治療に携わることで患者さんを笑顔にできる科であると感じ、消化器外科を専攻しました。
開業することは最初から想定されていたのでしょうか?

多少は頭の中にありましたが、勤務先である大学病院での診療に充実感を感じていたんです。大腸がんに対するロボット手術を担当していて、そういった先進技術を用いた治療こそが素晴らしいという認識でしたし、さらに腕に磨きをかけたい、と意気込んでもいました。ところが今から1年前、叔父が病に倒れたのです。叔父のクリニックの診療を止めるわけにはいかないので、僕が定期的に代診に出向くように。その時、「ここがなくなったら本当に困る」というお声をたくさんの患者さんからいただいて、かかりつけ医がいなくなることがこんなに大変なことなのだ、と実感しました。普段はあまり電話をもらうことがない叔父から珍しく電話がかかってきて、「できれば、継いでほしかった」と言われました。1ヵ月くらい悩みましたが、叔父が30年以上続けてきた地域医療を守っていきたいと考え、「勤務先を辞める」と叔父に伝えました。
CTや内視鏡を導入し、早期発見・早期治療をめざす
開業にあたり、どんな点に力を入れましたか?

2階には内視鏡検査室と手術室、リカバリー用のベッドがあるのですが、大腸内視鏡の検査前にご利用いただける個室を3部屋作ったことが最もこだわった点です。個室にはそれぞれトイレも完備しています。以前、僕が検査を受けた時、大部屋でトイレも共有ですごく嫌だったんですね。下剤を飲んだ後は何回かトイレに行かないといけないのですが、個室であれば他の人に気兼ねする必要もないですし、テレビもありますのでリラックスしてお過ごしいただけると思います。設備面では、CTも導入しました。腹痛の訴えがあった場合、エックス線だけでは診断が難しいこともあるため、必要と判断しました。最近の機種は、以前の物と比べて放射線の線量がかなり少なくなりました。被ばくの心配が少なくなったことも導入の決め手となりました。
検査機器がとても充実しているのですね。
CT画像で診断したいとなった場合に、他院へ紹介してCTの撮影に行ってもらうとなると、撮影のハードルがグッと上がってしまいます。CTを撮影後、診断をして必要に応じて総合病院へ紹介するまでの時間を短縮したい、と考えました。それに、患者さんから腹痛の訴えがあった場合、腸閉塞や腸炎、膵臓や肝臓が原因である場合、内視鏡検査だけでは診断が難しいこともあります。そのため、内視鏡検査とCT、どちらにも対応できる体制を整えました。胃の内視鏡検査については、経鼻内視鏡で行いますので、負担感少なく受けていただけると思います。鼻腔が狭い方には経口でも対応していますし、ご希望があれば鎮静下での検査も行っています。胃と大腸の内視鏡検査、両方を同日に受けていただくことも可能です。
検査体制を充実させた先生の想いについても伺います。

大学病院に勤めていた頃担当していた患者さんには、治療を終え退院される方もいらっしゃる一方で、がんを摘出したにもかかわらず再発してしまった患者さんや、残念ながら亡くなってしまう方も数多く診てきました。がん治療で一番大切なことは、早期発見・早期治療です。開業するにあたって、がんを早期発見することはクリニックにとって大切な役割だと考えました。若い世代の患者さんも増えているので、40代の方でもぜひ一度検査を受けていただきたいです。また、内科、外科、消化器内科、肛門外科と幅広く診療していますので、風邪などの身近な症状から切り傷やお尻の悩みまで、何でも気軽に相談してもらいたいと思います。
患者の良き相談相手になりたい
患者さんと接する上で、どんなことを心がけていますか?

話しやすい雰囲気づくりです。皆さん、不安を抱えていたり、いろいろと思うところがあってクリニックへ来られると思うんです。でも、いざ医師を目の前にすると、抱えている悩みをうまく話せないこともありますよね。そうならないように、診察時には患者さんの目を見て、訴えに耳を傾けることを心がけています。お話を聞いた上で、適切な検査や診断を行い、治療方法を相談しながら決めていくプロセスを大切にしています。「心が軽くなるクリニック」をコンセプトに掲げていますので、笑顔でしっかり目配りと気配りをすることは、スタッフにもお願いしています。当院の職員は皆、経験豊富で優秀ですし、スタッフ同士も仲が良いんです。
勤務医時代のご経験についてもお聞かせください。
大学卒業後は、藤田医科大学病院の下部消化管外科で大腸や肛門を専門に診ていました。その後、国内留学というかたちで2年間、東京医療センターへ。同院では、消化器や乳腺、血管からヘルニアに至るまで一般外科医として幅広く経験を積みました。その後、大学病院へ戻ってきたのですが、それ以降は大腸を専門としていました。大腸がんの手術をメインで担当しながら、虫垂炎や胆嚢炎といった救急疾患の治療にも携わりました。大学院へ進学し、学位を取得。その後、ロボット支援手術を担当するに至りました。手術の手技を身につけるためには、それ相応の訓練が欠かせませんが、母校の先生方は時に厳しく、時に優しく指導してくださいました。その後、数多くの大腸がん手術を経験。ロボット支援手術の指導者となり、今では母校で後進の指導にもあたっています。
どんなクリニックにしていきたいですか?

地域のかかりつけ医とは、患者さんと最初に接する存在です。診察の結果、高度な治療が必要となったら大学病院などへ紹介することも大切な役割だと考えています。ですので、ちょっとしたことでも「あの先生に相談してみよう」と思ってもらえるような、信頼されるクリニックでありたいです。叔父がそうであったように、体の不調だけではなく、ご家族のことなど些細な悩みも話してもらえるような存在になりたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは内視鏡検査/1万6500円~