松本 健太 院長の独自取材記事
安佐南おなかの内科・内視鏡クリニック
(広島市安佐南区/緑井駅)
最終更新日:2025/08/22

緑井駅から徒歩1分という好立地に開業した「安佐南おなかの内科・内視鏡クリニック」。院内に入るとひときわ目を引くのが、待合室の窓に面したカウンター席だ。「ちょっとカフェ感が出すぎたかな」と笑う松本健太院長は、広島大学を卒業し同大学院で大腸がんや潰瘍性大腸炎を研究し、論文を発表してきた。大学卒業後は広島大学病院や広島記念病院、安佐市民病院といった基幹病院の消化器内科に勤務。内視鏡検査を専門に研鑽を重ね、2025年6月に開業。内視鏡検査によるがんの早期発見を通じて地域からの胃がん・大腸がんによる死亡ゼロをめざし、日々診療を行っている。検査による早期発見の大切さを幅広く発信していきたいと目を輝かせる松本院長に、クリニックの特徴や内視鏡検査への想いについて話を聞いた。
(取材日2025年6月30日)
目標は、胃がん・大腸がんによる死亡ゼロ
医師を志したきっかけを教えてください。

実は親が医師なんです。また自分では覚えていませんが、1歳頃に、罹患したら3分の1は亡くなると言われる重い病気にかかり、小児科の先生に助けていただいた経験をしています。そういったことで医療という環境が身近にあった背景から、逆に「それ以外で自分に向いた仕事があるのではないか」と感じることもあり、高校生の頃までは医師になろうとは考えていなかったんです。理系の分野で進路を考えたときに、システムエンジニアなどIT系や建築系などの職業も選択肢にありましたが、直接人と関われる仕事に就きたいと思い、選択肢に上がってきたのが医療系の職業。高校3年生の夏頃まで悩んだ末、最終的に医師になろうと決めました。
消化器内科を専門に選ばれたのはどのような理由からですか?
研修医時代にさまざまな科を回る中で、内視鏡検査自体に興味を持ったことと、検査によって胃がんや大腸がんを早期に発見し、自ら治療もできるところに魅力を感じました。気づかずに放っておけば命に関わるような病気を防ぐことができるのは、人のためになる、やりがいのある仕事だと思ったんです。また、外科の場合は複数の人数が必要ですが内視鏡検査は自分一人でできること、さらに内科の症状で最も多いのが消化器を中心とする腹部の疾患だと考えられるので、自分を必要としてくれる患者さんが多いのではないかとも思いました。そういった複数の観点から、消化器内科を選びました。
やはりがんは早期発見が大事なんですね。

そうですね。開業前に勤務していた病院でも、早期に発見できず、治療が難しくなったケースも決してまれなことではありませんでした。特に胃がんや大腸がんはかなり進行しないと症状が出ません。食事ができない、体重が減ったという症状が出てから検査をしたらがんが見つかって、手術や抗がん剤治療が必要になったり、時には治療が間に合わないケースもありました。そういった経験から、少しでも早く検査を受けてもらいたいという気持ちが強くなりました。症状が出る前に検査すれば、がんが見つかっても治療できる可能性が高まります。内視鏡検査の後がんが見つからなければ、その後数年間安心して過ごすことができるでしょう。そうした事実を、何らかの形で啓発して、この地域での胃がん、大腸がんによる死亡ゼロをめざしていきたいと思っています。
若い世代にも検査の大切さを広めたい
開院にあたってこの場所を選んだのは、何かご縁があったのですか?

妻の実家がこの近くで、特に子どもが生まれてから家族の行事などでこちらに来ることが増えました。その頃は別の地域で暮らしていて、周囲の人たちとのつながりを感じることは少なかったのですが、こちらに来てからは、地域の皆さんの距離の近さに驚かされました。義理の両親の知り合いの方が顔を覚えてくれていて、近所を歩いているとあいさつしてくれたり、神社のお祭りなどがあれば声をかけてくれたりしました。そういった地域に暮らす人たちの力になれたら良いなと思い、この場所を選びました。駅から近くアクセスが良いことに加え、周囲には大型商業施設があり、インターチェンジも近いため、とても気に入りました。
クリニックのデザインや設計でこだわったところはありますか?
最近では近代的なデザインのクリニックも増えていますが、「いかにも診療所」「豪華絢爛」という感じにはしたくありませんでした。ホテルのラウンジとか都会のカフェのような、くつろいで過ごせる雰囲気にしたいと思い、デザイナーさんにもそのようにお願いしました。待合室のカウンターは「ちょっとカフェ感が出すぎたかな」という気もしましたが、意外とカウンターに座る方が多くて、結果的には良かったと思っています。また、大腸内視鏡検査の準備で下剤を飲む部屋は、プライバシーが守れる空間にするため、少し狭いのですが3つの個室にしました。検査までの時間も有意義に過ごせるように、室内にはタブレットも設置してあります。
開院してまだ日が浅いですが、どのような患者さんが多いですか?

開院してから1ヵ月くらいですが、患者さんの年齢層はかなり幅広いですね。予想していたよりも若い方が多い印象です。働き盛りや子育て世代の方たちは普段忙しいですから、何も症状がなければ検査を受けようとは思わないかもしれません。しかし、がんは早く見つけることがすごく大事です。もちろん高齢の方にも受けていただきたいですが、それ以上にこれから子どもを育て家族を支えていく世代の方たちにも、検査の大切さを伝えていきたいと思っています。例えば「近いから」とか「アクセスが良いから」といった理由でも構いませんので、まずは当院の存在を知っていただき、気軽に来院してもらえたら良いですね。
AIを活用し内視鏡システムでがんの早期発見をめざす
こちらのクリニックでの内視鏡検査に関して何か特色はありますか?

最近認可された、AIを活用した内視鏡システムを使用しています。自分の目だけでも十分に検査はできますが、見えにくい場所の小さなポリープなども検出してくれるので、「第二の目」として、検査の精度を高めることが見込めます。また、ご希望に合わせて鎮静剤・鎮痛剤を使用し、ほとんど眠った状態で検査することも可能です。胃カメラは細いスコープを使い、嘔吐反射が起きにくい鼻から通す方法も選択できます。僕自身これまでに多くの経験を重ね、できる限りの手技は身につけていますが、それでもつらいという方はいらっしゃいますので、少しでも苦痛が少なくなるような方法を提案いたします。また、大腸内視鏡検査でポリープが見つかった場合は、その場で切除することが可能ですし、同じ日に胃内視鏡検査・大腸内視鏡検査の両方の検査をすることも可能です。
診療に関して心がけていることはありますか。
内視鏡検査だけに限らず、おなかが痛いとか、どこか体の調子が悪いというときに、気軽に相談していただけるような、地域に根差したクリニックでありたいと思っています。そのためにも、患者さん一人ひとりに対して、丁寧で親身な対応を心がけています。消化器の疾患を中心に診療していますが、それ以外にも風邪や発熱などの急性疾患や、生活習慣病などにも幅広く対応し、地域の皆さんの健康維持に貢献していきたいと思っています。また、診察した結果、より専門的な治療が必要な場合は、適切な医療機関をご紹介いたします。
クリニックとしての今後の展望をお聞かせください。

繰り返しになりますが、地域に根差した診療を続けながら、内視鏡検査によるがんの早期発見を通じて、この地域での胃がん・大腸がんによる死亡ゼロをめざしていきます。そのためにも検査を受けやすい環境を整え、それがクチコミなどを通して地域全体に広がってくれたら良いなと思っています。まだ内視鏡検査を受けたことがない方や、以前受けたことがあるがつらい思いをして敬遠しているという方も、ぜひ一度ご相談ください。検査の頻度としては、胃カメラはピロリ菌がいる人や過去に感染歴のある方は年に1回、そうでない方は2年に1回程度が目安です。大腸カメラは、年齢や家族歴、ポリープの有無などによって適切な頻度は異なりますので、まずは一度検査を受けていただくことをお勧めしています。