藤原 安曇 院長の独自取材記事
manaこどもの診療所
(姫路市/東姫路駅)
最終更新日:2025/09/10

JR神戸線・東姫路駅を出てすぐ、クリニックモール内にある「manaこどもの診療所」。2025年5月に藤原安曇院長が開業した同院では、一般小児科疾患全般はもちろん、アレルギー疾患など幅広く対応している。自身も子育て中という藤原院長は、「子どもの生きる力を信頼する」をモットーに、子どもの自然治癒力を大切にしながら、育児に忙しい保護者へ寄り添った診療を重視する。クリニック名の「mana」はマオリ語で「徳」を意味し、日本語では「愛」とも読めることから、クリニックが温かい場所になればと思いを込めて名づけたそうだ。子どもたちやその家族に「愛」ある診療提供をめざす藤原院長に、同院の診療について話をたっぷりと聞いた。
(取材日2025年7月29日)
子どもの力を信じて寄り添った医療を提供
まずは、医師をめざされた経緯をお聞かせください。

もともと生命や細胞の仕組みに興味がありました。皆さんも経験があると思うのですが、理科の実験で自分の頬の粘膜細胞を顕微鏡で見た時に、「こんな小さなものが集まって人間ができている」という不思議さに強く惹かれたんです。大学は微生物の研究をするつもりで進学しましたが、オーストリアの精神科医であるフランクル博士の本を読み、医師という職業に一生をかける価値があると感じ医学部を再受験することにしました。小児科を志したのは研修医2年目、新生児科の研修で出会った赤ちゃんたちの生きる力に心を打たれたことが大きな理由です。懸命に生きる姿に、「おうちでご家族とともに、幸せに成長してほしい」という思いから、小児科の医師となることを決めました。
開業のきっかけはいかがですか?
町のクリニックで働いた時に、とても楽しく、やりがいを感じたことがきっかけです。初期研修を終えた後は、高槻病院や姫路赤十字病院といった新生児医療に力を入れている大規模病院で経験を積んできました。そんな中、自分の子育てが始まり、尊敬する医師から「子育ては今しかできないこと。もっと自分の子育ても楽しんで」と言われたことを機に大規模病院を離れ、地域のクリニックで診療を始めたのです。実際に地域のクリニックで働いてみると、子育ての経験がそのまま診療にも生かせることを実感しました。お母さんやお父さんと悩みを共有したり、喜びを分かち合ったり。ご家族ごとの背景を覚えて、何かあれば「いつでもおいでね」と声をかけられるような、そんな温かい関係性がとても心地良く、自分に合っていると感じました。そして「いつかは自分も地域で」との思いが、ようやく形にできました。
クリニックの診療コンセプトを教えてください。

当院では「子どもの生きる力を信頼する」という思いを大事にしています。すべての命は輝いており、子どもたちは小さな体に大きなエネルギーを秘めています。だから私は、小児科医はあれこれ手を出すというよりも、その子の「自然に治る力」をそばで応援するような、そんな立ち位置が大事なんじゃないかなと思っています。保護者の方も孤独に育児をされている方が多いので、安心して子育てをしていただけるよう、一人で悩まずに済む場所でありたいとも思っています。「これ大丈夫かな?」って思う時に、誰かに「大丈夫だよ」って言ってもらえるだけで、すごく安心できたりする。だから、診察の中でも、薬に頼りすぎずにできることや、おうちでできるケアなど、そういうアドバイスも積極的にするよう心がけています。
あらゆるアレルギー疾患に専門性高く対応
こちらでは、どのような病気を診ていただけますか?

風邪やインフルエンザなどの感染症から、湿疹・とびひなどの皮膚疾患、便秘症、健康診査、各種ワクチン接種、発達や育児相談まで、子どもの健康に関わることは、ほとんどを診ています。検査は、血液検査、尿検査、肺機能検査、超音波検査も導入しています。中でも注力しているのがアレルギー性疾患で、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎など、アレルギー全般の治療を行っています。検査はプリックテストのほか、専門性の高い食物経口負荷試験も実施しています。当院は小児科クリニックですが、アレルギー疾患に関しては、大人の方の診療も行っていますので、つらい症状でお悩みの方は一度ご相談いただければと思います。
アレルギー疾患に関心を持たれたきっかけは?
食物アレルギーのある人と接する機会が多くあったことがきっかけです。患者さんが不安を抱えている時に「どのくらいの量をどんなペースで食べたら良いのか」は、患者さんの状態によっても違いますし、担当する医師によっても言うことが違ったりするんですよね。そんな中で、もっと自信を持ってお話しできるようになりたいと思い、専門的に食物アレルギーを学ぼうと決めました。今の対処法としては、アレルギーのある食物を完全に除去するのではなく、食べられる量を見極めて最低限の除去にとどめることが推奨されています。とはいえ、お子さんにアレルギーのある食物を食べさせるのは親御さんには怖いもの。クリニックに駆けつけられる時間帯に食べさせるようアドバイスしたり、必要に応じて院内で食べてもらったり、お母さんの不安に寄り添うことも大切にしています。
患者さんと接する際に、大切にしていることは何ですか?

大切にしていることは、私自身が「子どもにとって信頼できる大人であること」ですね。親御さんから経過を伺うのはもちろんですが、できるだけお子さんご本人にも「どこが痛いの?」とか「気になるところある?」と声をかけるようにしています。正確に答えられないことは多いですけど、「髪切った?」「そのおもちゃ良いね~」なんてたわいない話を交えながら、少しずつ距離を縮めていけたらと思っています。お子さん自身ともコミュニケーションを取って、安心してもらえるような関係を築きたいんです。「自分の味方でいてくれる人」と思ってもらえたらうれしいですね。
親の視点から、子育て世代に優しいクリニックをめざす
明るくてすてきなクリニックですね。どんなところにこだわりましたか?

一般患者さんと、発熱のある患者さんの、どちらも安心して来ていただけるように、動線は完全に分けました。発熱の外来は専用の入り口があり、お部屋も3室用意して、患者さん同士が互いに気を使うことがないようにしています。小さな子どもたちにとって、クリニックは「痛いことをされる所」。そう思っている子も多いので、なるべく明るく、親しみやすい雰囲気にもこだわりました。壁紙はお部屋ごとに変えて、天井の星を眺めたり楽しんでもらえるようにしているんですよ。何か意味があるというよりは、カラフルなほうが「今日はどの部屋かな?」とワクワクしてもらえるかなと思って。どのお部屋もかわいらしく仕上がっているので、ぜひ見ていただきたいです。
忙しい保護者のために、通院のしやすさにも注力されています。
子育てって、毎日本当に慌ただしいですよね。なので、なるべく通いやすいように車で来やすい場所にしたかったんです。ここは駐車場も広くて、駅前にあるので、お買い物のついでにも立ち寄りやすいですよ。待ち時間もできるだけ少なくできるよう、予約や会計がスマホで完結するクリニック専用アプリを導入しました。クレジットカードを登録していれば、お財布も出さずにスムーズにお帰りいただけます。また診療内容によっては、オンライン診療も初診以降は対応しています。ほかのクリニックがあまり開いていない土曜の午後も診療しているので、平日は忙しい方も、当院がかかりつけ医でない方も頼っていただきやすいと思います。
最後に地域の方へメッセージをお願いします。

これからはアレルギーや発達のことに加えて、「食」や「体づくり」にも目を向けながら、親子で楽しめるワークショップや子育てサークルのような取り組みもしていけたらと思っています。姫路には長く住んでいて、子育てもこの地域でしてきたので、この地域で何かできたらという思いがずっとありました。姫路の先生方は温かく、横のつながりも強いんです。それに患者さんも関西らしい人懐っこさがあって距離感が近くて、ついこちらも笑顔になります。スタッフも子育て経験があり、明るくホスピタリティーにあふれた人ばかり。子育て中の私だからこそ寄り添えることがあると思っています。アレルギーのことはもちろん、ちょっとした心配事も気軽に相談してもらえたらうれしいですね。